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鉄のカーテンを突破する力に

『鉄のカーテン』という言葉を久しぶりに聞いたような気がします。

あらためて調べてみると、1946年にイギリスのウィンストン・チャーチル首相が米国の大学で行った演説で始めて使われ、以来米ソ冷戦の緊張状態を表す言葉となりました。

『鉄のカーテン』ではないものの、1989年、東西のドイツを隔てていた『ベルリンの壁』に次々と若者たちがよじ登り、ハンマーでその壁を叩き壊す様子は、今も鮮明に脳裏に焼き付いています。その年、日本では元号が昭和から平成に変わり、東西冷戦の終焉と新しい時代の幕開けに、世界中が希望に満ち溢れていたように感じたものでした。個人的には、ちょうどその年に大学を卒業し、社会人として踏み出した年でもあり、余計にそう感じたのかもしれません。

久しぶりに聞いたその言葉は、ウクライナ侵攻に関して、ロシア政府によるインターネット上を含む情報統制を意味しています。具体的には、3月11日にインスタグラムの情報を遮断することを発表し、先週にはツイッターとフェイスブックに対するアクセス制限も開始しています。カーテンを閉めるだけでなく、当局が『虚偽内容』とみなす情報を流布した者を禁錮刑に処す法律を成立させるなど、ますます情報統制を強めています。

こうした動きはロシアに限らず、中国やイラン、トルコ、西側諸国でもデジタル世界へ国境を設ける動きが見られるようになりました。一方で技術の進歩はそういった政府の規制をかいくぐり、迂回ソフトを使ったアクセスも容易になり、ウクライナ侵攻後のロシアでは利用者数が急増しているサイトもあるようです。安易にプロパガンダに染まることなく、情報の自由な流通を抑制しようとする前例のない試みに、抗う人たちが増えているということなのでしょう。

現状では国連等の国際機関の無力さを感じざるを得ず、SNSには「功罪両面あり」と思っている私も、今回ばかりは『鉄のカーテン』を突破してくれることに期待しています。「民主主義はオワコン」とも表現される時代に、指導者の暴走を止めるのはやはり民衆の力なのかもしれません。若者がベルリンの壁を叩き壊したように、国境を越えてつながった人たちによって、旧態依然とした価値観を打破してくれることを期待しています。



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