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【浄土真宗の言葉】#100 他力の信心は、善悪の凡夫ともに仏のかたよりたまはる信心なれば、源空が信心も善信房の信心も、さらにかはるべからず、ただひとつなり

他力の信心は、善悪の凡夫ともに仏のかたよりたまはる信心なれば、源空が信心も善信房の信心も、さらにかはるべからず、ただひとつなり
 
 
 
【解説】
 
今回は「他力信心は阿弥陀仏から頂くのだから、法然の信心も親鸞の信心も、全く同じものである」という内容です。
 
 
これは「信心諍論」「信心一異の諍論」「信心同異の諍論」などと呼ばれるもので、本願寺3代・覚如上人の『御伝鈔』に書かれてあります。
 
あるとき法然聖人のおられる場所で、親鸞聖人が「法然聖人と私の信心はまったく同じです」と話されたことに対して、他のお弟子たちが「そんなはずは無い。なぜそういうことが言えるのか」と批判されたということです。
 
ですが親鸞聖人は「私と法然聖人の智慧が同じだというであれば、確かにそれはおかしいでしょう。しかし信心は阿弥陀仏からいただいたものなので、法然聖人の信心も私の信心も同じ、1つのものなのです」とお答えになりました。
 
そして法然聖人も「信心が変わるというのは、それは自力の信心においていえること。人によって智慧はちがうので、その信心もちがってくる。しかし他力信心は阿弥陀仏からいただくものなので、善信(親鸞聖人)の信心も私の信心も同じなのだ。信心がちがうという人は、私がいくお浄土へは参れないだろう。よく心えてください」とお説きになりました。
 
 
この「信心諍論」から分かることは、自力による信心は人によってちがってくるけれども、阿弥陀仏からいただく他力信心はまったく同じものであり、人によって変わることはない、ということです。
 
他力信心の特徴が簡潔に伝わってくる、重要なお示しです。
 
覚如上人のご著作にはこのような素晴らしい記述がいくつもあります。
 
 
ただし実は、『御伝鈔』には信憑性に欠ける部分がある、という批判もあります。
 
たとえば『御伝鈔』の中に「信行両座」と呼ばれる文章があります。
 
これは法然聖人のお弟子であった親鸞聖人が、他のお弟子がたに対して「信と行のどちらによって極楽往生できるか」をたずねたという内容です。つまり「信心で極楽往生するのか、念仏で極楽往生するのか」ということです。
 
ですが法然聖人は念仏為本を打ち出された方で、念仏が極楽往生の業であることを明確にされました。
 
その法然聖人が、念仏ではなく信心を選択された、と『御伝鈔』には書いてあります。
 
ここが首をかしげてしまうところで、この「信行両座」は信心正因を強調したかった覚如上人の創作ではないか、という指摘もあります。
 
また他の本に似たような記述があり、それを覚如上人が誤って伝え聞かれたからか、とも考えられます。
 
つまり、『御伝鈔』は必ずしもその全てが正確な記録とはいえない可能性があるわけです。
 
 
しかしながら、今回とりあげた「信心諍論」の部分は、おそらく事実であろうと考えられています。
 
なぜかというと、『御伝鈔』だけでなく『歎異抄』にも同じく記されてあるからです。
 
『歎異抄』では
 
「源空が信心も、如来よりたまはりたる信心なり、善信房の信心も、如来よりたまはらせたまひたる信心なり。されば、ただ一つなり。別の信心にておはしまさんひとは、源空がまゐらんずる浄土へは、よもまゐらせたまひ候はじ」
 
と、同じことが説かれています。
 
 
ちなみにこのような諍論はもう1つあり、それが「体失不体失往生」です。
 
この「体失不体失往生」の諍論は、親鸞聖人と善恵房証空上人との議論です。
 
ところがその内容を読むと、「証空上人の主張は念仏往生ではなく諸行往生である」と法然聖人が判じておられます。
 
ここで、法然聖人は念仏往生を明らかにされた方であるのに、その高弟であった人物が諸行往生のような主張をするのか・・・? という疑問符がつきます。
 
また、覚如上人が強調したかった信心正因を押し出すような記述になっており、歴史的事実というよりは、覚如上人の主観が強く反映されている可能性も否めません。
 
 
お聖教を読むときは、このような点まで考慮に入れて読むと、より正確に主旨を把握できるのでおすすめです。
 
 
 
