見出し画像

違う世界を行き来して

2023年1月の後半は、振り返ってみればなんでこのタイミングにこんなに集中したのかと思わずにいられないぐらい、私にとって楽しみな予定が詰まりまくった時期でした。
その中でも期待感が心の中で特に大きな位置を占めていたのが,

1月21日(土) 横浜アリーナ
新日本プロレス WRESTLE KINGDOM 17 in 横浜アリーナ

1月24日(火) 日本武道館
ポルノグラフィティ 18thライヴサーキット ”暁” 最終日

のふたつです。
(1月28日に行ってきたエル・デスペラード選手のサイン会も素晴らしい時間だったんですけどそれはまた別の機会に)



まず行ったのが1月21日、横浜アリーナ。
横アリへ行くのが2019年3月以来だった上に、コロナ禍の影響で神奈川県に行くこと自体も本当に久しぶりでした。
入り口を前にして「こんな位置にこんなでっかい映像って前から流してたっけ…?」と驚いたんですが、最近改修工事をしたんでしたっけ?

でっかい画面で動画が流れている!
この記事のヘッダにもした大観衆自販機

この日は新日本プロレスの大会ではあったものの、「新日本プロレス」と「プロレスリング・ノア」という二つの団体による対抗戦が行われる事になっており、声出し応援も可能である旨が事前に公式から発表されていました。

新日本プロレスをリアルタイムで追い始めたのが2020年6月からなので、私にとってのプロレス観戦は拍手のみの応援から始まったんです。
過去の試合映像を観る度に、選手の名前を呼んで応援したり、レフェリーのカウントに合わせて「ワン!ツー!スリー!」と叫んでは興奮に身を任せて絶叫したりといった観戦を、心底羨ましく思ったものでした。


2022年9月、新日本プロレスの大会で久々となる「声出し応援」が解禁されました。
対象となる後楽園ホール2連戦は、席間隔ありのため観客数が通常の半分だった事もあり、対戦カード発表直後にソールドアウト。
なので配信映像で観たんですが、選手それぞれが見せる感慨深い表情も含めて「プロレスってお客様の声援があって完成するものなんだ!」と実感せずにはいられませんでした。
ずっと奪われていたものがようやく戻ってきた。喜びに満ちた熱い空間が、そこにあったんです。

どうしても声出し応援が出来る大会を現地で観たくなり、10月に声出し応援対象大会として開催された後楽園ホールに行ってきました。
ものすごく楽しかったです。
序盤こそ自分が大きな声の出し方を忘れてしまっているなぁという自覚もあったものの、一番大好きな高橋ヒロム選手が登場した途端に「ヒロムぅぅぅぅ!!!!!」と腹の底から声が出た事に自分でも驚きました。

選手の名前を呼ぶだけでなく、興奮のままに漏れる声を押し殺す必要もない。ただ目の前の光景を受け止めて、感じるままに楽しむ。
そんな現地観戦ならではのスペシャルな時間だけが持つ高揚感を、宝物のように感じた事を今でも覚えています。

だから横浜アリーナ大会が声出し応援可能と発表された時も、本当に嬉しかったんです。
対抗戦ということに加えて、新日本プロレスの大好きなユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の日本人選手5人が、プロレスリング・ノアのユニット「金剛」の5人とシングル五番勝負と題して、それぞれにシングルマッチを行うことも決まっていました。
好きな選手のプロレスをじっくり堪能出来るシングルマッチがたくさん見れる上に、思いっきり声を出して応援できる。ワクワクしないわけがないってもんです。

そしてメインイベントは、新日本プロレスの内藤哲也選手と、プロレスリング・ノアの拳王選手のシングルマッチ。内藤選手が勝てば初めての「大合唱」が出来るかも!という期待を胸に現地へ向かいました。

