ボンゴを叩くしかない
オッペンハイマーを見ました。長い原作があるようです。
オッペンハイマーは、1930年代にブラックホールの著名な研究者だった。1940年代の前半には、核分裂を原理とするキロトン級の原子爆弾を作る「マンハッタン計画」を先導することになり、大自然しかなかったロスアラモスに3年、20億ドルを投じて、ポツダム宣言に間に合わせた「トリニティ実験」を行った。
これが、カラーで語られていく「核分裂」編のうち前半にあたる骨組みで、よく知られている歴史ですが、このオッペンハイマー視点の物語は、戦後のアインシュタインとの立ち話を先にチラ見せしたりして伏線を張りながら、フラッシュバックシーンもふんだんに、進んだり、戻ったりします。
モノクロで語られていく、戦後の「核融合」編は、オッペンハイマーに恨みをもつ大物政治家ストローズの視点で、原爆の父として有名人となってしまったオッペンハイマーをどう排除しつつ、核融合の原理を使ったメガトン級の核兵器の開発を進め、というよりもむしろ、いかに自分は出世するか、ということのための罠と策略の物語。
このモノクロのほうで、人間のどうしようもなさを濃厚に見せられる。
国防と熱狂。
政治に使い捨てられる知恵。
巻き込まれてしまった研究者たちの絶望と妥協。
ボンゴを叩くしかない、確かに。
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