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第16巻:浮沈! 悪魔将軍!!の巻


第16巻データ・アナリティクス

TVアニメ、ついに放映開始!!

※掲載順は漫画作品のみ(特集記事、小説、記事広告、読者投稿ページは除く)。
「掲載順=人気」とは一概に言えないが、人気を測るバロメータのひとつとして参照する。
1号あたりの漫画作品の掲載本数は15〜17本。
単行本16巻の発行日は1984年6月15日。

1983年4月3日から、日本テレビ系列でついに『キン肉マン』のアニメが放映開始する。放映時間は毎週日曜日の朝10時からの30分番組である。
17号の巻頭では「速報おまたせしました!! TVアニメ 「キン肉マン」スペシャル」と題する特集記事を組んでおり、表紙も『キン肉マン』だった。
17号の発売日は4月11日付だが、表紙では「TVアニメ放映目前!」とあるとおり、表示より2週間以上は前に発行されていることが理解できる。

また、アニメ開始と同時期にキン消しも発売され、レギュラー版のみの累計販売数は1億8000万個(全418種類)に達する。このキン消しとの相乗効果もあり、『キン肉マン』は一大ブームとなっていく。

第16巻に収録された話数の掲載期間には、15号で愛読者賞の読み切り作品『勇者ビッグボディ』が『キン肉マン』と同時掲載され、17号では前述のとおり特集記事と表紙。そして20号の「とむらい合戦!!の巻」で連載200回目を迎えた。
なお、第4巻収録の「キン肉マンの爆弾発言の巻」と「上野の森は大混乱の巻」、「狂乱ロビンの巻」と「死のメニューの巻」は、いずれも結合して1話とカウントされているので、「通算198話、連載200回」と、少しややこしいことになっている。このため「とむらい合戦!!の巻」のトビラ絵は、雑誌掲載時には「連載200回」とされていたが、単行本収録時には「「キン肉マン」長期連載バンザーイ!!」に改められている。
ただし、この号の表紙は『コブラ』(寺沢武一)だった。休止していた連載が再開されたので、そちらが優先されたかたちだ。ともあれ、愛読者賞、アニメ化、連載200回目と、トピックの多い時期であった。

第16巻収録話の連載期間の出来事

24号(5月30日付)の表紙は、アニメの放映が開始する『ストップ!!ひばりくん!』(江口寿史)が飾る。同号には「先ちゃん特別かきおろしカセットレーベル」の付録がついており、アニメ化する作品を盛り上げようという編集部の意図が読み取れる。
また、この号では巻頭記事で「アニメスクランブル」と題し、この時期のアニメ化作品『スペースコブラ』(1982年10月7日〜1983年5月19日)、『キン肉マン』(1983年4月3日〜)、『ストップ!!ひばりくん!』(1983年5月20日〜)を特集している。
この年はさらに7月に『キャッツ・アイ』(北条司)、10月に『キャプテン翼』(高橋陽一)とアニメ化が続く。1981年の『Dr.スランプ アラレちゃん』以降、「少年ジャンプ」がはじめて迎えるアニメラッシュの年だ。

カール・セーガンとは?

この時期の「少年ジャンプ」に企画記事が多いことは、第14巻のレビューで前述した。おもに鳥嶋和彦が編集を担当し、堀井雄二が取材・執筆を担当した記事が多い。
変わり種としては、21号の巻頭特集「あのカール・セーガン博士と宇宙を語ろう!」が挙げられる。この号の表紙は鳥山明の『Dr.スランプ』で、宇宙ロケットを操縦する則巻千兵衛を中心にした、宇宙がテーマのイラストになっている。そして、そこに「CALL to the COSMOS '83」のキャッチコピーが踊っている。

