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原因究明が待たれる梨泰院大規模雑踏事故

ソウルの繁華街、梨泰院では悲惨な事故が発生しました。10月29日に起きた大規模雑踏事故。ニュース等で映像を観るたびに胸が締め付けられるような思いです。ドラマでも注目された梨泰院、しかも人気ユーチューバーをひと目見ようとして殺到したとか。ハロウィンという主催者のいないイベントに、10万人以上が自発的に集まった結果として事故は起きてしまいました。

この事故を聞いて真っ先に思い出したのは、2001年(平成13年)7月21日に兵庫県明石市で発生した『明石花火大会歩道橋事故』。11名が全身圧迫による急性呼吸窮迫症候群(圧死)等により死亡し,183名が傷害を負うことになりました。どこにでもあるような歩道橋で起きた事故だけに、とても他所事とは思えませんでした。明石市での事故以後、国内では屋外でのイベント等が、かなり厳しい制約を受けることになりました。

屋外であるがゆえに、どうしても「これくらい大丈夫だろう」と油断しがちになるのですが、歩道橋や梨泰院の通りなど、移動時、急に狭くなる空間はどこにでもあります。たとえそれまで整然と歩いていたとしても、急に雨でも降り出せば、人々は一斉に動き出すことだってあり得ます。梨泰院がそうであったように、ある程度の人数が閉ざされた空間に入ってしまうと、自分の意思ではどうすることもできない状態に陥ってしまいます。目的地に少しでも先に、早く行きたいといった個人の心理が、群集と化したときに暴走する怖さをあらためて思い知らされました。

事故発生前後の動画はたくさん出回っており、少しずつ具体的な状況や原因が明らかになってきているようです。事故のあった通りに面した建物は、違法建築物であり、歩行者のスペースを狭くしていたことなども報じられています。まずは原因究明が待たれるところです。

イベントがイベントだけに若い人たちの多くの命が失われることになりました。残念でなりません。ハロウィンの夜には、渋谷のみならず地元の熊本でも、仮装した若者たちが集っていたようです。これからクリスマス等の秋冬のイベントが続きます。ここ数年はコロナの影響もあり、発散したくなる気持ちもわからなくはないのですが、身の安全を第一に、責任ある行動を心がけてほしいものです。

熊本日日新聞朝刊(2022年11月1日掲載)

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