幼馴染になった日

僕の考えだが女性が男性の前で化粧直しするのは脈なしだと思っている。

僕が社会人になり3年が経つ。
空気を読む事が年々上手くなり毎日上司の顔色を伺いながら慣れてきた仕事内容をこなしている日々を過ごしていた。

学生時代の友達は皆んな地元を離れ僕だけがいまだに実家暮らし、特にやりたい事や夢もなく仕事をするだけの刺激のない退屈な日々を過ごしていた。

なんか面白い事ないかな…

これが今の僕の口癖だ。
何も行動していないのに何か起きる訳でもなくただ1日を消費していた。

そんなある日、僕の会社に中途採用で同じ歳の女性が働く事になったのだ。
どこか見た事のあるような懐かしい雰囲気のある女性だった。見ているとふと目が合った。

え、久しぶり!覚えてる?

その女性は僕の幼馴染だったのだ。
8年ぶりくらいに会ったから色々話したくて仕事終わりに飲みに行く事になった。
彼女の話では地元を離れて就職してたが親が離婚して地元に帰ってくる事になり、そこで今の会社に中途採用で働く事になったらしい。
懐かしい思い出話で盛り上がった。こんなに誰かと喋ったのは久しぶりで楽しい日になった。

それからは月に2回程度仕事終わりにお互いの愚痴を言い合ったり、悩みを聞いたりする日があった。話しを聞けば聞くほど彼女は大変な思いをしており、僕の知ってる幼馴染の彼女ではなく僕とは比べ物にならないスピードで大人になっていた。お酒を片手にふと寂しそうな横顔の彼女を見てどんどん惹かれていく僕がいた。

彼女に誘われて休みの日に一緒に映画を観に行く事になった。
誘ってくれているからもしかしたら気があるのかもしれない。僕はすごく楽しみで自分の思う最大限のオシャレをして髪も整えて待ち合わせ場所に向かった。

彼女は仕事の時や居酒屋での時とは雰囲気の違った化粧、髪型、服装をしていて僕は目を奪われた。
もしかしたら僕だけじゃなく彼女も楽しみでオシャレをしてくれたのかも知れない淡い期待がお僕の心の中で芽生え始めた。

映画を観ている時にポップコーンを食べる時
ふいに手と手が触れ合う。そんな事が何度か繰り返す。映画館で1つの大きいポップコーンを食べる発明した人は天才なんじゃないかと思いドキドキしていたら映画が終わっていた。

カフェに入り映画の感想を言い合い盛り上がりすごく楽しい時間だった。
コーヒーを飲んで店を出る事になり何気なく彼女を見ると鏡を見ながら口紅を塗っていた。

別に悪い事では無い、飲食をした後はよく口紅が落ちるから女性としては気にするのが当たり前で立派な事だと思う。ただ残念な事に僕はそうは思えない。

急な話しだが僕は人並みに恋愛はしているつもりだ。告白した事もされた事もあるし学生時代には彼女だって居た事もあった。
ただ僕は空気読む事や相手の顔色を伺う事で深読みしすぎる癖がある。
恋愛感情を自分の中で自己完結してしまう事があるのだ。勝手な想像で自分に脈なしと諦めてしまう事が多々あるのだ。

僕の前で彼女が口紅を塗った日、その日以来僕はただの仲の良い幼馴染としてしか見られて無いんだと思い。自分の中で勝手に失恋してしまった。

それから3年経ったある日幼馴染が結婚した。相手は僕を1番可愛がってくれていた会社の先輩だった。
先輩の話では3年前から彼女に猛アプローチしていたらしい。ただ好きな人が居るからと断られ続けたみたいだ。その人が好きだから付き合えないと何度も振られたが無事付き合い1年の交際を経て結婚するみたいだ。

3年前から好きな人…
1つの行動で勝手に諦めた幼馴染の僕には聞く勇気も権利もないのだ。



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