そもそも80年代初頭は、世間的に宇宙科学への関心が高かった。その背景としてはカール・セーガンのTV番組『COMOS』の影響が大きい。
カール・セーガンは、NASAの惑星探査に関与した科学者である。1977年9月5日に無人宇宙探査機ボイジャー1号が打ち上げられた際には、地球の生命体や文化の存在を伝える音や画像を収めた「ゴールデンレコード」を搭載したが、その収録内容はカール・セーガンを委員長とする委員会によって決められた。このゴールデンレコードは、いわば地球外生命体や未来の人類に宛てたボトルメッセージのようなものである。
カール・セーガンはSF作家としても活動し、1978年には『エデンの恐竜 -知能の源流をたずねて-』でピューリッツァー賞・一般ノンフィクション部門を受賞。さらに1981年には、『コスモス』でヒューゴー賞・ノンフィクション部門を受賞している。
この『コスモス』をベースとしたTVドキュメンタリー番組が『コスモス』だ。カール・セーガンはみずから脚本とパーソナリティーを務め、宇宙や地球の科学史を紹介し、日本でも一大ブームを築いた。
なお、カール・セーガンはロバート・ゼメキス監督の映画『コンタクト』(1997年)の原作者としても知られている。

いわばカール・セーガンは「時の人」だったわけだが、この1983年、彼は「核の冬」の理論を提唱する。「核戦争によって地球上に大規模な環境変動が起きて人為的に氷期が発生する」というもので、この理論は後世のフィクションにも多大な影響を及ぼした。
「少年ジャンプ」関連作品では、ひらまつつとむ『飛ぶ教室』(1985年24号〜38号連載)が挙げられる。核シェルターで核戦争を生き延びた小学生たちが、「核の冬」が到来しつつある過酷な環境下で、小学校で共同生活をしてサバイバルする物語であった。連載期間は短かったものの読者に強烈なインパクトを与えてカルト的な人気を誇り、連載終了から35年後の2020年には、描き下ろしの続編を収録した完全版が発刊された。
なお、『飛ぶ教室』は連載に先立ち「フレッシュジャンプ」1984年7月号に同名タイトルで読み切りが掲載(作者は鷹沢圭の名義)され、これをベースとして連載版が構想されていったようだ。

そしてもうひとつ忘れてはならないのが『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)への影響だ。
大ヒット作『北斗の拳』の原型は「フレッシュジャンプ」1983年4月号に掲載された読み切り版『北斗の拳』、さらに同6月号に掲載された『北斗の拳II』である。ただし、この2本の読み切りでは、劇中の時代設定は現代。
一方で連載版(1983年41号/9月26日付)は「一九九X年 世界は核の炎につつまれた!!」のフレーズではじまる。この「核戦争後の世界」という世界観は、連載版から追加されたものだ。
一般的に『北斗の拳』の世界観は、ブルース・リー的なカンフー・アクション+映画『マッドマックス2』(1981年)とされているが、じつは『マッドマックス2』の劇中では核戦争があったとは明言されていない(明確に核戦争後の世界であると言及されるのは、1985年のシリーズ3作目『マッドマックス/サンダードーム』から)。『マッドマックス2』から「戦争後の荒廃した世界」を着想したのは確かだろうが、その荒廃要因に「核戦争」が足されたのは、この当時風潮として、カール・セーガンの提唱した「核の冬」理論を世間が恐れていたからではないかと推測したい。

時代のトランジション

バッファローマンのベビーターン

「不滅の魂!!の巻」では、「キン肉マンvsアシュラマン」戦終了後、それまで悪魔将軍の隣に陣取っていたバッファローマンが正義超人へのベビーターンを表明する。一度死んでよみがえらせてもらった恩義として「この試合だけは打倒キン肉マンの参謀役としてアシュラマンのセコンドについた!!」ものの、「悪魔になるのは一度だけ 試合がおわれば」「正義超人に生まれかわるつもりだったのさ!!」と、その理由を語るのであった。

ベビーターン後のバッファローマンは、「不沈!悪魔将軍!!の巻」ではキン肉マンが必殺技を完成させるまでの時間稼ぎをするために悪魔将軍と対戦し、「地獄のラスト・ワン!!の巻」(第17巻収録)では悪魔将軍攻略のアドバイスをキン肉マンに授け、さらに「超人戦争終結!?の巻」(第17巻収録)では身を挺して悪魔将軍の実体となる。

