理想と現実の狭間で

隣に住む男の人が亡くなった。

孤独死らしい。

初めに気付いたのは下の階に住んでいる大家さんだ。

どうも人というのは水分70%で出来ているらしいので、死ぬとその水分が腐って行くらしい。そしてその腐った匂いがアンモニアなどの臭素となり虫を呼び、腐敗を誘うらしい。

だもんで水滴というのは人には潜れそうも無いフローリングの小さな隙間から下の階へと匂いをもたらすそうだ。

それで、死んでから1ヶ月ほど経った頃、ようやく彼の死骸に特別業者の人が手配され、搬送されていく事となった。

隣に住む私としては、いつも挨拶を交わす程度の、というか、よく女の子を取っ替え引っ替え家に招いては、夜中に女の子の笑い声がよく聞こえる、背の高い青年、といったイメージでしか無い。

だがとはいっても一応は隣人であるし、死んでしまい気の毒に思う。

私だって誰だって辛いことはある。それにしたって頼る相手がいないというのは何にも増して辛い。

そういえば今回の件を契機にネットで孤独死について調べていたら、夏になると孤独死の発見数がひどく増えると知った。

どうも腐敗した匂いというのが湿気の多い夏場の方が蔓延しやすく、周囲の人から異臭として感知される事が多いそうだ。

何にしろこの話は全部現実と理想の狭間の出来事で、隣人は相変わらず平日出社して仕事をしては夜中遅くに帰ってくるし、静かに生活をしてくれている。(むしろ私の方が深夜にピアノを弾いたりするので迷惑をかけている。といってもヘッドフォン着用の上で防音はきっちりと気を遣っている)

女の子の笑い声が聞こえるの確かであるが、むしろそれにより孤独死したくなるのは私の方である。

そんなわけで、天気が悪いとどうも筆が進まない。

思うがままにあれこれと連ねてみたが、特段あるとすれば辛さから離れられた。

おわり

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