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マンガで分かる宇宙法体系

宇宙法という名の法律はない

「宇宙法」というと、どのようなイメージを持つでしょうか?
「法律」というただでさえよくわからないものに「宇宙」というもっとわからないものを掛け合わせているのだから、全く意味不明のものに違いないという印象を持たれるかもしれません。
実は「宇宙法」という名前の法律があるわけではなく、宇宙に関するルールを定めた条約や国連決議、声明文、法律などをいろいろまとめて「宇宙法」と呼んでいます。

国際法と国内法

法の中には外国間の関係を取り扱うものがあり、これを国際法と呼んでいます。後述する国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)で作成された宇宙5条約はその典型です。
他方、国内の私たちや会社の活動を取り扱うルールを国内法と呼んでいます。

ハードローとソフトロー

ルールの中でも、法的に拘束力を持つもの(必ず守らないといけないもの)とそうでないものがあります。
法的拘束力を持つルールを「ハードロー」といい、持たないものを「ソフトロー」と呼んでいます。
ソフトローには拘束力がないのに意味があるのか疑問に思われるかもしれません。
しかし、COPUOSでルールを作るためには全員の意見が一致しなければならず、92カ国(2018年時点)が加入している現状では、それが困難となっているのです。
とはいえ、スペースデブリ問題など何らかのルールを作らなければ宇宙活動に深刻な支障を来しかねない問題もあり、「ルールを作れないから仕方ない」というわけにもいきません。
そこで重要になってくるのがソフトローです。

宇宙5条約

ソフトローの前に、代表的なハードローである5つの条約を取り上げます。

1 宇宙条約
「宇宙の憲法」とも呼ばれる宇宙条約は、宇宙活動に関する基本的なルールを定めた条約で、以下の内容を規定しています。

①宇宙活動の自由
②宇宙空間・天体の領有禁止
③平和利用原則
④宇宙飛行士の救助・宇宙物体の返還
⑤国際的責任・継続的監督
⑥損害賠償責任
⑦環境汚染防止
⑧宇宙物体の登録

2 宇宙救助返還協定
例えば、宇宙船の帰還時に予定していたコースを外れ、着陸予定地でない国に着陸した場合や、他国の人工衛星が落下してきた場合に、どのように本国に知らせ、宇宙飛行士や人工衛星を引き渡すかについて定めた協定です。
これは、宇宙条約が宇宙飛行士を「人類の使節」とし、事故が起きた場合は各国が援助の上、本国に安全・迅速に引き渡さなければならない旨規定していることに基づくものです。

3 宇宙損害責任条約
衛星やロケットの事故によって他国に損害を生じさせてしまった場合、どのように取り扱うかを定めたのが宇宙損害責任条約です。
宇宙損害責任条約は、損害が地表で引き起こされたものかどうかによって、責任の重さを分けています。

過失責任とは、加害者に故意(わざとやった)または過失(不注意)があったときに生じる責任のことで、無過失責任とは、加害者が注意を尽くしていたとしても負う責任のことです。
地上の損害については、被害者に何ら落ち度はない一方、宇宙空間の損害については、当事者はそれぞれ宇宙活動のリスクを引き受けていると考えれられ、このような区別がなされています。

4 宇宙物体登録条約
宇宙条約によれば、人工衛星などの宇宙物体は「登録」によってどの国が管轄権を持つか判断され、管轄権によって支配・管理権が得られます。「国籍」ではないことがポイントです。
宇宙物体登録条約は、この宇宙条約のルールを具体化したものです。
これにより、宇宙物体によって事故が発生した場合の責任の所在が明確になりますが、実務上、無登録となっている宇宙物体が多々あるという課題を抱えています。

5 月協定
月協定に関しては以下にまとめていますので、併せてご覧ください。

国連とは別に作成された条約

国連の外でも、様々な条約が作成されています。

①ケープタウン条約
②インタースプートニク設立条約
③国際宇宙ステーション協定(IGA)
④日米クロスウェーバー協定

ISSに関するルールについてはこちらもご覧ください。

ソフトロー

前述のとおり、COPUOSで新たに条約を作成することは事実上不可能な状態なので、法的拘束力を持たない国際文書が事実上ルール化されています。

まず、国連総会決議によって採択されたものとして、以下のものがあります。

①直接放送衛星原則
②リモートセンシング原則
③原子力電源使用制限原則
④スペース・ベネフィット宣言
⑤「打上げ国」概念適用
⑥国家・国際組織の宇宙物体登録実行向上勧告
⑦宇宙の平和的探査・利用に関する国内法制定勧告

次に、国連COPUOS科技小委で作成されたものがあります。

①スペースデブリ低減ガイドライン
②COPUOS科技小委/IAEA原子力電源安全枠組み

スペースデブリ低減ガイドラインについては、制定までに紆余曲折ありました。こちらも併せてご覧ください。

また、国連とは別に関係国で作成されたルールもあります。

①衛星放送利用についてのユネスコ宣言
②ITU静止軌道環境の保護勧告
③地球観測衛星委員会衛星データ交換原則
④国際災害チャータデータ配布原則
⑤IADCスペースデブリ低減ガイドライン

以上のように、ソフトローといっても様々なものがあります。
技術的なことに立ち入って作成されているものや、頻繁な改訂が想定されるルールについてはソフトローが馴染むという側面もあります。

国内法

最後に日本の話です。
2008年、①宇宙の平和的利用、②国民生活の向上、③産業の振興、④人類社会の発展、⑤国際協力等の推進、⑥環境への配慮を基本理念として、宇宙基本法が成立しました。

これにより、内閣府宇宙開発戦略本部が設置され、宇宙開発利用に関する施策を推進していく体制が整備されました。

また、2018年11月15日、宇宙活動法と衛星リモセン法が施行されました。これらについては以下にまとめていますので併せてご参照ください。

おわりに

今回取り上げたルールは宇宙法の一部にすぎず、特にソフトローは多岐にわたり、技術の知見がなければ理解しにくいものもあります。まずはざっくり体系や分類の視点を理解しておき、いざ調べるとなった時に深掘りするというスタンスが良さそうです。


参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎ほか
・宇宙法ハンドブック 慶應義塾大学宇宙法センター
・内閣府ホームページ 宇宙政策
https://www8.cao.go.jp/space/index.html

マンガ:
昭和が生んだ天才美少女漫画家、あんじゅ先生が運営するオンラインサロン「あんマンサロン」に所属するまんがたりさんに作成いただきました。
ありがとうございます!

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外資系スタートアップの企業内弁護士 シェアリングエコノミー、住居、ITに関する社会課題の解決に挑みつつ、宇宙に関するルールを研究・発信、スタートアップを支援 技術と法律が交差するとき、私たちの暮らしはもっと良くなる
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