このようにバッファローマンは、第16巻から「黄金のマスク編」における⑥トリックスターの役割を発揮しだす。そして、ベビーターンの象徴としてバッファローマンはカツラを脱ぐが、このシーンは読者には不評だったそうだ。

「黄金のマスク編」の物語上の役割ロールとしては、⑦敵対者は悪魔将軍となる。「復活なるか!?の巻」(第14巻収録)で登場してからはサタンと同一人物であるかのようにも見えるが、第16巻ラストの「悪魔と神!!の巻」で悪魔将軍とサタンは別人であることが判明する。
サタンは前シリーズの「7人の悪魔超人編」から黒幕として暗躍しているものの、本シリーズ以降、旧シリーズ(第1〜36巻)では登場しない。いわば「回収されなかった設定」であり、のちに新シリーズの「完璧超人始祖編」でサタンに関する設定が活かされることになる。

ラーメンマン人気と『少林寺』ブーム

ラーメンマンは本シリーズでは未登場だったが、第2回人気投票第1位の結果を受け、「ジャスティス登場!!の巻」で姿を現し、「キン肉マンvs悪魔将軍」戦のレフェリーを務める。
第1回人気投票で人気超人部門・悪役超人部門でともに3位となったあと、全米超人タッグの優勝決定戦でレフェリーとなった(第6巻)前例を彷彿とさせるが、今回はモンゴルマンとして登場する。
モンゴルマンは、悪魔将軍の椅子攻撃を制止するだけでなく、キン肉マンがコスチューム内に隠し持ったフォークやトンカチを暴くなど、公正中立の立場を守り、バッファローマンと同様に⑥トリックスター的な物語上の役割を担う。今シリーズで⑥トリックスターを務めたバッファローマンとモンゴルマンが、次シリーズ「夢の超人タッグ編」でコンビを組むというのも、俯瞰で見れば至極納得のいく流れであった。

この時代のラーメンマン人気の要因としては「フレッシュジャンプ」で『闘将!!拉麺男』が連載中であることが挙げられるが、もうひとつ、この当時の『少林寺』ブームにも触れておきたい。
1983年の前半は、空前の少林寺ブームであった。リー・リンチェイ(現:ジェット・リー)主演の映画『少林寺』(チャン・シン・イエン監督)は、日本では前年の11月3日に公開され、16億5千万円の映画興行収入を記録し、11月公開作品ながら1982年の洋画部門で4位にランクイン。
さらに同年11月29日には『少林寺木人拳』(チェン・チーホワ監督)がTBSの「月曜ロードショー」で地上波初放送された。『少林寺木人拳』は日本公開は1981年2月だったが、少林寺ブームの只中に地上波で放送され、日本公開のなかでは最古のジャッキー・チェン映画が脚光を浴びることとなった。
そして1983年4月11日には『少林寺三十六房』(ラウ・カーリョン監督)が日本公開される。
この少林寺ブームは、70年代のブルース・リーによって牽引されたカンフーブームがロングテール化したものと見ることもできるが、ブルース・リーが独自に開発したジークンドーとは異なり、オーセンティックな中国拳法にフォーカスしている点が従前のカンフーブームとは位相が異なる点だ。
『キン肉マン』本編におけるラーメンマン再登場の「ジャスティス登場!!の巻」が掲載された21号は5月8日付。ちょうどいいタイミングでの本編登場といえる。

なお、『闘将!!拉麺男』の主人公のラーメンマンは、陳老師のもとで超人拳法を修行して闘龍極意書を授かるので、『キン肉マン』における「超人レスラー」ではなく「超人拳法の達人」としてリデザインされている。少林寺ブームという時代の波を捉えた作品であったことも、ラーメンマン人気の要因として忘れてはならない。
ちなみに「ラーメンマン=モンゴルマン」のギミックは、『闘将!!拉麺男』においては虎翔道場の創立者「モンゴル・タイガー」として移入されていく。

