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英国式ブラスバンドの座席配置

 英国式ブラスバンドの紹介文によく書かれている「コの字型」や「馬蹄形」と言われる座席配置 seating arrangementについて今一度考えて調べてみよう。

 いろいろなところで少し文体を変えて使われるフレーズとして、「コの字型ではなく、馬蹄形にするほうがいい音になるし、そのように配置するのが一般的」のようなニュアンスで書かれているのをしばしば見る。しかし、日本のブラスバンドで馬蹄形はまず見ない。これはコンサートで奏者の顔が見えないのもどうかと思われるためだろうか。
 もっとも多いには「コの字」と「ハの字」ではないだろうか。世界のブラスバンドで見かける座席配置を図で見比べてみる。


コの字型

 雑に作ったので、文字つぶれなどは勘弁。
よく日本で見かける「コの字型」の配置である。別にこれといってとやかく言うつもりはないけれども、tutti solo cornetや3rd cornet、バリトンやバストロとか指揮見にくい。ひな壇があったり、狭かったり、マスバンドなどによりこうなることがイギリスでもある。が、あまり見ないかな?録音のマイク位置に悩む配置でもある。イギリスのエンジニアもそれで悩む。


ハの字型

 コンサートがメイン活動となる日本でよく使われるのも頷けるフォーメーションである。顔が客席から見やすい。ただ、コルネットやトロンボーンの音量バランスには細心の注意がいる。英国のブラスインコンサートやノルウェーのシディスブラスなどのエンターテイメントコンテストでもたびたび見かけたりする。舞台上にひな壇とかあるとこうなりがち。


U字型

 これは日本でもたまに、あとイギリスやスイス、フランス,
豪州、ニュージーでよく見かける。勝手にU字型と名付けるが、先に述べた指揮見にくそうな人たちへの配慮がある。心優しき配置。コの字やめて最低でもこっちにしましょう。指揮見えないって。


馬蹄形,,,?

 よく目にするもの順に図を作って貼って書いているが、ようやく正しい?配置である?一般的な?馬蹄形?
ブリティッシュオープンとナショナルでしかまず見ない。
指揮者を取り囲んで吹いていた時代の名残なのかしら?
まあ実際円形に近づけると顔が見やすくなってアンサンブルしやすくはある。


Willebroek式

 かなり最近出てきてわずかに流行りそうな兆しだけ見せたWillebroek式の異色そうな並び。ベルギーのコンテストを見ていると結構な数のバンドがこの特殊な配置で演奏している。日本でも1,2回見たような見てないような。
ちなみにベルギーのバンドになぜこの配置なのか聞くと面白いことに「Brass Band Willebroekの真似」と返ってきたので、張本人のBrass Band Willebroekに尋ねると、「コンテスト会場のホールがかなり狭く、標準的な位置にフリューゲルを置くと、音量バランスが難しくなるため、この配置にしており、これに慣れているので、どこ行ってもこの配置で演奏する」(意訳)とのことだった。面白い配置なので、日本の皆さんも小さいホールのときはこれにしてほちい。あと、全体的にステージの奥行を節約できるので、狭いホールや、ややマスバンド寄りなバンドにはおすすめである。サウンドも変わってかなり面白い。


Grimethorpe式

 上のベルギーあるある配置に似ているが、映画「ブラス!」でおなじみの配置である。イギリスの老舗バンドが採用しているイメージがあり、中でもグライムソープは多用している。フリューゲルのベルを横向きにすることでホーンセクションの調和を増し、ユーフォバリトンをベースの前に持っていくことで、中低音~低音族のまとまりを強化することができる。重めサウンドの曲のときにいいカモ?!


半円型

 ノルウェー、デンマーク、スウェーデンなどでかなりよく見るのがこの半円型だ。たしかに、吹奏楽(金管以外)やオーケストラ、ファンファーレオルケストなど大体半円なのに、なぜブラスバンドだけ半円じゃないのか。そもそも、指揮者取り囲み型時代(19世紀末~20世紀初頭)の次は半円型だったはずなのに、いつからコの字型寄りな進化を遂げたのだろう。半円型はトップの動きが見えるので、予測しやすくアンサンブルに向いている特徴がある。

 
「英国式」ブラスバンドではあるものの、なんでもかんでも本場の真似事にするのはよろしくないので、日本独自要素があるのは良いが、奏者やアンサンブルのこと、サウンドのことを考えずに「コの字型」はやめてほしい。そこは真似して良いところを取り入れていくべき。端っこに座ると指揮見にくいし、周り見にくくて合わせづらい。

 あと、反響版ありで演奏するときに打楽器をひな壇載せたりすると、反響音でかなりダイレクトにきてうるさいとき多い気がする。音楽監督なり、指揮者なり指導者さんはリハで客席にて試聴するのは必須。打楽器でバンドのサウンドかき消えること少なくないので本当にもったいない。ヨーロッパのバンドは打楽器と管楽器のバランスめちゃくちゃ注意払ってる。

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