不幸じゃない不便なだけだよ⑥

初めての手話

手話の勉強を始めようと、聴覚支援学校からおすすめされた手話の本を購入。
イラスト入りで分かりやすいのだが、さて、どんな風に覚えて、おちびに教えて行けば良いものか?
聴覚支援学校から、挨拶だったり、会話の中で伝えたい事がある場合に、本を見て言葉と一緒に手話をする。それを繰り返して行くうちに覚えて行きますよ。とアドバイスされたので、取り敢えずその方法でやっていく事にした。

おちびはミニカーで遊ぶのが好きで、特にバスが好きだ。車に乗っている時も、バスが通る度に反応している。それならばと、バスに反応している時に、
「あれはバスだよ」
と、声を掛け、バスの手話をやってみた。

すると、同じように真似をして、次のバスが来ると、サッとバスの手話をやった!これはすごい!
また車を走らせていると、次は、パパと同じ車だと指を指して教えてくる。
それならと、

「同じだね」と声を掛けながら手話をする。するとまた使うようになる。これは楽しい。今までなんとなくだったやり取りが、通じ合えている気がするのだ。そうやって、暮らしの中で、自然と手話が増えていった。

伝わった

毎日の積み重ねで、少しずつ使える手話が増え、おはよう、おやすみ、いただきます、ごちそうさまなどの挨拶や、椅子に座る、歯磨きをする、お風呂に入る、着替えるなど生活の事も覚えて行き、保育園に出発する時も、保育園バッグを見せて、車、乗る、出掛ける、と手話を交えて話すとすんなり出発出来るようになった。
そして、手話の勉強を始めて2ヶ月頃の事。

その日は、自分も妻も帰りが遅くなるから、夜ご飯は外に食べに行こうと、前日に話していた。先に自分とおチビと娘で帰宅し、妻の帰りを待っていた。

だけれど納豆大好きおチビが、もう夜ご飯まで待ちきれないとばかりに冷蔵庫から納豆を取り出す。もう少し待って、外に食べに行くからと口で説明しても伝わらない。どうして食べて駄目なのか分からず、怒っている。 
なんとか伝わって欲しい思いで、覚えたての手話で、

みんな、車、乗って、出掛ける、食べる

と、やって見せると…
驚く程パッと表情が変わり、笑顔で頷いて納豆をしまう。早く行こうと袖をグイグイ引っ張って玄関まで行き 、靴を履き始めた。

ちゃんと伝わった瞬間。
ちょっとした事なのかもしれない。
でも、ほんとうに嬉しい瞬間だった。

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