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くみとってほしい

小学校低学年にとっては「うんこ」は
とてつもなく一大事な案件であった。

それは森山直太朗の歌「うんこの歌」 にもあるように

♪ さっきまで体の中にいたのに

でてきた途端

いきなり嫌われるなんて

やっっぱりお前はうんこだな ♪


臭い、と鼻をつままれる。

ましてや、学校に行っている間に、

大きいのをモヨオシて便所に行き、

排出してきたことが目撃されようもんなら

それはその日の一大事件、

一日中 話題の中心になってしまうのであった。

「〇〇ちゃん、今日べんじょで うんこ しとったが~」

「う~、くっせぇ~」と鼻をつままれる。

残酷なものである。

とにかくバレてはいけないのである。

秘密にしておかなければならないのである。

それが怖くて便所にいけず、

もらしてしまうクラスメイトもいた。

りゅう坊もそのひとりであった。

(クラスメイトのことを書いたら自分のことを思い出した)

学校から家まで約2km。

下校の前からモヨオし、

家まで我慢していたが、

とうとう パンツの中に。

幸い 硬めの個体だったので

パンツの中にとどまっていてくれた。

歩きにくかった。

当然家族にもナイショだ。

自分でパンツを洗った。

昭和43年頃の話だ。


まだ思い出した。

りゅう坊が、通っていた小学校には

併設された定時制高校の校舎があった。

小学校の体育館の横に定時制高校の校舎があり、

りゅう坊が体育館の便所で(大)の用を足していると、

外で話し声が聞こえた。

定時制高校の生徒だ。

りゅう坊は気付かれないように息を潜めていたが、

便所のくみとり用のフタを外したと思ったら

そこに石を投げ込みはじめるではないか!

石ではじかれた液体がりゅう坊のお尻に

ピチャ!

笑い声が聞こえる。

そこに自分がいることを気付かれように

必死に息を殺し、やり過ごしていた。

あぁ りゅう坊、あのときの事はよく覚えてるぞ。


「定時制高校の生徒は ぼくがいるってわかってたんじゃないかな」

「笑われるのもイヤだったし、年上だから怖かった」

「必死でガマンしたんだ」

そうだったよな。

あのなまぬるいけれど冷酷な感触。


今と違ってくみとり式の便所だったからなぁ。

りゅう坊の気持ち、くみとってやるよ。

「くみとって欲しい って そこなの?!」

「ぜんぜん くみとれてないよ!」

「早く くみとってればあんなことにはならなかったのに」


くみとり屋さんは便槽がいっぱいにならないと

なかなか くみとりにこなかったのだ。




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