タイガーマスクの影響

『キン肉マン』には、随所に『タイガーマスク』(原作:梶原一騎、作画:辻なおき)の影響が見て取れる点は、あらためて指摘しておきたい。
「7人の悪魔超人編」でキン肉マンに1日の休息を与え、シリーズ最終日にタッグマッチ(キン肉マン&モンゴルマンvsバッファローマン&スプリングマン)に持ち込む展開は、『タイガーマスク』における覆面ワールド=リーグ戦をなぞらえている。無名のアフリカレスラー「ザ=グレイト=ゼブラ」が飛び入り参戦し、「タイガーマスク&ザ=グレイト=ゼブラvsライオンマン&エジプトミイラ」戦に突入するのだが、この「ザ=グレイト=ゼブラ」の正体はジャイアント馬場だ。

ここで思い出したいのが、単行本第12巻に掲載された企画「ビッグ・レスラーとアイドル超人」である。その⑥として、ラーメンマンとジャイアント馬場がピックアップされていた。なぜラーメンマンとジャイアント馬場がコンビだったのか。第12巻での展開(キン肉マン&モンゴルマンvsバッファローマン&スプリングマン)が『タイガーマスク』の覆面ワールド=リーグ戦をオマージュしたものであったなら合点がいく。なお、第12巻の発行日は1983年6月15日なので、単行本作業はちょうど「キン肉マンvs悪魔将軍(と試合を裁くモンゴルマン)」と時期的に符号する。

また、のちにキン肉マンがネプチューンマンやミスターVTRなどに放つ48の殺人技のひとつ「超人絞首刑」は、タイガーマスクがミスターシャドウに仕掛けた「タイガー式しばり首」のリバース式であり、悪魔将軍がダメージ回復を図るヨガのポーズは、タイガーマスクと覆面世界タイトルマッチを闘うブラックVが軟体をアピールする姿勢に似ている。

なかでも『タイガーマスク』の影響が強く感じられるのが、キン肉ドライバーを開発するための特訓である。
アシュラマン戦におけるキン肉マンは、空中で揉み合ううちに、偶然、変形ツームストン・ドライバーでフィニッシュ(「不滅の魂!!の巻」)を決め、この技を完成させるために山で特訓することになる。この特訓シーンは「不沈!悪魔将軍!!の巻」「意外な欠陥…!?の巻」と2週にわたって描かれた。
最初は大木の切り株を対戦相手に見立てて特訓を続けているが、体重300キロを超える巨大イノシシが出現し、そのイノシシを相手にキン肉ドライバーを完成させる。

この特訓シークエンスは、タイガーマスクがウルトラ=タイガー=ドロップを編み出す特訓方法を踏襲している。
タイガーマスクこと伊達直人は、必殺技を習得するために雪山で特訓をする。最初は巨大な雪玉を体で受け止めるメニューであったが、そこに巨大なヒグマが出現し、ヒグマを仕留めることでウルトラ=タイガー=ドロップを完成させる。
自分の頭部をヒグマ(イノシシ)の後ろ足のあいだに突っ込み、そのまま担ぎ上げて、相手の上下をひっくり返し、変形のパイルドライバーに持っていく技の流れは同じ。
ウルトラ=タイガー=ドロップが投げっぱなし(ホイップ式)のパワーボムに似ているのに対し、ドリル・ア・ホール・パイルドライバーの形で相手の腕(前脚)を踏みつけてホールドするところにキン肉ドライバーのオリジナリティがある。

タイガーマスクの発明したウルトラ=タイガー=ドロップは破壊力が凄まじく、アポロン兄弟の弟ウルサス=アポロンをKOする。このときジャイアント馬場は「きみのはじめての反則ではない世紀の大必殺わざのたんじょうをいわい……」と言い、この新必殺技をウルトラ=タイガー=ドロップと命名するのであった。

ただ、続く相手、アポロン兄弟の兄スター=アポロンとの対戦では、スターがウルトラ=タイガー=ドロップ対策として足を閉じて戦う。これによりタイガーマスクは技に入ることができず苦戦を強いられる。
「足を閉じる」対策法で技のセットアップを阻害されるという展開もまた「キン肉マンvs悪魔将軍」で用いられているものだ。
結果的に、タイガーマスクはフランケンシュタイナーのかたちでスターの足のあいだに潜り込み、そこから担ぎ上げてウルトラ=タイガー=ドロップを繰り出す。キン肉マンは、バッファローマンの犠牲によって実体を得た悪魔将軍を空中でとらえ、そのままキン肉ドライバーに持ち込むのであった。

