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ラブリーママ

61歳、ん?62歳と思ってたわ、ひとつ若返ったたいね(笑) 自分の歳も忘れるくらい働く母(61) は、故郷熊本で無事に62回目の生誕の日を迎えた。母の誕生日に合わせてこの夏2度目の帰省。私、そして母の故郷はまるで日本の桃源郷。ケータイの電波も弱く、宇宙人との交信を続けなければならない、近くのコンビニまで車で20分、家路に着くまで鹿に遭遇するのは日常茶飯事のそんな場所。田舎暮らしに憧れる若者には満足度100パーセントのそんな田舎。高校生まではだいっきらいではやくはやく都会にと、大学進学を機に福岡に出た。住み慣れた故郷の景色とはやっぱり違って、夜になると何も見えない空に不快感を覚えたあの日々は遠く過ぎた。

4年目の秋

1年の休学期間(正確にはオーストラリアへアシスタント教師としてのボランティア)を経て、4年目の福岡。妹との暮らしも口を開けば喧嘩、なオチだが、若さゆえのウェイウェイな時期もだいぶ過ぎ、小麦の肌が輝く海も、朝まで飲み明かすバーベキューも、肩の触れ合う距離と時間にうっとりする花火大会も今年は関係なかった。(おそらく来年もご無沙汰)そんな時、父と母が別居した。気づいた頃には母は母の実家に一人暮らし。若い年齢でもないのにお互い自分の時間に費やすように距離を置くことにしたという。でももちろん、その原因は私にあった。夫婦喧嘩でもなんでもない、娘のせいで母は1人に。電話口でも、道端でも知り合いに会えば必ず30分はそこを離れない、お喋りな社交的な韓流ドラマ好きな母が、1人暮らし。会うたびに、「1人は楽よ、気を遣わなくて済むからね。」そんなことをジョークを飛ばすかのように笑う。ちがうよね、辛いんだよね。心の中で呟きながら一緒に笑った。

実は手術したの。

母は、離れているがゆえなのか、いつからかひとりで全て抱えこんで済ますようになった。以前は、今晩のご飯も遠い熊本からラインしてきてたのに。
「この前、目の手術をしてきた。」
「薬を飲んでる。」
「朝早くて6時出勤、疲れるね。」
帰省した時、ぽろっとこぼすそんな言葉。疲れた時にでるため息が多くなってきた母はいつも私の母。私のせいで、私たちのせいで、ね。

心配ばかりかけてごめんね。
親不孝の娘でこめんね。
きっと、自立して初任給で母に
たくさんの思い出をあげる。
卒業までたくさんごめん。

「あなたのせいじゃないの。」
「気にしなさんな。お母さんは、
大丈夫だよ。」
「あなたも元気に、健康で、
無理しすぎちゃ、駄目よ。」

句読点が多めの母のラインと
母の可愛いらしいスタンプに
ケータイの画面が歪んで見える。

#等身大 #私#母#田舎

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