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愚かなる人間どもよ

他人からの指図に従う、定められたルールを守る、それにより行動を制限される……ということを極端に嫌う人種が少なからずいる。僕はこういう人たちのことが理解できなかった。でもひょっとして、彼らは誰かに指図されることをかっこ悪いと思っているのかもしれない、指図やルールに従わないことをかっこいいと思っているのかもしれない。そう思うと腑に落ちた。

マスクの着用を促されて拒否する、通れませんよという道を通ろうとする、喫煙やポイ捨てを注意されて逆ギレする。中学生かよとツッコミたくなるような子供じみた横暴だが、だいたいこれをやるのはいい歳こいた、きちんとした社会的地位もある大人である。マスクを着けろと言われて着けること、通れませんよと言われて迂回すること、自分のルール違反を咎められること、そういうことをかっこ悪いと断じて拒否することでしか保てないクソみたいなプライド。僕はそっちの方がよほどかっこ悪いと思うのだが、当人たちはおそらく、指図やルールに従わない自分はかっこいい、と思っているのだろう。全く愚かなことだ。

盗んだバイクで走り出すだとか、ちっちゃな頃から悪ガキでだとか、ルールを破ること=かっこいいという価値観は昔からあった。少し違うかもしれないが、不良が暴力でのし上がっていくような漫画や映画やドラマもたくさんあって、これも今でも人気だ。でも正直もうかなり古い、ダサい価値観なのではないかと思う。しかし新しい価値観の台頭もある。例えば迷惑youtuberのように何でもいいから注目されるためにルールを破るようなことをやって、結果的に注目されるから俺スゲー、となるみたいな、拗れた価値観だ。人には自分より下のものを見たい欲があって、一方人には何でもいいから注目されたいという願望もある。指図に従わない、ルールを破る……単にかっこ悪い/かっこ悪いという判断基準ではなく、もっと根源的な、根深いものなのかもしれない。人はすべからく愚かものなのだ。

ここでぐるりとブーメランが飛来してくる。ヤバい人、愚かな人、古いダサい人を槍玉に挙げて、自分はそうじゃない、俺スゲーと悦に浸る。なんと愚かなのだろう。ブーメランの片刃が頭に突き刺さったまま、僕は呆けた顔をしてモスバーガーでこれを書いている。隣の席ではどこかのラクロス部の女子たちが、後輩たちはなっていない、と盛り上がっている。あぁ人というものはなんと愚かなのだろう。

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