すでに流通している作品を引用の範疇を超えて作品に取り込み、文脈を書き換え、再提出する方法論のことをアプロプリエーションというが、キン肉ドライバーはウルトラ=タイガー=ドロップを意識して創作されたものであることがよくわかる。

1981年当時のタイガーマスクブームについては、第9巻のレビュー「キン肉マンvsウォーズマン」の覆面はぎデスマッチ(マスカラ・コントラ・マスカラ)のところで触れたが、あれから2年が経過し、この第16巻収録話が描かれた1983年時点では、ブームはどのように変容していたか。

1981年4月20日からテレビ朝日系列で放映されていたTVアニメシリーズ『タイガーマスク二世』(毎週月曜日19:00〜19:30)は、裏番組に日本テレビ系列放映の『あしたのジョー2』があり、視聴率が振るわず、1982年1月18日に放映が打ち切られてしまった(全33話)。
少年画報社「月刊少年ポピー」(1980年8月22日号〜1981年6月27日号)および講談社「増刊少年マガジン」(1981年9月11日号〜1983年1月6日号)で連載されていた漫画版『タイガーマスク二世』(原作:梶原一騎、作画:宮田淳一)も連載を終えており、つまり「キン肉マンvs悪魔将軍」に突入する前には、アニメも漫画も終了していたのである。
「キン肉マンvs悪魔将軍」に通底するタイガーマスクへのオマージュは、去りゆく偉大な先達に対するレクイエムだったのではないだろうか。

なお、時期的に偶然が重なったのだろうが、1983年5月には『タイガーマスク』の原作者である梶原一騎が講談社編集者への暴行容疑で逮捕され、梶原作品は回収され書店から姿を消す。さらに同年8月10日にはプロレスラーのタイガーマスク(佐山聡)が新日本プロレスとの契約を解除して、突如引退を宣言。一斉を風靡したタイガーマスクブームは急速に終焉した。

タイガーマスクのブームと入れ替わるようにして『キン肉マン』はアニメ化して大ブームを巻き起こしていく。そのトランジション(移行期)の狭間に描かれたのが「タイガーマスクへのオマージュ」たるキン肉ドライバー開発秘話であったと考えると、また違った感慨が得られるだろう。

戦いの神と平和の神

「とむらい合戦!!の巻」では“戦いの神”ゴールドマンと“平和の神”シルバーマンの兄弟神による天上兄弟ゲンカの図が描かれ、それを裁定したのが“裁きの神”ジャスティスであったことが明かされる。
兄弟神は仲がよく、超人界は調和が取れていたが、あるときひとりの子どもが「戦ったらどっちが強いの?」と問いかけたところ、兄弟ゲンカに発展したとのことであった。
このエピソードは「矛盾」の語源に由来する。『韓非子』には「楚の国に矛と盾を売る商人がいた。その商人は『この矛はどんな盾をも貫き、この盾はどんな矛も通さない』と言ったが、『では、その矛でその盾を突いたら、どうなるか』と問われて返答に窮した」との故事から、「矛盾」という言葉が成立した。
天上兄弟ゲンカの図では、無垢な子どもが核心を突くという、アンデルセンの童話『裸の王様』のような筋立てになっており、「ヘルメスと木こり」(「伝説のマスク!!の巻」第13巻収録)やギリシャ神話の「オイディプス」(「超人の使命!!の巻」第15巻収録)と同様に、物語にある種の格調を与えている。

主人公たちが活躍し読者が見守っている物語とは別に、そこからは感知し得ない別のレイヤーで、より高次の存在たちの物語が存在しているとの肌感覚を読者に与え、世界観と物語の可能性を膨らませたのである。
こうした設定の多層性こそが、本シリーズから「完璧超人始祖編」が誕生した理由といえよう。

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