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一等星のせかい

ひとは、いつか星になるという。

ちいさいころ、たしか母から「おばあちゃんはね、星になったんだよ。だから、いつも空から、見守っていてくれるよ」と、何度も何度も囁かれたおかげで、つい最近までそれを信じていた。

どの星がおばあちゃんとか、そんなことはわからない。分からないけれど、夜の空を見上げる度に、心の中でおばあちゃんと会話をしていた。

ただ、「クリスマスにサンタさんが来るよ」というのと同じくらい、信じていたけれど、いつのまにか信じなくなった。
これは、年を重ねたせいなのか。それとも、サンタさんは変身したおとうさ……ということを、感じ取ってしまったのか。

「いつかひとは星になる」は、正直今のところホントかウソか見当がつかない。だって、見てないから。だれかが長いおやすみを迎えたときに、星になったのを見たことがないから。

だから、わたしがその「長いおやすみ」を体験したとき、まっくろな空から明かりの灯る街を見下ろしたときにはじめて、「星になる」と分かるんだろう。それまでのお楽しみだ。

でも、『一等星』『二等星』と順番をつけられるくらいなら、いっそ、雲になりたい。そう思う。

空にまで行って、誰かと比べられるのは苦手だ。

ひとは、いつか星になるという。

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