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【カナダ学生ビザ/ニュース解説】インドに翻弄されるカナダ

先月、2024年1月22日に突如として発表されたカナダの留学生受入制限の話は、まさに寝耳に水状態であり、その後時間が経過するにつれ、続々と影響が拡大しています。

こんにちは、ア フォーリーフ・ノート担当の宮坂コウダイです。

現状2月の段階でカナダの学生ビザは事実上一時停止状態となる状況が続いているのですが、何故このような事が起こったのか?今後、どのような事が考えられるのか?最近カナダ最大経済都市であるトロントのToronto Starが特集を組んだ地球🌎の裏側で行われている、「闇の留学ビジネス」にスポットを当てた特集を元に、現在起きているカナダの学生ビザに関する、主要変更点の問題点に関して考察と解説をしていきたいと思います。


1. Toronto Starについて

どの国にとっても沢山の拡散機能を持つメディアである新聞社は強い影響力を持っています。日本は主に日本のメディアが中心になっていますが、今後移民が増えるにあたって多くの問題が出てくる事となれば、それを監視する為のグローバルな取材能力を持ったメディアやジャーナリズムが必要になります。そういうった面において他民族国家であるカナダはグローバル社会の未来図のお手本になるとも言えます。

そんな多民族で構成され世界各地にネットワークを持つトロントメディアのトロントスターについて以下、Chat GPTにも聞いてみましょう。

トロント・スターは、1892年の創刊以来、カナダで最も権威ある広範囲に読まれている新聞の一つとして知られています。深い取材、調査報道、そして進歩的な編集方針へのコミットメントで知られるトロント・スターは、カナダ国内外での世論や政策形成において重要な役割を果たしてきました。この尊敬される機関は、日々のニュースを提供するだけでなく、公共事業に対する厳しい監視を通じて権力を問いただす重要な役割を果たしています。

Chat GPT

2. 衝撃タイトル "IELTSクリアガール"とは?

まず最初にIELTS(アイエルツ)とは近年最も総合英語評価に優れるとして国家が移民政策において指標として利用している事から、TOEFLやTOEIC等ではなく最近ではIELTSスコア取得の為の「IELTS対策コース」が語学学校の中でも人気が上昇しており、IELTSを勉強をする学生や社会人が急増しています。

実際は対策程度ではなく本当の実力がなければ容易にスコアを取る事が出来ないテストとも言われるのがIELTSなのですが、逆を言えばIELTSのスコアが高ければ、確実にスピーキングを始めとした英語の総合力に長けているという事が信頼性に繋がり、故に多くの国に公式スコアとして採用されています。

そしてこのIELTSのスコアが高いと英国、カナダやオーストラリアなどの国への移民の条件が容易にする事が出来る為、IELTSのスコアが高い女性は大変高い評価を受ける事が出来、今までのインドの伝統的な基準(家族背景、カースト、または見込みのある花嫁または花婿の財政状態など)よりも価値のある資産となります。

もちろん英語が出来る人の方が純粋に人材として優秀であり資産として感じられるのかもしれませんが、それだけで「IELTSクリアガール」という言葉が生まれた訳ではありません。前述の通り「移民の条件」という言葉がキーワードです。

さて、通称IELTSクリアガールが結婚ビジネス市場・マッチング市場においていかに価値の高い存在であったのか?それが今回2024年1月22日に突如として起きたカナダ移民法改正の一端を担っていたといっても過言ではない「問題」であったと言えます。

3. もうひとつのトレンドワード 「IELTS結婚」

日本人にはピンと来ないかもしれませんが、絶大なる経済成長を遂げている発展途上国の国では未だに政治汚職や経済不安、その他貧富の格差や内戦、治安悪化等の問題を抱えている国も珍しくありません。

そんな国の彼らが次に求めるものはクオリティ・オブ・ライフであり、少し昔であれば日本でも「アメリカン・ドリーム」と呼ばれたように、欧米諸国での成功やまさに人生におけるより良い生活環境を求めて「海外移住」への道を歩み出します。

中でも最も顕著に見られているのが2024年、中国を抜き世界最大の人口となるインド人の留学です。実際に2023年、インド人の留学生は全体の約40%を占めていたという統計結果も衝撃を与えました。

