【書籍】老化研究をはじめる前に読む本〜450本の必読論文のエッセンス

興味があったので、通読してみました。

老化やアンチエイジングの定義に始まり、老化のメカニズムについて分かっていること、治療薬として有望視されてる化学物質の情報など、簡潔にまとめられていて勉強になりました。専門家だけでなく、一般の方にとっても、読みやすい本ではないかと思います。

引用文献は、番外編を含めて450報。素晴らしいガイドブックだと思いました。今後、興味ある論点については、原著論文を参照し、理解を深めていきたいと思います。

第三章の「老化治療薬として有望視されている物質」については、すぐに試してみたくなりました。NAD+ブースターなんかは、けっこう試しやすい。メトホルミンについては、どこかで聞いたことがありました。mTOR阻害剤については、副作用がヤバそうなのでイヤかも。SIRT1 Activator の研究については、今後も注目していきたいと思います。

Gene: SIRT1 sirtuin 1 [ Homo sapiens (human) ]

NMN (ニコチンアミドモノヌクレオチド)や NR (ニコチンアミドリボシド)を摂取することで、肝代謝を経由し、最終的にはNAD+の濃度が高まり、NAD+依存性脱アセチル化酵素であるサーチュインの活性が向上、抗老化作用が発現する可能性がある。本当かどうか分かりませんが、詳細なメタ解析の結果を待っていると、後期高齢者の仲間入りをしてしまいそう。リスクを承知でちょっと試してみようと思います。NMNなどは最近、サプリ的な扱いで安価に販売されています。

NMNって吸収されるのか?とちょっと疑問でしたが、トランスポーターの関与を指摘する論文がありました。(マウスの結果ですが)

2019
Slc12a8 is a nicotinamide mononucleotide transporter
10.1038/s42255-018-0009-4

Slc12a8はマウスの小腸で高発現しており、NMN を輸送し、NRは輸送しないようです。また、NAD+だけでなく、ナトリウムイオンにも依存するらしい。ヒトの場合はどうなっているか、気になるところです。

Gene: SLC12A8 solute carrier family 12 member 8 [ Homo sapiens (human) ]

ニコチン酸ではダメなのかとか、ニコチンアミドではダメなのかとか、他にもいろいろ思いましたが、今後調査してみようと思います。(ビタミンB群の摂取だけではダメ?)

平均寿命が延びた現代においては、いかに長く生きるか以上に、老後生活の質 (QOL: Quality of Life) が重要だと考えています。個人的には、ピンピンコロリ(PPK)が理想だと思っています。自分はそうなりたいです。

人口構造的な観点から、高齢化社会が避けられない日本にとって、老後のQOL担保は本質的なイシューであると思います。医療費削減問題でいがみ合うより、社会保障制度が崩壊すると脅すより、遥かに重要度の高い論点です。お金をケチりすぎた結果、問題解決に失敗するのは本末転倒。

 話は脱線するのですが、通貨発行権を有する中央政府がどうやって財政破綻するのか、自分にはそのプロセスがよく分からんのです。僕らが偽札を刷ったら警察が飛んできます。逮捕の時にぶん殴られるかもしれません。一方で、政府や日銀が自国通貨を発行して、ブチ切れる警察関係者はいるのでしょうか? 政府が支出すれば、我々の資産はどう考えても増えます。コロナの一律給付金で、僕らの銀行口座の預金は増えました。政府が財政赤字を拡大すれば、国民の資産は増えるのです。信用創造(Money Creation)に関する認識、税金の社会的な機能を含めて、基礎的な教養が混乱しているように思います。(家計簿や企業財務のノリで国家財政を考えている?)
 国家が破綻するのは、国内の生産者が本当にぶっ潰れた時だと思います。社会保障費にしろ、大学の研究費にしろ、アニメーターの給与向上にしろ、必要な所には適切に財政支出すべきだと思います。先行投資は死ぬほどケチるのに、期間内に革新的な成果を出せとか、コスパ/タイパがどうだとか、大学ランキングがどうだとか、倒錯しているとしか思えません。大学教員の研究時間をもっと保証すべきだし、ポスドクは積極的に雇用すべきだし、研究費は潤沢に準備すべきです。企業研究者に対しても同様。公務員も増やさなければアカン。理系だけでなく文系も大事にしなければイカン。そして、老化研究に対しても、国をあげて先行投資すべきなのです。(理研のリストラの件は、自分にはもの凄い不条理に感じられました。「え、マジで日本政府は動かないの!?」という感じで)
 もちろん、財政支出をやりすぎると、インフレのリスクが生じます。でも、デフレを20年以上も継続している我々が言うことではないのではないかと。拒食症のガリガリ君がコニシキになるのを恐れる姿は滑稽でしょう。バブル崩壊以降の凋落を見てきたせいか、自分にはそう感じられます。

ということで、社会ではいろいろなことが起きるわけですが、過ぎ去った時間は戻っては来ない。体は着実に老化していきます。これだけは避けられない。正常細胞は本当に、生体メカニズムに対して忠実に働きます。「はたらく細胞!!」というマンガがありましたが、本当にハードワーカーなのです。社畜が真っ青になるレベルの勤勉さです。

頭脳明晰で、かつ、若々しい体のまま、長寿を全うできたら本当に素晴らしい。抗老化、アルツハイマー治療、がん治療などなど、イシュー度の高い研究は現在も精力的になされています。創薬研究者や医薬品開発者はみんな頑張っています。自分としてはぜひとも、「老化に関するパラダイムの転換」に遭遇し、その恩恵を享受したいと願っています。

本書は人体の老化現象を知る上で、入門書として有益だと思います。
ぜひ、読んでみて下さい。

NMN (ニコチンアミドモノヌクレオチド)
NR (ニコチンアミドリボシド)
※NMNの脱リン酸化体
ナイアシンアミド
(ニコチンアミド)
ナイアシン
(ニコチン酸)

2018
NAD+ Intermediates: The Biology and Therapeutic Potential of NMN and NR
10.1016/j.cmet.2017.11.002

2021
Nicotinamide mononucleotide (NMN) as an anti-aging health product - Promises and safety concerns
10.1016/j.jare.2021.08.003

メトホルミン

メトホルミンの添付文書

2020
Benefits of Metformin in Attenuating the Hallmarks of Aging
10.1016/j.cmet.2020.04.001



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