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評価を左右する!?AI人事の時代へ

「あなたは他人を評価したことがありますか?」

仕事上だけでなく、あらゆる場面で人と接するとき、評価とまではいかなくても、ある程度は「この人はどんな人物なんだろう?」と予測し、自分なりに判断した上で接するのではありませんか?

どんなに人と人との関係性が希薄になってきたとはいえ、あなたも思い当たることがあるでしょう。そして、しばらく接していると、最初の評価とは違った一面が見えたり、時には「見方が変わった~」なんて経験も珍しくないのかもしれませんね。

私は熊本市長を経験して、『人事』がもっとも難しいことを実感しました。『人事』とは、職員の新規採用や昇給昇格、人事異動などを指します。まさに一人ひとりを評価することになりますが、原則として公平公正である必要がありますし、適材適所であり、さらに職員のモチベーションや能力を最大限に引き出すものでなければなりません。

職員の登竜門となる採用試験は、任命権者とは独立した人事委員会のもとですでに実施されていました。職員となった後も、市役所内での評価の客観性をより高めることを目的に、課長級や主査(係長)級になるための試験制度を導入しました。最初の頃は「試験で評価できるものかー」と、職員や議会からのかなり強い反発もありましたが、もちろんその試験は、単に記述式だけでなく、日頃の勤務評価や面接官による面接も加味した上で判断するもの。回数を重ねるに連れ反発も少なくなっていきました。

試験制度を導入する前は、人事課で把握する情報や評価をもとに任命権者が最終決定をしていました。私自身、 “人事”のことを、あえて“ひとごと”と言っていたほど、恣意(しい)性を排除することは重要な課題と考えていました。昇格だけでなく人事異動全般も含めると、毎年何千人という職員の能力や適材適所を見なければいけないわけですから、試験制度のような客観性を担保する仕組みが必要であることは明白です。

公務員は身分が手厚く守られており、基本的に終身雇用が維持されています。それを『甘え』と指摘されることもありますが、そこには理由もあります。それは不当な圧力に屈することなく真の公平公正な職務の執行するためであり、時代の変化に柔軟に対応するための思い切った制度改正などに取り組むためでもあります。ただ、実際には、仕事をしてもしなくても、大問題を起こさないかぎりクビになることはなく、給料も大きな違いはありません。もっと職員のチャレンジ精神を発揮させ、能力を最大限に引き出すためのさらなる工夫は必要なのでしょう。

最近では、面接にAIを導入する企業がかなり増え、一部自治体での導入も始まったようです。やり方は色々とあるようですが、アバター面接官から次々に繰り出される1時間程度の質問に答えていき、その映像や音声が記録され、答えた内容だけでなく表情や声のトーンなども分析され、数多くの評価基準に従って評価がくだされます。評価のばらつきが改善され、採用基準の統一や先入観のない公平公正な評価につながる。そして、その分析結果は人材育成方針にも活用できると聞けば、なんだかいいことづくめのようでもあります。

冒頭に申し上げたように、人の評価は評価する人によって変わるものですし、場合によっては間違うこともあります。それらの不確実性を排除するためのAI導入は必要なのかもしれません。ただ、それだけに頼り過ぎると肝心な部分を見落とす可能性だってあります。いずれにせよ、組織にとってどんな人材が必要で、どのように育成していくのか、その点には積極的に人が関わっていくことで、AIを賢く使っていきたいものです。

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