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瀧泉寺電気鉄道税関線レイアウト製作記(その1)

 天王洲付近にある税関線は、運河沿いにある新浜港駅からビール原料の荷受施設がある税関前駅を結んでいます。貨物輸送が主体の路線のため、昼間は都会なのに30分に1本しか電車が来ない、とてものんびりとした路線です。
 …という架空鉄道です。

■コンセプト

 ある資料に乗ってた工場を背景に長いガーダー橋を渡るDLの写真にひとめぼれしたのが、このレイアウトを作るきっかけでした。でもとくに工場好きというわけでもなく、横浜の高島貨物線や鶴見線をロケハンしたりして、ようやく決めたのが「運河+草ぼうぼう」というイメージでした。小学生の頃に見学させてもらった浜川崎駅構内も多分に影響しています。
 このイメージに従って以下のようにコンセプトを決めました。
・運河を風景の中心にする。
・植物の脅威がわかるようにする。ツタや雑草がぼうぼうの状態にする。
・建物は最小限、といいつつランドマークとなる建物は欲しい。
・工場は思い切ってなくす。
・色味はできるだけ明るくして、港湾風景ののんびりした様子を再現する。

 こうしたものを決めたあと、次のシーンを再現できるように考えながら作りました。
・京急旧羽田空港駅や浜川崎駅のような日中の閑散とした終着駅の風景。
・鶴見線などに見られる高架と高架下の鉄道風景。
・草むらが茂った先の見えないカーブ。
・駅の横にすぐ川がある風景。
・運河をまたぐ長いプレートガーターの鉄橋

 実物のイメージはこんな感じです。

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■線路配置

 前作のレイアウトを遊んでいて「ポイントtoポイント」で「ヤード」が欲しくなり、それを今回のレイアウトで実現させることにしました。
 スペースは用地取得の結果360×900のサイズがぎりぎりなので、そこに詰め込むようにしました。当初は難しいかなあと思いましたが、意外といろいろアイデアが出せてよかったです。
 線路配置いろいろ検討して当初8の字にしていましたが、どうにも単調に感じたため、ドッグボーンを折りたたんだものに変えています。またヤード部分は信号所的な設定すれ違いもできるようにしました。小さいながらもてんこ盛りな感じです。

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 線路はすべてトミックスで、基本的なカーブはC140でまとめています。ポイントはミニポイントPL140-30、PR140-30を使っています。

■レイアウトの土台

 収納などで持ち上げたりするため、できるだけ軽量化することにしました。
 基本となるのはスタイルフォームで、450×360×50のを2つくっつけたものを使いました。これを河面とし、その上にさらにスタイロフォームでかさ上げしたものが地面になります。
 このままだと強度的に不安だったので、窓枠の化粧張りに使われる「L字材」の包装に使われていたとても固いクラフト紙で囲みました。
 できたものは片手で持てるぐらいには、軽く仕上がりました。猫が急に乗ってきても大丈夫です。
 あとでJAMに参加するというときにも、レイアウトの持ち運びが軽くて助かりました。

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■レイアウトの色彩設計

 シーナリーを作る前に色彩設計をしてみました。私の仕事でもちょっとかかわることがあり、それをレイアウトにも応用してみた次第です。
 色彩設計とは、アニメでゲームで、どんなものをどんな色で塗るのか、そのルールを決めていくことになります。たとえばファンタジーな世界観を持つアニメでは、彩度をやや高くして中間色を多く使うようにすると、ほんわかとした雰囲気になります。逆にシリアスな作品であれば彩度を落とし暗めの画面とすることで悲壮感を出すことができます。
 このように「空気感は色として出せる」ことができるのです。
 今回は春先のまったりとした雰囲気にしたかったので、実際に鶴見線や高島線などにロケハンに行き、どんな色調になるのかよく観察してみました。そこから得た知見を基に、次のルールを決めました。

・彩度の高い色は使わない。なるべく中間色。
・道路、草木の色はかなり薄い色にする。道路であればねずみ色1号、
 フォーリッジは淡緑色を中心にして、ライトな色を中心にする。
・河川も光るが当たると淡い緑色になるので、それを再現する
・青系など寒色は基本的に使わない。

 ちなみに人間の目は色を同時に8色ぐらいしか認識していないので、表面積が大きいものに適用すると、効果が高くなります。レイアウトなら草木、道路、建物(特に屋根)、バラストに適用すれば、そのようになります。
 また、あまりにルール通りにしてしまうと単調になってしまうので、目立たせたいところのワンポイントとしてルールを破っていることもあります。後述する税関の建物は色を濃い目にして目立つようにしました。日の丸弁当でのうめぼしとご飯の関係のようにちょっとだけルールを崩してあげるのがポイントです。

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■バラスト

 バラストはモーリンの亜幹線用を使用し、木工ボンドを希釈したボンドバラスト法で固着してます。ポイント周りはマスキングの上、ヤマト糊にバラストを混ぜたものを使用してみたのですが、収縮を起こして隙間が空いてしまい、いったん剥がしてマッドメディウムでバラストを練ったものに敷きなおしました。
 線路の塗装はパステルを粉状にしたPANPASTELというものを使ってみました(KATOホビセンで購入)。筆にとって中央から両脇にぼかすように筆を動かします。塗料と違い、伸びてはくれませんので、脇のラインがあまりそろってくれません。少しずつ調整しましたが、基本的には草で隠すのでいいやと割り切り、適当にしました。レールは塗装しなかったのですが、この工程でそれなりにぼけた感じになり気に入ってます。

