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北京から見た台湾の政治風景

早稲田大学で開催された台湾総統選挙に関する報告会の、後編です。
(前編はこちら☟)


中国の着目点は…

例えば、缶詰の缶を上から見れば丸いけど横から見れば四角いシルエットになるように、何事も視点を変えると見え方も変わります。

今回の台湾の選挙、総統選では頼清徳(らい・せいとく)氏が当選して与党・民進党が初めて3期続けて政権を維持することになりました。ここに着目すれば、中国とは距離を置く民進党の路線が依然としてマジョリティと映るでしょう。

しかし、報告会で小笠原さんと松田さんが異口同音に指摘したのが、中国指導部は、▼頼清徳氏の得票率が前回の蔡英文氏より低かった、▼立法院で民進党が過半数割れした、という点に重きを置いていることです。その2点にクローズアップすれば、「民進党の対中強硬路線は危険」とする国民党と民衆党の主張が支持を集めた、と映ります。

コップに水が半分入っているのを見て、水が「まだ半分ある」とするか「もう半分しかない」とするか、に似ているでしょうか。

やや微妙な例えが続いていますね。

中国国務院の台湾事務弁公室は、開票当日の深夜に発表した談話で、こう主張しました。

两项选举结果显示,民进党并不能代表岛内主流民意

http://www.gwytb.gov.cn/xwdt/xwfb/wyly/202401/t20240113_12593548.htm

「二つの選挙結果は、民進党が(台湾)島内の主流の民意を代表できないことを示した」という意味です。

そして、「台湾問題は中国の内政問題」という立場を改めて強調し、頼清徳氏の当選に祝意を示した国々には「一つの中国原則に反する」として厳重に抗議しました。そのターゲットには日本(上川外相)も含まれました。

中国の抗議に対して、林官房長官が「台湾は基本的価値を共有する極めて重要なパートナーで、大切な友人だ。我が国はこれまでも(総統当選者に)祝意を表明している」と反論。
民進党政権の継続に、習近平指導部がカリカリしているのは確かです。

そして誰もが聞きたい質問 「台湾有事は?」

前回もお伝えしたように、報告会は立ち見が出るほどの盛況でした。高い関心の源泉に、台湾有事への懸念があるのは否定しようがありません。
実際、中国共産党が忌み嫌う民進党が総統ポストを守ったことで、有事の可能性は高くなるのか、低くなるのか、当面は変わらないのか。

この、皆が尋ねたい問いには、主に松田さんが見解を述べられました。

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