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令和元年(平成31年)予備試験論文式試験民法答案

第1、設問1
1、DのCに対する所有権(民法(以下略)206条)に基づく返還請求権としての本件建物収去本件土地明渡請求は認められるか。
(1)たしかにCは本件建物を所有して本件土地を占有している。
(2)では、Dに本件土地の所有権は認められるか。
ア、たしかにCはAの生前同人から本件土地の贈与(549条)をなされており、これをもってCが本件土地の所有権を取得したといえる。
 しかし、DはAを相続した(882条、896条)Bから本件土地につき抵当権設定を受け(369条)、その競売を経て本件土地を買い受けている。Dが抵当権設定を受けた当時、すでに本件土地の所有権はCにあり、Bは無権利者であるからDは抵当権を取得できないようにも思えるが、DはAC間の本件土地贈与につき善意であった上、抵当権設定当時B名義の虚偽の本件土地の所有権の登記があった。そしてそのB名義の登記の作出については、CがAからの贈与後長期間登記手続きをしなかったために起きたものである。そうすると本件では虚偽の外観およびそれに対する第三者の信頼、権利者帰責性があり、94条2項が類推適用される結果、Dは保護される。
 そのためDはもこれをもって本件土地の抵当権及びそれに基づく所有権を取得したといえる。
イ、民法177条の趣旨は不動産物権変動について公示させることで不動産取引の安全を図ることにあるため、同条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、不動産物権変動の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう。
 上述の経緯からして、DはCにとって当事者でもその包括承継人の関係にもなく、Dとしては本件土地の抵当権ひいては所有権という正当な利益を有するから、DはCにとって177条の「第三者」にあたり、Cは登記なくして本件土地の所有権をDに対抗できない。
 なお、DがCを加害する目的を有していた等の、Dが背信的悪意者にあたるというような事情も存しない。そのためやはり、Cは登記なくしてDに本件土地所有を対抗できない。
ウ、よって、本件土地の登記を有しないCはその所有をDに対抗できず、Dは抵当権設定登記、ひいては所有権移転登記を経ているから、Dが本件土地の所有権を確定的に取得したといえる。
(3)もっとも、Cは本件土地につき法定地上権の成立を主張して(388条)、Dの請求を拒めないか。
ア、上述の通りAは生前本件土地をCに贈与しており、Aが死亡する前までにCは本件土地上に本件建物を建築して居住しはじめた。
 そのため「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合」にあたる。
イ、その後Dの抵当権が本件土地に設定され、その実行によって本件土地の所有者は上述の通りDに、本件建物の所有者はCのままということになった。
 すなわち「その土地…につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったとき」にあたる。
ウ、したがって、本件「建物について、地上権が設定されたものとみな」される。
 なお、このように考えても、Dは念のため対抗力ある借地権の負担があるものとして本件土地の担保価値を評価していたから、結論の妥当性を欠くものではない。
2、以上より、本件では法定地上権が成立する結果、DのCに対する上述の請求は認められない。
第2、設問2
1、CのDに対する、所有権に基づく妨害排除請求権としての本件土地の抵当権設定登記抹消登記手続の請求は認められるか。
(1)たしかにCはAの生前同人から本件土地を贈与されており、本件土地の所有権を有する。
 そして、本件土地にはD名義の抵当権設定登記が存在する。
 よって上述のCの請求は認められるようにも思える。
(2)しかし、上述の通り、DはCにとって177条の「第三者」に当たり、本件土地の所有権をCはDに対抗できない。
2、したがって、上述のCのDに対する請求は認められない。

以上

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