■道路

 ボール紙を切り出し、ねずみ色1号をムラになるようにスプレーしたものを使いました。道路の色はほんと困りもので、実物通りにするとかなり暗くなってしまい、かといって明るすぎるとそれっぽく見れなくなります。いまのところ春の日の道路は、これぐらいかなあと思ってます。
 道路の白線はマスキングして白い塗料をスポンジでポンポンといれています。こうすると適度にかすれてくれるので、ちょっと好きな方法です。

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■草と桜

 下草はフォーリッジやターフの明緑色にマッドメディウムを混ぜたものをベースとしています。これにアクセントとして緑色を適宜いれています。 
 よくパウダー系の固着がめんどうという意見を見かけますが、うちでは、納豆よろしくパウダーにマッドメディウムを加えて塗りつけるようにしているので、あまり飛び散らず、形も固着までにはいじれるので、なかなか便利です。ただ乾くと色が濃くなるのでマッドメディウムの量には注意が必要です。
 少し長めの下草には、ミニネイチャーの「737-21 光る草むら春うらら」を中心に使いました。 
 こうした運河沿いの空き地や工場には、よく一本だけ桜が植わっていて、なかなか風情があるものです。このレイアウトでは、きたろくの桜を植えてそれを表現してみました。
 枯れたツタは、園芸用のミズゴケを脱色してそれっぽいものを探して、高架とかに這わせています。穂先の部分は緑色を吸わせて喫茶店や駅の観葉植物にしました。
 こうしたものを高島線や鶴見線の写真を見ながら、どんなところはどんな大きさのものが生えるのか、それを考えながら線路脇や高架に乗せるように置いて生やしていきます。また、立体に気をつけて、盛るところと盛らないところの差をつけると見栄えが良くなります。
 新浜港駅や税関署脇にちょっとだけ木もあります。オランダフラワーにノッホのパウダーリーフをまぶして作りました。光を当てると木漏れ日ができて、良い感じです。
 こうした運河沿いの空き地や工場には、よく一本だけ桜が植わっていて、なかなか風情があるものです。このレイアウトでは、きたろくの桜を植えてそれを表現してみました。

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■運河

 このレイアウトのかなめです。当初は細長い感じにしようかと思ったのですが、広い運河の感じがせず、思い切ってレイアウトの真ん中を全部くりぬいてみました。
 下地には0.3tプラ板を切り出し、明るい緑色に塗ったものを敷いています。擁壁もプラ板で段差を作った後、灰色に塗ってアクリル絵の具でウエザリングを行いました。これらをレイアウトに張り付けたて隙間をパテや木工ボンドで埋めたあと、「ITW デブコンET 高透明注型用樹脂」という透明レジンを流しました。これはラッカーで薄く緑色をつけています。

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■高架

 自作しようと5mmの角棒を切り刻んでいたのですが、なかなか精度が出ず、面倒になってKATOの高架脚を使いました。足の部分だけタミヤのレザーソーで切り出し、モールドされている排水管などをやすりで落としています。高架本体は0.5tのプラ板を切り出して、2mmの角棒をのりしろとして端部に貼り、そこにEverGreenの2mm×6.3mmの角棒を貼っています。
 アクリル塗料で塗装後、ここにトミックスの古い高架橋の手すりを切り出して艶消し塗装したあと、ゼリー状瞬間で取り付けました。

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■鉄橋

 コンセプトのため鉄橋だらけです。一緒なのも芸がないので、いろいろ変えています。いずれも色だけはタミヤカラーのAS-19インターミディエイトブルーに統一し、同じ鉄道会社の橋っぽくしました。

デッキガーダー

 トミックスのものを加工しています。Nゲージマニュアル『本線上のストラクチャー』に掲載されている加工例のように端部を切断して、下のラインが連続するようにしています。レールは280mmのものを使ってロングレール化しました。この製品は枕木と橋は一体成型のため塗り替えがたいへんで、枕木をちまちまちまちまとマスキングして塗り替えています。
 枕木間には、プラ板でガイドレールを作り、ステンレスの網を切り出して塗装後貼り付けています。

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〇ポニートラス+スルーガーダー

 ポニートラスはVollmerの古いキットを組み立てました。ゴツくてかなりお気に入りです。
 スルーガーダー部分は、KATOのを切り出して、下の桁部分はプラ板でそれらしくまとめました。
 なんとなく昔あった東急東横線の渋谷~代官山の山手線を渡った橋をイメージしていますが、これまた昔あった横浜駅出た直後の東横線の鉄橋のほうが近いかもしれません。

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〇カーブ部分のガーダー橋

 グリーンマックスの架道橋を切り詰めて使っています。バラストが敷かれているガーダー橋の場合、橋桁に斜めの覆いが付いているものが多くて、それをプラ板で再現してみました。高島線にあったものをイメージしています。

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トラフガーダー

 トミックスから発売されたものを使っています。線路端のところだけ真ん中が開いていないので、そこだけ穴をあけておき、桁を連続させても不自然がないようにしています。
 イメージとしては四日市の阿瀬知川踏切付近をイメージしています。

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■橋脚

 デッキガーダーのところは製品付属のを短縮して利用しています。端部の橋脚はプラ角棒を集めて間にプラ板をU字型に丸めて入れ、中身をポリパテで埋めたものを使いました。

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 ヤードにかかるところは幅が狭いので、KATOの架線柱を組み合わせて鉄骨タイプで支えるものにしました。三河島の貨物線や上野駅のガード下にあるようなものをイメージしています。構造的にはかなりいい加減ですが、わりと気に入っています。

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以下その2に続きます。



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