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「遮光保管」

遮光保管という記載は医薬品の外箱や容器によく見られます。
薬を保管するときは光を避けて保管しましょうという記載のことです

たとえば点眼薬や錠剤などです。
クラビット®点眼液(成分名:レボフロキサシン)には開封後は遮光保管という記載があります。
また錠剤ではワーファリン®錠(成分名:ワルファリン)が光に弱いことで有名でしょうか。

これらの薬は遮光袋をつけて患者さんにお渡しするのが普通のことです。
薬の安定性が薬を使用するときまで担保するために必要です。
光で有効成分が分解されてしまっては薬を飲む意味がありません。

ところで光に弱い薬を遮光保管することは当然のこととして我々薬剤師は教わります。
光に弱い薬をなんらかの遮光の対策をとって患者さんに薬を渡すのは当然のこととして天下り的に教わるのです。
ですが本当に遮光保管が必要なのか?
ふと最近思いました。

光のエネルギーについては大学の頃に学んだ記憶があります。
E=hνという有名?な式を教えられ、光のエネルギーについて学んだ記憶があります。
しかし光でどのぐらい医薬品が分解されるのかは学んだことがない。
しかも光にはルクスやらルーメンやらカンデラやらの単位があるとのこと。単位の意味すら知らないようでは光について理解しているとは言い難いです。
なのでちょっと調べてみることに。

医薬品のインタビューフォームには光に対する安定性試験の結果が載っています。
たとえばクラビット®点眼液では以下のような感じです。

クラビット®点眼液のインタビューフォームより抜粋

苛酷試験の項目に光の安定性試験の結果が記載してあります。
遮光袋なしとありでは主薬の含量に違いがでるようです。
どの程度の量的変化があるのかは不明ですが、やはり光に対する安定性は考慮しないといけません。

ということでよく医薬品の安定性試験に出てくるルクス(lx)について調べてみました。
ルクスとは日本語では照度のことです。光が照らされている範囲のことですね。
この値が大きいと明るいことになります。ちなみに月明かりが0.5~1lx、街灯が50~100lx、晴天時の太陽光が100,000lxのようです。

クラビット®点眼液の安定性試験では一般的な照明の照度である1000lxで試験を行ったようです。
それを保管期間が60万lx・hrとのことです。
60万は600,000、照度は1000lx、仮に毎日10時間を照明に医薬品を照らしたとすると……
600,000=1000(lx)×10(hr)×60(日)となり、医薬品を60日間、照明に毎日10時照らした時の光に対する安定性の結果と解釈できます。
上記のように考えると、遮光袋なしの場合だと60日後に観察すると成分の含量が低下している。
遮光袋ありだと60日後でも成分の含量は変化ないと解釈できるわけです。

今までは光の安定性試験の結果だけで遮光保管かそうではないかと判断していました。
しかしlxの意味を調べるとどのような試験の状況だったのかが分かるようになり、患者さんへのアドバイスの幅も増えたような気がします。
例えば遮光袋をなくした時に具体的にどのように対処するかとか。
あるいは遮光袋に入れて保管するのが面倒な人(結構います)に対して遮光袋の重要性を説得力をもって説明できそうです。

最後になりますがルクスとはラテン語からきています。意味は光です。
ルーメンとは光の全体的な明るさを示し日本語では光束と言われるようです。
照明の光が空間に広がる矢印と仮定するとその矢印の束すべてがルーメンです。
ルーメンもラテン語でこれも光という意味です。
カンデラはある一定方向に対する光の強さを表します。
カンデラもラテン語でこれはロウソクという意味です。




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