マイクを持ってその日の大会を締めるのは、プロレスにおけるメインイベントの勝者の特権です。
内藤選手がメインイベントで勝利すると、ご本人も「大合唱」と呼ぶ、内藤選手と場内のお客様が一体になって叫ぶ時間があります。ですが、コロナ禍で観客側の声出しが制限されて以降はずっと「心の大合唱」として、内藤選手だけがマイクで叫ぶ事が続いていたんです。
またみんなで叫べるその日まではと。

だから現地での「大合唱」は、声を出せない時期にプロレスを好きになった私にとって、叶えたい夢のひとつでもありました。



そしてこの日は見事に内藤選手が勝利!!!
下の動画は海外向けの発信映像なので英語実況席の声も入ってますが、あの日の内藤選手の「大合唱」の瞬間です。
(クリックするとその場面から再生されます)

……正直、時間が経った今こうして映像で見るだけでも、そして「デ!ハ!ポン!」のお客様の声を耳にするだけでも。
あの日のアリーナ席からの光景や、念願叶った喜びやら嬉しさやらが蘇ってきて涙が出そうになります。

メインイベントだけでなく、全ての試合が面白かった。心底悔しかったことからただただ痛快だったことまで、喜怒哀楽フルスロットルな勢いで心揺さぶられる、華やかな激闘の数々。
そして内藤選手と一緒に「大合唱」が出来たこと。
そんな掛け値なしの幸せを胸に、帰路につきました。


❏ ❏ ❏


横浜アリーナ大会の余韻に満ち満ちた翌日の夕方。
ツイッターのタイムラインを見ていた時、ポルノグラフィティさんの公式アカウントのツイートが目にとまりました。

改まって何だろうと思って読んでみると、
「これまで通り飛沫感染防止のため公演中の歌唱やご声援・ご発声におきましては、禁止とさせていただきます」
という内容の注意喚起でした。

今回のツアー公式グッズに、ボイスストラップ(ポルノさんお二人の名前などの叫び声をあらかじめ録音しておくことで、現地でボタンを押せばその場で声を出さずともステージ上に声援を届けられるグッズ)があること。
そして9月から始まったツアーだから、これまでずっと声を出さない事を想定して積み重ねられてきたライブだろうことも想像がつきます。
だからその判断に異を唱えるつもりはないです。

ただ。
リプ欄や引用ツイートに溢れる、改めての注意喚起に対する感謝と称賛の声の多さを目の当たりにして、なんだか別世界みたいだな、と思いました。
(空気感染が定説となっているのに、声出し不可なら安心して現地に行けるという考え方にも首を傾げたくなります)

でも少し考えてみて「そもそも観客としての楽しみ方が全然違うのだから、実際に別世界だと考える方が正しいんだろう」と思うことにしました。
と同時に自分の中で腑に落ちたのが、

・ずっと同じ場所にいると、そこからの景色が自分の世界そのものになる。
・その場所のルールがそのまま、自分にとっての価値観や常識になっていく。

のふたつです。

勿論、ひとつの世界を追求することで初めて得られる類の鋭さもあるでしょう。でもそれを尊く思うのとは全然別の話。
こうやって言葉にすれば至極当然の事ですが、理屈で納得するのではなく経験を通してそう理解できたのは、決して小さくはない出来事でした。
少なくともこうしてnoteに書き留めておきたいと思えるぐらいには。

この記事のタイトル、最初は「いろんな本を読もうという結論に至った経緯」にしてました。
自分一人だけの人生経験だとどうしたって限界がある。そんな中でも書かれた時代を問わず、そしてフィクション・ノンフィクションをも問わずに、その限界を補ったり超えたり出来るのが書籍の良いところ。
本好きなりに「得たものをどう活かせるかな?」と考えた結果です。

出来ることなら広い視野を持ちたいし、先人にも学びたいし自分以外の考えを尊重出来るようにもなりたい。
近道は無くとも、せめてこの得心を胸に据えていたいです。幸せな思い出の隣あたりに。


❏ ❏ ❏


その後。
1月24日の火曜日、仕事終わりに向かった日本武道館のポルノグラフィティさんのライヴも、素晴らしい時間でした。
大寒波な上に都内も雪予報が出てましたが、積もらなくて良かったです。

