特に何の変哲もない、平凡な人生というものがある。いわゆる”普通”というやつだが、これはどうもつまらないらしい。

何か刺激があるわけでもなく、何か野望を成し遂げようという強い意志があるわけでもない。かといって、自分に何か優れた才能がある訳でも無かった。自分は結局、平凡な凡人だった。

認めたくはないが、平凡だったのだ。その事実は認めないと仕方がない。しかしながら、平凡な人生というものほど面白いものはないではないか。

平凡な人生には、”暇”と”退屈”があるではないか！

１．平凡な猫の一生

まずは、人間以外の動物はどのような生活を送っているのだろうか。一例として、猫をあげてみよう。

自分の猫屋敷から縄張りを散歩して、帰宅する。朝と晩には狩りをして、うまく食べ物にありつくことが出来たら昼寝をする。

時々猫の集会に出席して、簡単な情報交換を行って帰宅する。そのあとはぐっすりと睡眠を取る。歴史に名を遺す猫などおらず、死にゆくときは誰に目をかけられることもなく、1匹で死に場所を探す。

これを死ぬまでひたすら繰り返す。
他の動物も似たようなものである。

２．平凡な人間に待ち受ける「暇と退屈」

人間の中でもごく1部の裕福な人間は、衣食住の環境が当たり前のように確保できる状況にある。当然の如く、明日の食事にありつける。

すると「暇」という状態が出来るわけである。我々は動物の1種類だから、ボーっとしたり昼寝をしたりして過ごすのもいいだろう。狩りをしたり、食べ物を育てたりしてもいい。

体を鍛えて強くなるのも良い事だし、「あそこの狩場はイチオシだよ」という情報交換をするのも良いだろう。自分の縄張りを散歩したり、周囲に敵がいないかを観察することも重要である。変に人間の尊厳をもたずに「動物」として暇をつぶすと、このような過ごし方ができるだろう。

犬や猫の平均睡眠時間は12～15時間だと言われている。その一方で、人間は8時間も寝られれば健康的である。つまり、”暇な時間を寝て過ごす”ということが非常に難しい。

こうなってくると、平凡な人間が頭を悩ませている「退屈・ひま・やることが無い」という事態が、たちまちこちらへ向かってくる。それはもう、すごい勢いで向かってくるわけである。

３．「暇と退屈」は最高だ！

退屈や暇な状態は、言い換えれば「自分の精神が自分自身に戻ってくる」ということもできるだろう。その時の我々は、自分の人生を生きているということになる。平凡な我々は、「暇な時間があったのに、他人が作成したコンテンツを見るだけで時間が過ぎてしまった」と思い悩む。

「自分の人生を生きる時間がやってきた。何かしなければ。友人のA君は最近海外旅行に行ったというし…。とりあえず他人の人生を見て、皆がどのような生活を送っているのか参考にしよう」と考えてしまう。

これでは”退屈”や”暇”を有効活用しているとは思えない。会社のために時間を使っている仕事と同じ状況である。他人の作成しているコンテンツを眺めたり、他人の動向を眺めているのは仕事と似ている。

せっかく自分の人生を生きる時間が回ってきたのだ。せいいっぱいに椅子を倒して、音楽をかけて、植物なんかを眺めながら日光浴をする。何をすることもなく、ひたすらにボーっとする。

「そういえば、あれがやってみたかったんだよ」「あの人にあって、あの話がしたい」と思い出せば、それをやれる時間がある。何といっても、僕は平凡な人生を送る暇人であるからだ。

特にやりたいこともないのであれば、ひたすらにボーっとする。ぼんやり物思いにふけっていると、嫌でも何かを考えてしまう。それが幸せな思い出なのであればそのまま考え続ければいい。

それが嫌な思い出であれば、誰かに相談するために電話をするか、体を鍛えて物理的に相手をなぎ倒せるほどの力を手に入れればいい。僕にはそれをできる時間がある。なぜならば、僕には”暇”があるのだ。

４．まとめ

「暇な時間の過ごし方」とGoogleで調べていると、それだけで時間が過ぎていくこともあるだろう。誰かが提案した、「暇なときにやること10選」のような記事がいくつも出てくると思う。

しかし実際にやってみると、どうもつまらないのである。アイデアの発起人が自分ではないからだと思う。それに対して「そういえば、あれがやりたかったんだよな」と気づいたときに動き出す行動力は、トラやヒョウをはるかに上回る。

「暇と退屈」がありふれているのが、平凡な人生である。暇なときに取り出すのは、スマホやテレビではない。珈琲とリクライニングチェア、そしてあたたかな日光である。そこにあるのは他人の人生の見学者ではなく、自分の頭で自分の行動を考える、1匹の動物である。

暇を味方にできた平凡な人間は、どうしようもなく人生が面白い。