それでも、生きていくために

その人は、傷ついていた。

あるいは、傷ついた心が悲鳴を上げ
その辛さが、怒りに変わっていたのかもしれない。

私たちは、ときとして、どうしようもなく
理不尽な仕打ちを受けることがある。

その理不尽さは、他人からの仕打ちであったり
あるいは、不運としか言えない
病気や、事故、天災であったりする。

そんな思いもよらない仕打ちに
私たちは傷つき、悲しみ、やり場のない
思いにさいなまれる。

手から滑り落ちたグラスが、床に向かって
落下していくのを目の当たりにしたとき
私たちは、その刹那、グラスが無事であることを
願う。

でも、無事であることをどれだけ
願ったとしても、

もし、運悪く粉々に砕け砕け散ってしまったとしたら、、。

一度砕け散ったグラスは
もう、修復することはできない。

そう、二度と修復することはできないのだ。

その破片は、わずか数秒前まで完璧なグラスを
形作っていて、どれだけその鮮明な記憶があったと
してもだ。

もう、それは、現実世界ではなく記憶の中での
出来事なのだ。

そして、その破片から、余韻を感じることがあったと
しても、現実の物事は既に変化してしまったのだ。

今となっては、それは、グラスではない。

それは、ただの破片であり
つまりは、もう、『別物』なのだ。

確かに、少しの角度が、違ければ
グラスは割らずにすんだかもしれない。

あの時、こうしていたら
こんな状況でなければ、

と、どれだけ後悔したところで
もとには戻らない。

それが真実。

それでも、私たちは、その真実を
直視することができない。

それは、あまりにも辛いことだから。

そして、以前の良き記憶を消すこともできない。

だから、どうしても、考える価値も
答えもないと分かりながらも考えてしまう。

・・・・・・

このような答えのない質問を
受けることが結構ある。

人の心は脆い。

もちろん、私もそうだ。

もし、あなたが何かで辛い思いをしている、

あるいは、これから
することがあるとしたら、

私なりの対処法を
話すことで、その時に
少しは役立つかもしれない。

ということで、書いてみます。

私が、辛い物事や、問題に苦しんでいるとき
まず、最初にすることは、、、

酒を呑むことだ。(笑)

昔は、寝たら自分を取り戻すことが
できたけれど、長年の不眠症生活で
寝て切り替えることができないのだから

もう、酒を呑むしかない。

そして、たらればいって、
物事を引き起こした誰かや
物に怒りを抱けばいい。

でも、それは何も解決しない。

他人を変えることはできないし
時間を巻き戻すこともできないのだから。

だから、あるときから、私は
こう考えるようになる。

「結局、グラスを割ったのは自分なんだ」

と。

誰のせいでも、何のせいでもなく
全ては、自分が巻き起こしたことなんだと
そう思うことにしている。

それは、凄く辛いことのようだけれど
実は、一番楽な道だ。

細かな事は、おいておいて
全部、自分の問題だったんだ
と思うことで、終わりにするのだ。

そうすれば、次にやることは
明確になる。

結局、自分がもっと魅力的であれば、
その問題は起きなかったかもしれないし
もっと、賢く、経験があれば
その問題は起きなかったかもしれない。

であれば、自分を高めていけばいいのだ。

もっと魅力的になれば、次はそんな辛い思いを
しなくて済むかもしれないし、誰かを傷つけずにすむかも
しれない。

そして、自分を魅力的にして、出来ることを
増やすためには、、

たくさん挑戦しなければならない。

たくさん挑戦して、失敗をしなくてはならない。

だから、私は、今まで以上で、仕事を通して
挑戦をして、失敗をしようと考える。

なぜなら、人の魅力は、失敗の数だと思うから。

いい年こいても、失敗するしかないんです。

失敗しなければ、自分は何も
変わらないから。

サッカー選手の三浦カズさんは
ワールドカップに出場することが
子どもの頃からの夢だった。

でもドーハの悲劇で、あとたった数十秒
守りきれれば、勝てたのに、非情にも
相手チームに得点を決められてしまった。

そして、夢が絶たれてしまった。

あのとき、こうしていれば、、
と思う事柄なんていくらだって
あっただろう。

誰かに言いたいことも山ほどあった
と思う。

でも、カズ選手が絶望のなかでした行動は
帰国後ずぐにグランドに向かったことだった。

それは、

「もっと、上手くなるしかない。」

と思ったからだ。

「こんな思いをしないためには
もっと、上手くなるしかない」

と。

全ては自分の問題と受け入れて
もっと上手くなろうと決意したのだ。

そして、その後の4年間、今まで以上の情熱で
サッカーに取り組み毎日を過ごす。

そして、ワールドカップ出場の権利を手に入れ
ついに夢が叶う寸前で、、、

非情にもメンバーから外されてしまう。

子供の頃からの夢をつかむために頑張り
Jリーグを盛り上げ、やっと掴みかけた
最後のチャンス。

それが、失われたのだ。

あれだけ、4年間、頑張ってきたのに。

それでも、カズ選手は、帰国したその足で
グランドに向かった。

そんな絶望の中でも、

「すべての問題は、自分にあった」と受け入れて

「今できるのは、もっと上手くなることだ」

と、思い、夢を諦めないために
練習場へと向かった。

そうして、その後、何が起きても
自分の問題と受け入れ
諦めること無く挑戦し続けた結果、

カズ選手は、とてつもなく、魅力的な人間になり
特別な人になり、人々に勇気を与える人になった。

確かに、ワールドカップ出場の夢は
叶わなかった。

けれど、とてつもなく、魅力的な人が
生まれた。

夢が叶うことより、それは、ずっと
尊く、偉大なことなんじゃないかと思う。

もちろん、本人の気持ちは違う
かもしれないけれど。

私など、恥ずかしいぐらい足元にも及ばないけれど

それでも、

「すべての出来事は、自分に問題があった」

「今できることは、もっと、自分を磨くために
挑戦をすること。そして失敗をすること。
そして、そこから学ぶこと。」

これを、ただ、愚直にそれをやり続けることしか
私たちに出来ることはないのだと思う。

そして、そうやって

自分に全てのエネルギーを注ぎ込み

自分に使った時間は、あなたを
魅力的にする。

誰かの事を想ったって、相手はコントロールできないし
それは、もう失われてしまったものだ。

あるいは、何か環境のせいにしたって
ただのどうどう巡りになるだけだ。

私の場合であれば、仕事で一生懸命挑戦をして
失敗をしながら、時間を過ごし

そして、余った時間で、アホなことをして
笑っていれば、いいんだと思う。

少なくとも、私は、そうやって人生の困難を
乗り越えてきたし、これからの人生でも
そうやって、起きてしまった現実と
向き合っていこうと思っている。

どんな絶望の縁でも、それだけは
忘れないようにしたい。

簡単ではないけれど、全ては自分の責任と
思える人しか、到達できない世界があると思うから。

そういう気持ちを忘れないために
自分のために、これは書いたようなものです。

伊勢隆一郎








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