御伝鈔 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/御伝鈔
 
 
信行両座 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/信行両座
 
 
体失不体失の往生の事 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/体失不体失の往生の事
 
 
しょうくう 善恵房証空 WikiDharma
http://www.wikidharma.org/index.php/しょうくう
 
 
原文
http://labo.wikidharma.org/index.php/御伝鈔#.E4.BF.A1.E5.BF.83.E8.AB.8D.E8.AB.96
 
 
他力 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/他力
 
 
信心 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/信心
 
 
凡夫 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/凡夫
 
 
仏 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/仏
 
 
源空聖人 法然聖人 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/源空
 
 
親鸞 親鸞聖人 善信 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/親鸞
 
 
あみだぶつ 阿弥陀仏 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/あみだぶつ
 
 
諍論 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/諍論
 
 
御伝鈔 信心諍論 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/御伝鈔#.E4.BF.A1.E5.BF.83.E8.AB.8D.E8.AB.96
 
 
本願寺 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/本願寺
 
 
かくにょ 覚如上人 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/かくにょ
 
 
智慧 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/智慧
 
 
自力 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/自力
 
 
浄土 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/浄土
 
 
極楽 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/極楽
 
 
おうじょう 往生 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/おうじょう
 
 
念仏 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/念仏
 
 
往生之業 念仏為本 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/往生之業_念仏為本
 
 
安心論題/念仏為本 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/安心論題/念仏為本
 
 
業 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/業
 
 
信心正因 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/信心正因
 
 
安心論題/信心正因 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/安心論題/信心正因
 
 
歎異抄 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/歎異抄
 
 
念仏往生 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/念仏往生
 
 
諸行往生 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/諸行往生
 
 
聖教 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/聖教
 
 
浄土真宗聖典目次 WikiArc
http://labo.wikidharma.org/index.php/WikiArc:浄土真宗聖典目次
 
 
 
【今回の読み仮名】
 
他力‐たりき
信心‐しんじん
善悪‐ぜんあく
凡夫‐ぼんぶ
仏‐ぶつ
源空‐げんくう
善信房‐ぜんしんぼう
阿弥陀仏‐あみだぶつ
法然聖人‐ほうねんしょうにん
親鸞聖人‐しんらんしょうにん
諍論‐じょうろん
本願寺‐ほんがんじ
覚如上人‐かくにょしょうにん
御伝鈔‐ごでんしょう
智慧‐ちえ
自力の信心‐じりきのしんじん
浄土‐じょうど
信行両座‐しんぎょうりょうざ
極楽往生‐ごくらくおうじょう
念仏‐ねんぶつ
念仏為本‐ねんぶついほん
業‐ごう
信心正因‐しんじんしょういん
歎異抄‐たんにしょう
体失不体失往生‐たいしつふたいしつおうじょう
善恵房証空上人‐ぜんねぼうしょうくうしょうにん
念仏往生‐ねんぶつおうじょう
諸行往生‐しょぎょうおうじょう
お聖教‐おしょうぎょう
 
 
 
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【聞法している方へ、ご案内】
 
・『ゼロからわかる浄土真宗』
浄土真宗が基礎からわかるホームページです。
http://amidabuddha18.com/
 
 
・note『死ぬのが怖い人へ』
私の聞法の記録です。
https://note.com/ryuun18/m/mdef818dfed16
 
 
・「南無阿弥陀仏」の文字が入ったスマホ用壁紙を作りました。
縦横比は以下の2種類。
・2対1 (iPhone11/11Pro/11Pro Max, iPhone XS/XS MAXなど)
・16対9 (iPhone5/6/7/8, Androidなど)
色はウェブサイトでよく使われる12種類。
こちらでダウンロードできます。
http://amidabuddha18.com/kabegami/
 
 
・安心論題の話
http://labo.wikidharma.org/index.php/安心論題の話
 
 
・光雲な毎日(立読みページ)
http://koun18book1.blogspot.com/
 
 
・note『信心獲得したい方へ(浄土真宗の救い)』
信心に悩んでいる方は、こちらのページがおすすめです。
https://note.com/koun18/n/ndbc737a85fa4
 
 
 
南無阿弥陀仏

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