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VTuberについての学び

きょうのキーワードは「VTuber」です。

私はこれまでいわゆるYouTuberによる動画コンテンツに大して触れておらず、ましてVTuberについては守備範囲外でした。ネットでトレンドを集める一環としてちらほら名前を見ていただけの頃は、まさかここまで市民権を得てくるとは全然思ってもみませんでした。最近だとVTuberがテレビ番組をやってたりしますし、テクノロジーの進歩を噛みしめざるを得ません。

私は最近になってVTuber文化に触れるようになりました。実際のVTuberの配信動画を観て空気を知り、VTuberをテーマにしたネット小説を読んでその性質を知り、なぜこれほど大きなムーブメントになったのかが少しずつ見えてきた気がします。

特定のVTuberをどうこう紹介するつもりはないので他人の名前は出さず、自分なりに学んだアレコレを書き残そうと思います。


VTuberとしての成功

まずVTuberの売り出し方に着目すると、YouTuberのようでありつつ、アイドルのようでもあると気付きました。「好きなことで、生きていく」ためにはざっくり、コンテンツで注目を集めつつ再生数を稼ぎ→収益化によってお金も稼ぐことが肝要です。

いわゆる”投げ銭”機能であるスーパーチャット(スパチャ)も大事な収益であり、人気のバロメーターとしても機能します。ただ、画面を見ていれば誰がいくら払ったかが分かるシステムになっているためか、自然と金を積んで愛の深さを示す体質がついてまわり、そこがアイドルの握手券入りCDを思い起こしてしまいます。スマホゲームのガチャもまた然りです。


私は投げたことがありませんけどね。

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余談ですが、収益化(YouTube パートナープログラム加入)の条件といえば…
「チャンネル登録者数1000人」
「過去12か月の再生時間4000時間」

が最たるものとなっております。

数字を出されると果てしない…と思いきや、無名の一般人でも頑張って続ければ十分突破できるかもしれない条件であるのは、現実からもわかります。そう考えると、己のコンテンツ力の試金石として相応しい基準だとよく思います。

私も細々とチャンネル動かしてます(ひっそりと)。
VTuberではありませんが、オリジナル曲のリリックビデオやステージ映像があります…推して…伸びて…

余談ここまで。

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ファンとの距離感

VTuberにとって、ファンとの交流は人気UPに欠かせません。

リアルタイムの配信ならば、チャットに参加してメッセージ(その他)を直接伝えられるので立派な交流です。リモートワークやリモートイベントが増えた昨今なら尚更「同じ時間を共有できる」体験として受け止められる人が増えたことと思います。

他にもSNSで直接リプライするなど、VTuberとファンとが友達感覚で接する光景は決して珍しくありません。しばしばリスナーに砕けた感じに絡むのはもちろんのこと、ファンもファンでストレスフリーにムチャ振りしたりボケかましたりしています。

ただ、こんなフリーダムなたまり場だからこそ”安易に一線を越えてはいけない”というように、モラルやリテラシーを喚起しなければいけない時はあります。「ネットの中だからって、何でもやっていいと思ったら大間違いだ」という某格言が指す通りです。それでも、そんな風にVTuberとリスナーが密な距離感で楽しみながら育てる場こそが各々のYouTubeチャンネルなのだといえます。

”推し”と簡単に繋がれる時代。同時に、誰もが”推されられる”時代。アイドルが”雲の上の存在”だった昔とは本当に変わったものです。

VTuberになる人間

動画制作のための環境を整える点は当然YouTuberと同じですが、VTuberには生身ではないキャラクターになるというファクターが追加されます。YouTuberとしての企画力・継続力・熱意はもちろん、そのキャラクターをどれだけ魅力的にプロデュースできるかが人気に大きく関わっているわけです。例えば「歌が上手い」「ゲームが強い」「語れる趣味がある」「ユーモアに長けている」といった強みが一つでもあれば、企画をその方向に特化させるのも有効です。近年ではタレントよろしく事務所に所属し、バックアップを受けつつブランドを背負って活動するVTuberも数多くいます。

そもそも、当然ながらVTuberには「中の人」がいます。

配信・編集ができるよう動画制作環境を整え、ガワ(イラスト)をイラストレーターに依頼して、モデルとして動かせるようモデラーに依頼した人がいます。界隈ではこの人間を”魂”と呼びならわしています。

視聴者もそれを承知の上で、暗黙の了解という高度なコミュニケーションを楽しむのがしきたりです。魂がどこの誰だったとしても、その人間は関係ない…このスタンスは着ぐるみの類いと同じと言えます。

いずれファンは何分でも何時間でも姿を眺めていられるぐらい、声を聴いていられるぐらいVTuberに魅了されていくのです…

…ところが??


