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詩はアートの一部、だけれど

2月22日に、経済産業省のホームページで「×ART スタートアップガイドライン」が公表された。
アートプロジェクトをはじめたいと思っている地方公共団体や地域住民向けの手引書のようなもの。

経済産業省は、ときおり良質の文書を公表するので、参考にしている。
2015年の「コト消費空間づくり研究会報告書」とか、2016年の「地域ストーリー作り研究会報告書」とか。
前橋市の中心市街地で詩を活用した活動をしているぼくにとって、コンセプトやイベントのアレンジを考える上で参考になる。

「×ART スタートアップガイドライン」、ざっと目を通してみたけれど、読み物として面白いし、ためになる。

でも、もやもやする。

なぜもやもやするかというと、「アートプロジェクト」を「ポエトリー(詩の)プロジェクト」に置き換えた場合、「あーあ、やっぱり詩は地味だな、、、」という気分になってしまう。

アートは「モノ」としてインパクトがある。ポエトリーは「モノ」としてのインパクトが弱い(詩碑、本、言葉の展示とか)。
「コト」であればアートもポエトリーも対等に渡り合えるけれど。

いずれにしても「交流人口を増やす」とか「消費を増やす」という点で、アートのほうがポエトリーよりずっとアドバンテージが高い。

より具体的に言うと、ぼくは芽部という団体で「前橋ポエトリーフェスティバル」というイベントを毎年開催しているけれど、ありがたいことに詩人がたくさん集まってくれる。でも「詩のファン」はほぼ皆無だ。

アートには鑑賞者(観客)がたくさんいる。ポエトリーにはそれがほとんどいない。

ぼくの前橋の街なかでの活動の根本は「詩の裾野を広げる」というもの。
詩の裾野を広げるとは、ぼくにとって、詩を書く仲間を増やすということ。詩のファンを増やすところまで、手が回らない。

たぶんこれは前橋に限った話ではなくて、全国同じ状況だと思う。

いつも思っているのは、「詩はアートの一部」だということ。
アートと連動すれば、可能性は開ける。
実際、アーツ前橋は、2019年に「ヒツクリコガツクリコ」という、言葉をテーマにした展覧会を前橋文学館と共催した。
萩原朔美館長が就任してからの前橋文学館の展覧会は、美術作家や映画監督など、幅広い表現が加わり、展示におけるビジュアル面の工夫も従来の文学館の概念を超える意欲的なものになった。

「×ART スタートアップガイドライン」の後ろのほうには、続けるためにはどうしたらいいかが書かれている。
始めるのは勢いでできる。
でも、継続するのは難しい。
お金と担い手が問題として立ちふさがる。

ぼくのやっている「芽部」の活動でいうと、毎年秋にアーツ前橋の補助金があったので申請して「ネコフェス(途中から猫町フェス)」を開催していた。中止してしまったのは、企画内容のマンネリ化と、アーツ前橋の補助金事業がなくなったから。
前橋ポエトリーフェスティバルは自腹でやっているので、ネコフェスまで自腹でやる資金力がぼくにはなかった。

「×ART スタートアップガイドライン」にも、補助金は自立していくための一時的な補助、というようなことが書いてある。
確かに、補助金をもらったことは何回かあるけれど、「いただいた金額に見合う貢献を地域に与えているか?」「自己満足のために人様のお金を使っているのではないか?」という不安に捉われて、いっそのこと規模は小さくてもヘンな不安を持たずにやるほうが楽だ、という考えに落ち着いている。

担い手については、芽部のメンバーが主体ではあるけれど、前橋ポエトリーフェスティバルやその他のイベント等を行うときは、出演者や出展者、時には観覧者を「手伝ってください~」といつの間にか巻き込んでいる感じ。

お金も担い手も、自立していくためにはこのままじゃダメなのだろうけれど、でも、ポエトリーのイベントは、スケールを追い求めるよりか、参加者全員が顔見知りになれる規模感で、一人ひとりが親密な時間を過ごせることを優先するのがいいかな、というのが現在のぼくの答え。

結局、「×ART スタートアップガイドライン」は参考になるし面白い読み物だけど、アートプロジェクトとは違って、ポエトリープロジェクトは違う方向性で育てていくしかないのだと思う。

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