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『リラの花咲くけものみち』(光文社発刊) を上梓された藤岡陽子さんによるトークイベント報告レポート


小説の舞台が北海道ということもあり、参加者の皆さまには、獣医を目指す主人公が暮らしていた北海道の雄大な自然の映像から見ていただきました。

現在、300回を突破した隆祥館書店の「作家と読者の集い」という体験型のトークイベントですが、藤岡陽子さんには、実は、第2回目の2012年、1月にお越しいただいています。
まさに古参であり、誇るべき常連さんです。

イベントをするまでは、書店としては出版社の営業の方とのお付き合いだけでしたが、作家さんが人前でトークする機会には、編集者の方が必ずと言って良いほど、お越しになられることに気がつきました。作家さんと共に本を作られた編集者の方とは、感動した本に出逢ったときの書店の主(私)と本に対する熱い思いが、同じなのでした。

藤岡陽子さんと最初に来られた編集者、大久保雄策さんの藤岡さんを見守る温かいまなざしは、今もしっかりと脳裏に焼き付いています。

今回の「リラの花咲くけものみち」のイベントでは、

第一部では、なぜ北海道を舞台にされたのか。臆病な少女を主人公にされたのはなぜなのか。物語に込めた思いについて、お聞きしました。

藤岡さんの小説には、いつも実在のモデルがいます。今回は、獣医を目指す大学生の娘さんの存在から書かれたということで、実際に、大動物(牛・馬)の実習5泊6日についていかれた時のお写真から見せていただきながら説明をお聞きしました。

本書の中でのやりとりで、
「逃げるのは悪いことじゃない。逃げなきゃ死んじまうことだってある。逃げた先で踏ん張ればいいんだ。今辛いことから逃げたとしても、時間を経て変わることができる。苦しんだ人の方が、初めからなんでもできるやつより強いよ。」この言葉が、私には、つらいときの回答のように心に響いたので、このフレーズを使われた理由についても、お聞きしました。

心に響いたフレーズ、すべてに意味があり、思いがありました。
藤岡さんは、感動したことがあった時に、それを書かなければと思うと仰っていました。

今回の小説に出てくる感動の物語、「大造じいさんとガン」もそうです。これは椋鳩十さんが、戦争に加担するような絵本をたくさん書いてしまったことに対して、自分を悔いて、贖罪のような気持ちで戦後に著された絵本だそうです。

会場で「大造じいさんとガン」を知っておられますか?と、お聞きしたら、手を上げて下さった方は、全体の3割ほどでした。とても残念で、むちゃぶりかと思いつつ、藤岡さんにあらすじを簡単にお話してもらえますか?とお願いしてしまいました。

すると、「上手く話せるかな?」と言いつつも丁寧にお話して下さり、感動のシーンでは説明しながら涙声になられ、「泣きそう。。。」と言いながらも続けてくださいました。

そんな藤岡さんを見ている会場は、「大造じいさんとガン」の話への傾倒もさることながら、何とも言えない温かい空間となっていきました。

第二部では、「満天のゴール」のNHKでのドラマ化、今秋には「おしょりん」の映画化ということもあり、自身の著作が映像化されることについて、これらの本にまつわるエピソードをお聞きしました。

眼鏡卸組合から参加して下さっていた方から「おしょりん」への質問

地方自治体が行っている3歳児健診について、問診だけのところもあるが、大阪府ではやっと去年から機械を入れての健診をするようになった。6歳で視力が固まってしまうため、3歳児健診で、異常を見つけることが、重要視される。「おしょりん」の物語の中に出てくる末吉さんのお子さんは、視力の低い子どもの設定だが、このエピソードはどのような経緯で思いつかれたのですか?

という問いに対して、

看護師もしておられる藤岡さんだから語れるエピソードと共に、なぜこの設定にしたのかも教えていただくことができました。
「常に、首をかしげる姿勢にかたまってしまう子どもさんがいて、整形外科に、長年ずっと通っていたのですが、その原因は目にあるのではないか?と気づかれた眼科医がいたんです。『斜めに見えるために、ずっと首をかしげて見ていたのだ!』その原因を掴み、これは治るということを発見した眼科医の存在。先入観にとらわれずに柔軟に観点を変えることで解決に導くこと、これに感動して末吉の子を、視力の低い設定にしたという。

今回は、ここだけの話も沢山お聞きすることができ、その中で、作家の方の人間性まで感じとることができました。改めて、体験型のイベントを続けてきて本当に良かったと思いました。


藤岡陽子さん、お忙しい中ありがとうございました。


最後に、編集者の大久保さんからのメッセージを載せさせていただきます。

「藤岡陽子さんの小説を読み終えると、何れの作品にも共通の思いが込み上げてきます。人間っていいなあ、生きているっていいなあと言う思いです。小説の「エンタメ」呼称からなのか、小説は役に立つものではないと思っている人は多いのではないでしょうか。
読み終えると生きる力が漲ってくる、これ以上に人の役に立つものはあるでしょうか。
読後の感動に生きる力が漲ってくる藤岡作品の魅力を一人でも多くの人に知ってほしいと思います。」

イベントの報告レポ-トを読んで下さりありがとうございます

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