大学を評価して、大学を選ぶ時代です。

教育改革が進む大学

今、大学教育は大きく変化してきています。変化の背景の一つには、大学進学率の継続的かつ大きな伸びがあります。そのことにより、勉学目的、意欲、そして基礎学力などそれぞれで大きく異なる学生に対して、柔軟に対応できる教育課程の検討が進み、また、実社会から求められる人材の育成を意識した教育実践が始まっています。現在、大学の教育は転換期にあると言って良いでしょう。
公的な文章の中で、大学を「研究・教育」の場と表現していたものを「教育・研究」と教育を前に出し重視するようになったのは、今から30年ほど前のことです。

これに伴い、大学の教育改革が求められるようになりましたが、その要因の一つは大学進学率の上昇です。2人に1人は大学に進学する、つまり大学進学はエリート層のものではなく、ユニバーサル化してきたことによります。

大学数のピークは783校

具体的には、1950年代、4年制大学への進学率は1桁でした。その後、高度経済成長とともに進学率は伸び続け、同時に、大学数が右肩上がりで増加し始め、1988年に490校ほどだった大学数が、最も多かった2012年には783校まで増加。一方、18歳人口は1992年を境に減少に転じたこともあり、結果として2009年に4年制大学進学率は初めて50%を超え、「大学全入時代」と呼ばれるようになりました。

そして、教育改革を促すことになったもう一つの要因は、社会、企業が求める大卒者の資質です。特に、学部卒者に期待するものは、基礎学力とコミュニケーション能力、協調性など基盤知識・能力など、専門の知識・能力の前提となるものと言って良いでしょう。時代の変化、技術の速い進展に対応できるのは、専門分野に左右されない、言い換えれば、全ての分野に通用する基盤となる知識・能力と言えるのです。

学士課程教育の答申の影響は大きかった

このことは、2008年12月、文部科学省からの答申、いわゆる「学士課程教育の構築」で、基盤となる知識・技能を明示し、国公私立を問わず全ての大学でのその実施を促しました。

以上のことから、大学教育は大きく変化していくことになり、専門教育と同等に近い重みをもって、社会人としての基礎力のベースづくりをする基盤教育が充実し、また専門分野を学ぶ上でも、コミュニケーション能力、協調性などの育成を教育目標に入れることになりました。

教育手法としては、少人数グループによるPBL教育、幅広い科目で行われるアクティブ・ラーニング、ゼミ、インターンシップ、一方的に講義を受けるのではなく、事前に調査、知識を得た上での課題に対してディスカッション、目的を達成するためのプロジェクトスタイルの少人数グループワークなど、様々な形で、基盤教育、そして専門教育において、論理的思考力の育成をベースに、コミュニケーション能力、企画力、問題発見解決力、他の人と協働し成果を上げていく力、そしてプレゼンテーション力などをつけていくことになります。

大学を選ぶ視点として

社会で求められる社会人基礎力、総合力は、学びたい分野で、前述した知識・能力を身につけることであり、また同時に、人間力も養われることになります。

このような教育を学部教育で成果の上がる形で進めようとしているのが現在の大学の学部教育であると言えます。


各大学が、上記の状況を踏まえてどのような人材を養成しようとしているか、そしてそのための教育課程はその目的に適したものであるか、この視点で大学案内を読み、オープンキャンパスに参加して、大学を評価して、受験大学を選んでいく時代が来ていると思います。


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