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3分でわかる打上げ施設(射場)のルール

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ロケット打上げに適した場所?

ロケットを打ち上げるにはどのような場所が適しているでしょうか?
公園や空港といった周囲に民家などがある場所で打ち上げることは可能でしょうか?世界には33か所の射場がありますが(参照:宇宙プロジェクトがまるごとわかる本p4)、鹿児島にある種子島宇宙センターは海に囲まれ、総面積は9700000㎡です。

地球の自転の速度を利用するため、ロケットは基本的に東側に打ち上げられますが、そのためには東側が海あるいは何もない環境である必要があるでしょう。また、赤道に近い方がより自転を利用できるため有利とされます。

周辺地域との関係

ロケットの打上げには爆音や振動を伴い、部品やブースターなどが落下する可能性も0ではありません。
そのため、射場周辺や飛行経路上の安全確保が必要となり、ロケットの打上げ時には近隣地域への立入制限、漁業組合をはじめとする利害関係者との調整が必要です。

後述する宇宙活動法では、ロケット打上げ許可の要件として警戒区域を設定して安全を確保(立入禁止措置)することが求められています。

農地として使用されている土地の場合には都道府県知事の許可が必要です。打上げ事業者が自己所有の土地であれば安全確保措置を取りやすいでしょう。

陸地だけでなく海についても、漁業権(漁業を営む権利)を持つ利害関係者との交渉や調整が必要となります。打上げの際、警戒区域として特定の海域への立入禁止に協力してもらうことや、漁業補償(打上げによって漁ができないことへの補償)の問題が発生するためです。
なお、この漁業補償の根拠については争いがあります。

宇宙活動法との関係

射場の建設や運営について、宇宙活動法との関係では規制がなされているのでしょうか?

もともと、宇宙活動法を作るときに行われた宇宙活動に関する法制検討ワーキンググループでは、「宇宙物体の打上げを行う施設又は宇宙物体が帰還する場所を有する施設を設置し、これを運営すること」を国の許可、監督を必要とする活動として位置付けていました。つまり、射場の設置、運営が独立して許可の対象とされることが検討されていました。

しかし、実際の宇宙活動法では、射場の設置、運営自体は許可の対象とはせず、ロケットの打上げを許可するかどうかの基準の中に、「打上げ施設」の安全確保が要件として組み込まれました。この「打上げ施設」とは、「人工衛星の打上げ用ロケットを発射する機能を有する施設」をいいます。 

(参考)
宇宙活動法6条、宇宙活動法施行規則8条によれば、安全性に関する基準は以下のように規定されています(要約)。
①打上げ施設が周辺の安全を確保できる場所にあり、重要な設備等に保安上適切な対策が講じられている
②打上げ施設にロケットの飛行経路と周辺の安全を確保する適切な発射を行うことができる装置を備えることができる
③ロケットの重要なシステム等が故障しても、飛行経路と周辺の安全を確保することができる措置が講じられている
④人工衛星等の打上げを終えるまで、人工衛星等の落下、衝突又は爆発により、人の生命、身体又は財産に損害を与える可能性を最小限にとどめ、公共の安全を確保することや飛行中断措置を講ずるために必要な無線設備を打上げ施設に備えることができる
⑤ロケットの飛行経路と周辺の安全確保のための重要なシステム等が故障しても機能よう十分な信頼性の確保・多重化の措置が講じられている

海上あるいは航空機から打ち上げる場合

シーローンチ(2009年に経営破綻、2016年にロシアの航空会社が買収)のような海から打ち上げる場合や、ヴァージン・ギャラクティックのように航空機からロケットが発射される場合、地上の打上げ施設は使われません。

日本の宇宙活動法はこのような場合も想定しており、「打上げ施設の場所」を許可申請書に記載する必要があります。

具体的には「打上げ施設の場所」については、「船舶又は航空機に搭載された打上げ施設にあっては、当該船舶又は航空機の名称又は登録記号」と規定されており、海上打上げの場合は船舶の名前か船舶法上の登録番号飛行機からの発射の場合は飛行機の名前か航空法上の登録番号によって、宇宙活動法の適用を受ける日本国籍を持つ船舶・航空機であるかが確認されることになります。

サブオービタルロケットの場合

宇宙活動法は、軌道へ投入する人工衛星を搭載したロケットの打ち上げを想定しているため、サブオービタルロケットの発着陸を行う射場は適用対象外となります。
しかし、手続を明確化し、事業者のリスクの予測可能性を高めて新規参入を促すには、サブオービタルロケットの射場についても法整備が必要です。
2019年6月、国交省と内閣府宇宙開発戦略推進事務局によって「サブオービタル飛行に関する官民協議会」が設立され、サブオービタルロケットの打上げに向けた官民共同の環境整備が開始されています。

参考:
・これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド 第一東京弁護士会
・打上げ施設の適合認定に関するガイドライン改訂第 2 版 内閣府宇宙開発戦略推進事務局
・逐条解説宇宙二法 宇賀克也
・種子島宇宙センターリーフレット
・トコトンやさしい!宇宙ロケットの本第3版 的川泰宣

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