ここで急激に価値があがってきたのが冒頭の「IELTS クリアガール」です。この制度を利用した「婚活マッチング」と「海外移住&留学ビジネス」がハイブリッド的に融合し、海外移住&留学をすることを条件に「結婚」をするマッチングビジネスが急激に台頭します。

4. IELTS結婚のカラクリと問題点

参考記事であるToronto Starの記事や取材でも詳しく記載されてありますが、正直な感想として「IELTS結婚」はほとんど”結婚詐欺”みたいなものでして、存在自体が褒められたものではありません。

そもそも何故、インドとカナダの間において「IELTS結婚」という言葉、そしてそれらを扱うグレーなビジネスが台頭してきたのかという事には、カナダの移民制度にありました。

それは簡単に言えば、カナダの公立カレッジ又は指定私立カレッジに通う学生の配偶者(妻/夫)は、一緒にカナダに住む滞在許可証を取得出来、なおかつどこでも働ける就労ビザ(オープン・ワーク・パーミット)を取得出来るというものです。

その為、妻側である女性がカナダの大学に通う「学生」として「学生ビザ」を申請し、その夫が「就労ビザ」を取得して、フルタイムで仕事をする事によって事実上カナダで就職をする事が出来てしまいます。

更に学生として通っていた女性(妻)側は大学卒業後に最長3年間、現地で就労ができる就労許可証を取得する事が出来ます。一般的に大学の学位取得コースが2年間であり、その後PGWPにて3年間の滞在及び就労ができるという事は、向こう5年間カナダで生活が出来、就職が出来るという事になります。その期間を用いて、スキルや学位、ポイントを稼ぎ、「永住権」を取得するというひとつのプロセスがモデルスキームとして出来上がっていました。

そしてこの「IELTS結婚」最大の問題は、男性側が女性側の「学費や生活費を負担する」という事が条件だったのです。その金額は2年制の公立カレッジの場合は500万円〜600万円。女性側は結婚と引き換えにカナダでの学歴や移住の権利を得る事が出来ます。

5. 家族で海外移住を目指すファストトラックだったのだが

移民の制度やビザの制度に関しては確かに他国よりも優遇されていました。しかし、一体何が問題だったのでしょうか?夫婦で海外移住を目指す場合、ひとりがカレッジ進学する事が出来れば、その配偶者は一緒に生活が出来、仕事をすることが出来る。この場合、子供がいる家庭の場合は、子供を公立学校に通わせるのが一般的です。

これらのシステムは海外移住を目指すヤングカップルや子供を海外で育てたいと考える30代、40代のファミリー層にも人気の移住パターンのひとつであり、これらの恩恵を受けていた日本人も少なくはないと思います。

しかし発展途上国という言葉はあまり"適切"ではないのかもしれませんが、民主主義とはいえ貧富の差や事実上のカースト制度が残り、国民全体の民度において信頼性や安全性が伴わないと思われる人口の爆発する国「インド」が度の過ぎたやり方をすると物事はとんでもない方向へと暴発する事になるのです。

5. アンダーグラウンドな「婚活ビジネス市場」の台頭

カナダの移民制度に目を付けた悪徳業者が始めたビジネスが、英語力が高い女の子(IELTS Clear Girl)を集めて紹介するというものでした。

英語力が高ければ高い程価値があり、容姿や年齢、英語力によってランク付けをされていた事が容易に推測されます。

結果的にこれがほとんど人身売買に近い仕組みであり、その為少しずつトラブルがひずみとなり表に出始めてくる事となります。

背景は様々ですが、一般的に学生となる「妻」が先にカナダへ入国し、その後夫の就労許可証が取得出来てから、渡航するケースがあったのですが、先に渡航した妻と音信不通になってしまう事も少なくなかったようです。また、愛情よりも移民の為の「契約」として結婚している偽装結婚のようなものであった為、男女間のトラブルに関しても絶えなかったようです。

極端な話、スラムドッグミリオネアのようなスラムやカーストの低いエリアで生まれても英語力さえあれば、外の世界での成功を夢見る事が出来るのだろうかと想像してしまいます。今はYoutubeを見れば勉強が出来る時代。ずっと勉強するハングリーさが勢いのある国の人達から感じられます。

6. 学生ビザの改正法案にあって、何が変わったのか?