バーチャルとリアルとのあいだに

そうとばかりもいきません。

何分何時間の配信のうち、不意にキャラクターとのギャップが露見してしまうことがあります。彼らはバーチャルのキャラクターをロールプレイングしながら、現実世界の一人間として振舞う時がしばしばあるからです。

例えば、彼らは普段の生活や職業といった身の上話や、音楽・ゲーム・映画など”自分”の趣味嗜好の話もしているようでした。

配信とはライブ感、即興性を楽しむもの。週に何本も枠を取るVTuberも珍しくなく、綿密な台本を毎回毎回こさえるケースはまれでしょう。言い換えれば、よほどの反射神経と集中力がない限り”キャラとして”の100%の正解を提供できるとは限らないと言えます。

魂がキャラクターを自ら崩した瞬間、視聴者はニヤニヤするかもしれません。困惑するかもしれません。鉄板ネタが増えるかもしれません。炎上するかもしれません。いずれにせよ、そんな時にはとてもユニークな光景が広がることでしょう。例えるなら、着ぐるみの中を覗いたような感覚と言いましょうか。

バーチャルとリアルとの境目が曖昧になる。これはVTuber独特の現象です。そもそもの話、アバターを指して「VTuber」と呼ぶべきなのか、はたまたそれを動かす人間を「VTuber」というのかそれすらも曖昧です。「だったらバーチャルじゃなくてよくない?」的な疑問は野暮なコトとなり、その曖昧さがアニメーションにも実写YouTuberにもないコンテンツの旨味として受け入れられたのではないかと考えました。


ギャップといえば、女の子のキャラクターなのに声は男のままというフォーマット(いわゆるバ美肉おじさん)には非常なインパクトを食らいました。そういう場合はてっきりボイスチェンジャーや声優の採用前提かと思っていましたが、むしろあえて使わないというギャップが魅力の一つとして機能しているらしいです。


VTuberアラカルト

へえ!と感心した文化を以下に挙げてみます。

1:切り抜き動画
VTuberの配信動画の美味しいところを切り貼りして、字幕を付けるなどしてまとめた動画を指します。30分~1時間~それ以上の長尺なものが多いため、短時間でイイところを楽しめる需要は納得です。別名「よくばりセット」。

注目すべきは、これがダイジェストとしてVTuber自身が用意するものではなく、ファンがファン向けにファン視点で自由に切り抜いているという事情です。

人気VTuberの切り抜き動画を専門に投稿する上収益まで受け取っている投稿者がいると知り、最初は「動画を無断で加工してアップするファンってどうなのよ?」と訝っていたところです。

しかし、ファンとしてはあくまでも「推し活」の一環であり、新規ファン獲得に繋がるため、当のVTuberたちは大方これを黙認していると理解しました。この行為については、原作を元にファンが勝手に作る同人誌に例えた記事を見つけ、黙認という点もスッと腑に落ちてます。

もちろん、そこに悪意があれば黙認は崩壊するでしょう(参考:発言の切り取り)。

2:マシュマロ
略してマロ。
誰でも匿名でメッセージを送れるサービスの名前です。VTuberがアカウントを作って投稿を募り、ファンが届けたメッセージにリプライする動画は「マシュマロ返信」という配信スタイルとして確立しています。リスナーが質問や要望を投げかけるために使うケースもしばしばあるようですが、結果としてファンとの双方向コミュニケーションに繋がります。

このサービスで何より重要なのは、誹謗中傷性的な発言といった好ましくない表現を自動で隠してくれるという機能にあります。VTuberもいわばタレント的存在であり、アンチや炎上・誹謗中傷といった問題には敏感(センシティブ)にならざるを得ません。誰かが尖った言葉を投げつけても「マシュマロ」とはまさにこの意味で、動画内で披露してもギスギスせず平和な空気で交流できるとくれば、VTuberがこぞって採用するのも納得です。

