不幸じゃない不便なだけだよ③

定期健診

大学病院の検査はとりあえず半年おきに行くことになり、今すぐどうこう出来るものでもないので、とりあえずあまり気にしないようにしていた。
それからは特に何事も無く、成長過程を見る通常の定期健診に通っていく。
ところが、どうも兄姉と比べ発達がのんびりしている。首が座るのも寝返りもおすわりもなかなか安定しなかった。小児科では、発達が遅い、他にも障害があるんじゃないか?と決めつけられ、市の健診でも同じような事を言われた。
6ヶ月をすぎても喃語もほとんど出ない。
音が出るおもちゃにはあまり興味を示さず、動きがあるおもちゃに興味を示す。
左耳は、ほんとうに聞こえているのだろうか?
それのせいで成長が遅いのだろうか?

保育園

4月からは保育園に通い始めた。
園への受け渡しでの朝の大泣きはいつまで経っても無くならない。
とは言っても0-1歳児のクラスなので片耳の事は特に気にならずに、普段の集団生活はそれなりにこなしていた。ただ、運動会や発表会など大勢の人に見られる状況が苦手なようで、大泣きしてしまう。
そんな状況を見て、ある先生には、やはり何かあるんじゃないですか?
と言われてしまう。園生活のスタートはとても苦しいものだった。

ないない、あー


そして、1歳半頃の事。
まだ意味のある言葉が無いし、伝い歩きだけで一人で歩こうとしない。 上の二人より明らかに遅い。
個人差があるから気にしなくても良いのは分かってる。 のんびりでも良い、元気ならと思うようにしてた。 と言うか、夫婦で、自分たちに言い聞かせてた。
半分しか聴こえていないから言葉が出ないのだろうか?
もしかしたらもう一方も聴こえが弱いのではないか?
呼びかけても反応が薄いのは聴こえてないんじゃないか?
と、やはり不安な毎日だった。

ところがある日、いないいないばあをして遊んでいると、自分からパパの顔を隠し、
「ないない、あー」
と言った!!!

もう一回!もう一回!と同じように顔を隠すと
「ないない、あー!」
!!!!!

その瞬間、ちゃんと聴こえてるんだ!!と言う、喜びと安堵で自然に涙が出た。

左も…

「ないない、あー」の声で涙した日から更に半年ほど経ち、二歳になった。あの日以来、「ないない、あー」を言うことは無かった。これはさすがにおかしいと思い、大学病院の診察の日はまだ半年先だったが、担当医に事情を話し、診察の予約を入れた。
検査はいつも通り変わらず、しかし、全く言葉が出てこない事と、こちらの言葉も理解していない事を話した。
では違う施設で専門的な検査ができるのでそちらで検査してみましょうと言われ、後日、検査に向かった。
検査内容は、眠っている間にヘッドホンを付け、脳波で反応を見るもので、1ヶ月の頃に行った検査と同じだった。


検査は同じだったが、結果は違った。
両耳共に反応が無い。
高度難聴と診断されたのだった。
その結果を踏まえ、大学病院に戻り、後日、また同じ検査をしたが、結果は両耳共に高度難聴。

不安を払拭する為に、診察の日を早めたのだが、更に不安は大きくなってしまった。
少しでも早くわかって良かったと思うしかなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?