カナダ政府は、この移民システムの整合性を確保するために、大学および専門学校のプログラムに在籍する国際学生の配偶者に就労許可を発行しないことを含む、影響を受ける人々にとって重要な変更を発表しました。

In the weeks ahead, open work permits will only be available to spouses of international students in master’s and doctoral programs. The spouses of international students in other levels of study, including undergraduate and college programs, will no longer be eligible.

出典:カナダ移民局

実はこれが2024年1月22日に発表された学生ビザに関する衝撃を与えた重大な変更要綱のひとつでした。

この結果、Toronto Starの記事報告によると、すでにカナダ移住を目的にこ結婚したカップルの間で離婚が急増しているとのこと。人口14億人のたった0.1%であったとしても140万人という桁違いのインドではひとつの流行が始まれば、それに便乗し多くの同業他社が現れます。実際カースト制度や身分による差別が残っているインドの女性にとってはIELTS結婚自体が一発逆転の切り札でもあったわけですが、それも同時に消え去ってしまったというわけです。

何故なら、実は英語が堪能であるインド女性は優秀である事が多く、英語と学問を武器として自立する女性も少なくなかったようで、現地で立場が逆転して離婚を突きつけられる男性もいたようです。

良く考えれば「当然の事象」なのかもしれませんが、想像の斜めを上を越えるのが、世界基準、グローバルスタンダードであり、このレベルに慣れておくことは想像力を高める事にもなると強烈に思います。

もちろん本当に双方の性格やデートを繰り返して、マッチングをし、お互いの意思を確認しているのであれば自由恋愛であり、何も悪気があるもではない為、一概にIELTS結婚自体が悪いと言えないのかもしれません。しかし、結果として悪用されてしまえば終わりでして、今回の移民法改正という結果が全てを物語っています。

現在、これらのビジネスに関わっていたインドの教育コンサルタント業界や留学エージェントは危機に直面しているようですが、新しい規則により、カナダでの学習がより公平になるという見方も出来ます。また、そういった業者は本当に「教育」を考えて仕事をしているわけではなく短期的な収入を得る事を目的にしている悪徳業者の類いともいえます。

今回のカナダの政策変更は「純粋に」移住の地を求めている家族にとっては大きな打撃かもしれませんが、この点においては一般的な日本人留学生にとっては大きな影響はないかと考えられています。

7. まとめ:今後の展開と展望

今の時代はインターネットやSNSで情報が氾濫する時代ですので、「こんな事も出来るよ」等という甘い話や「本当かな」というようなお得な話が存在しますが、それらの全てが「真実」ではなく、間違った情報や時には法律スレスレなグレーもしくは全くのアウトな場合もあります。

特に言葉の不自由な海外は「知らなかった」で済む世界ではありません。国を一歩間違えれば、その後の人生を大きく狂わす事になる事もありますので常に警戒とダブルチェックが必要です。

今回のカナダの政策変更は、カナダの移民および教育システムの完全性を保護することを目的としている一方で、グローバルな移民パターンの複雑さと政策改革の意図しない結果を浮き彫りにしました。

今後はますます競争が激しくなると思われる「海外移住枠」ですが、まだまだ日本人には国際社会で活躍出来る可能性が溢れています。

今後のカナダ学生ビザや各州の方針の発表や動向からは目が離せません。留学事情、国際事情は日々一刻と変化しています。戦争が始まるだなんて、想像もしていなかった私達に、今は戦争が行われている日々が当たり前になってしまいました。

いつ何が分からない今の世界、海外留学や海外での生活、もしくはリスク分散としての海外での拠点作りの為の海外留学やワーホリ、海外移住に関して数年後の話でも興味が少しでもあれば、まずはリサーチや話を聞くだけでも良いと思うので、お気軽にご相談下さい。早めのアクションが大事です🌟

Photo by Gursimrat Ganda on Unsplash

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