要は公序良俗に反していなければ送れるので、予定調和を壊すかのようなネタを投下する(ネタマロ/クソマロとも)のもまた一興、といったところでしょうか。

3:魂と肉体
VTuber界隈では”魂”が「中の人」、”肉体”が「キャラクター」を指します。

「中の人」が肉体に魂を吹き込んで初めて「キャラクター」が完成するという図式は真っ当ですが、この場合、一般的な意味で実体を伴うべきの”肉体”には実体がなく、逆に実体がないはずの”魂”が「中の人」という実体であるというウィットは非常にパンチが効いてます。

VTuberのVがバーチャル(Virtual)のVであることが示すように、バーチャル上には彼らが”実在”しているからこんな状況が機能するわけです。

4.センシティブ
Twitterにおいて「写実的な暴力描写」「成人向けコンテンツ」「グロテスクなコンテンツ」など、発信するにあたって配慮すべきとされている内容をこう総称することから来ていると思われます。YouTubeでもそういった動画を自動的に「不適切動画」として振り分ける仕組みがあり、投稿したチャンネルは停止(俗にBANとも)に追い込まれる可能性があります。

さて、VTuber界隈でこの言葉が出てくる機会と言えば十中八九エロ系でしょう。場を盛り上げるため、あるいはその場のノリでいかがわしい内容をぶっ込んだ時「それはセンシティブだ」等々やいやいツッコミが飛んでくるのが定番です。

下ネタは適量使えば動画の最大瞬間風速になりうるポテンシャルがあるし、ファンにも喜んでもらえるので、逆に頑なに拒絶するVTuberの方が少ないのではないかと思えます。そのため「センシティブ」とツッコめば、むしろギリギリを攻める空気を煽ることにもなり得ます。ファン側もファン側で、好きだからこそ過激な展開を期待してしまうのもファン心理の現れなわけで、VTuber同士のカップリング(CP)妄想をはじめとした二次創作的発想はしばしばその範疇に入るものです。

ただしVTuberも視聴者も、そういった言動・行動が度を超えてしまえば(悪気がなくとも)互いに傷つけてしまう可能性があります。

ガワを着ていても一人の心。
姿が見えなくても一人の心。
何を言われても傷のつかない心はありません。
センシティブとは”ムフフなこと”ではなく、センシティブな心のために「配慮すべきこと」という元来の意味を忘れてはならないと考えています。

5:くしゃみたすかる
VTuberだって一人のヒト……つまり反射でくしゃみをしてしまったとき、一部の視聴者が反射で投げ返す(らしい)言葉です。

VTuberがくしゃみをすると、めぐりめぐって世界のどこかで誰かの命が救われる…といった大層な話ではありません。突然のくしゃみが可愛らしいとか可笑しいとか、そういう感情を短く表現しているのだと思います。

記事の前にも書いたような、不意に人間臭さが露見してしまう面白さが文字通り炸裂しているのだと言えます。

ではなぜ彼らは「助かっている」のかと突き詰めるならば、ここからはロジックではなくフィーリングで解するものだと思います。


まとめ

かつてVTuberを守備範囲外に思っていたのは、受け付けなかったり偏見があった訳ではありません。あまりにも数が多すぎて、誰の動画から入ろうか全く見当を付けられなかったからでした。それがちょっとしたきっかけで見始めてからは、なんだかんだ面白そうなコンテンツにちょこちょこ流れ着いてます。

ドラマやアニメのようにストーリーを追ったりする必要は特にないし、「肩肘張らず気楽に見るぐらいでいい」という空気感がだんだん見えて、段階的に視聴へのハードルが下がってます。

何年も前の話ですが、私は親戚の家で初めてプロレスのDVDを観賞した日、携帯でプロレスの技の名前を調べたり、思った以上にエキサイトしてました。「好きなレスラーが一人でも見つかったら、多分そこから沼ハマっちゃうんじゃないか」とも考えてました。

記事を書きながら、VTuberに対してもそういう予感めいたものを持っています。

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