セットリスト貰えるのありがた嬉しい

「注釈付き指定席」である事は当選時に把握してましたが、いざ行ってみるとステージを本当の真横から見る席で、ある意味貴重な体験だったかもしれません。
舞台上の演出が全く見えなかった代わりみたいに、ちょいちょいお二人がステージ端までいらっしゃった時の、武道館規模の会場では本来あり得ないぐらいの近距離がただただ幸せでした。

今回のアルバムで一番胸打たれた『暁』に、好きだなと思った『ナンバー』『証言』を聴けたのが嬉しかったのは勿論のこと。
音源で聴いた時には正直あんまりピンとこなかったはずの『ジルダ』が、シンプルな音色と奥行きに満ちた歌声で世界観を築き上げていて、聴いてて圧倒されたのが嬉しい驚きでした。長いツアーを経ての完成形だったんだろうな。

同じく音源で聴いても”続”ツアーで聴いてもハマらなかったはずの『テーマソング』が、今回は素直に良い歌だと思えたのも面白い実感でした。
今では「コロナ禍の真っ只中にリリースされたシングル曲」として、担わされたものの大きさにも思いを馳せてしまいます。内藤選手の「大合唱」みたいに、この曲のサビの「フレーフレー」を現地で叫べる時が来たら泣いてしまうかも。

アルバム暁の収録曲以外だと、やっぱり『うたかた』が嬉しかった。自分的ポルノさんライヴ初参戦だった2005年のSWITCH高松以来だから、約17年半ぶりに聴けた一曲でした。前回の”続”ツアーで披露された『ドリーマー』に続く大感謝です。
他には『瞬く星の下で』って最近やったばっかりじゃん!?と一瞬思ったものの、その「最近」が東京ドーム2日目なので既に3年半が経っており、全然最近じゃなかった……と愕然としたのもある意味いい思い出です。
むしろプロレス観るようになった今の自分だからこそ、2番サビの歌詞がこれまでとは全然違う響き方をするようになって胸打たれた事も大きいから、やっぱりこのタイミングで聴けてよかったな。

そして東京ドームと言えば『VS』!!
あの日スタンド席から目にした、最高に幸せだった光景へと一瞬で戻れてしまうあたり、思い出を宿した歌の持つ強さを思い知らされました。
今回の座席が客席側もよく見える位置だったのもあり、この歌の時にはちょいちょい明るくなった場内を眺めるという事もしてみました。ポルノさんはこういう景色を見てるんだな、としみじみ。

あとは『Zombies are standing out』でステージ上に炎が出る演出があったんですが、スタンド1階6列目の位置でもかなりの勢いの熱が届いたというのに、花道の炎に近い位置にカメラマンなスタッフさんがいらっしゃるのが見えて心配になりつつプロフェッショナルっぷりに感服したり。
音源でもライヴの生歌でも、これまで何度も聴いてきたはずの『愛が呼ぶほうへ』が今回やたら胸に染みて、聴けてよかった……と感極まりつつ余韻に浸っていたのを、どこかで鳴らされたメンバーの名前を呼ぶボイスストラップの音声に余韻ぶった切られてしょんぼりしたり(おそらく複数回参戦されていて、長い暗転のタイミングを把握されていたお客様なのでしょう)。
それらも含めて一度きりの経験だ、と考えることにします。


思い出すままに書き綴ってたら長くなってしまった…。
しかし書いておくことで無かったことにならずに、書き残した文章が私の代わりに高揚や歓喜をも新鮮なままで覚えておいてくれるものです。
今回の記事には自分なりの決意表明もありますし。

いろんな感情や気付きを通して、大切な思い出がまた増えたと言いたいのです。やっぱり私は現地で自分の目で見て、自分なりに思いのままに楽しむ「いま」を最優先したい。
違う世界を行き来して、そういられる自分でありたいものです。




この記事が参加している募集

最近の学び