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勝手に10選〜タイトルに"風"が入るイカした曲(前編)〜

(前記)

風、というものは実に多彩な解釈と表現に彩られる。

向かい風、追い風、風に身を任せ、風に立ち向かい、風の様に、などなど多種多様な見解だったり、ポジティブとネガティヴの対極となれる変幻自在なメタファーを持つ事が出来る素敵なワードである。

今回はそんな"風"がタイトルに入った曲を前編、後編に分けて勝手に10選する。


・風をあつめて

1971年にはっぴいえんどによって発表されたアルバム"風街ろまん"に収録された曲だ。

はっぴいえんど、といえば松本隆さん、大瀧詠一さん、鈴木茂さん、細野晴臣さん、という今の日本における音楽シーンにおいて、後々に各々が残されたレガシーを鑑みると、まさに奇跡の様なメンバー構成であり、はっぴいえんどが存在しなければ、今の日本における音楽シーンは、負の意味で違うものとなった事は間違いない。

そんなはっぴいえんどの代表曲の一つだ。
シンプルでタイト、アコースティックなミドルテンポの素敵なロックであり、ディランの香りを伴い、全く隙も無駄もない。

作詞は松本隆さんで、作曲は細野晴臣さんが手掛けており、リードボーカルも細野さんが担当している。

歌詞はメタファーを多用している。
散歩がてら、蜃気楼の様に、幻の様に見える、感じる景色に何を想うかは聴き手次第だろう。街が変わりゆく事は、寂しさを伴う進化である。

実に何回聴いても心地の良い曲だ。



・青春すきま風


1974年にダウン・タウン・ブギウギ・バンドによって発表された2枚目となるシングルだ。

宇崎竜童さん率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドといえば、ツナギにリーゼントがトレードマークで、代表曲としては"スモーキン・ブギ"、"港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ"が先ずイメージとして浮かぶところだろう。

従って少しコミカルなイメージが先行するのは否めないが、本来硬派なロックンロールロールバンドである。

曲であるが、実に気持ちが良く軽やかで、タイトかつソリッドなイカしたロックンロールである。

前奏、サビ、Bメロからなるシンプルな構成の中でメロディラインが実にキャッチーで秀悦しており、前奏におけるギターのソロとカッティング、間奏におけるギターソロが絶妙な絡み合いを見せる。
実にイカしたロックンロールなのだ。

歌詞は、彼女を振った主人公の後悔、未練を見事にシンプルに記しているが、何故題名が"青春すきま風"なのかは、是非曲を最後まで聴いてその正体を知って頂きたい。



・風立ちぬ


1981年に松田聖子さんのシングルとして発表された曲だ。

この曲の作詞は松本隆さんで、作曲は大瀧詠一さんであり、編曲は多羅尾伴内さんとなっているが、これは大瀧詠一さんの変名である。

従って大瀧詠一さんによるウォール・オブ・サウンドが存分に堪能出来る素晴らしいオケである。

実に華やかなオケに、松田聖子さんの澄み切った美しいボーカルが実に見事な緩急をつけ、心を突き抜ける。
松田聖子さんは筆者にとってはアイドルというよりシンガーと捉える方がしっくりくるほどに、素晴らしいボーカリストである。

歌詞は元々、堀辰雄先生の小説"風立ちぬ"がベースとなっており、小説の内容は実話で、堀先生と婚約にまで至っていた恋人である節子さんが重度の結核を患い、最期を迎えるまで、そして最期を迎えた後を綴った内容である。

本歌詞では、原作と男女を逆にして、愛する男性が亡くなってしまった女性の悲しみ、弱さ、強がり、前向きさを融合させ、素晴らしい歌詞となり、華やかで切ない曲と見事にマッチしているのだ。



・街の風景


1983年に尾崎豊さんにより発表されたアルバム"十七歳の地図"に収録された曲だ。

"I LOVE YOU"、"15の夜"、"OH MY LITTLE GIRL"、"僕が僕であるために"、と羅列すると、もはや日本の音楽史におけるスタンダードであり、今も多くのアーティストにカバーされ、色んな人々により歌い継がれている名曲達だ。

これらの曲の全てを17歳の少年が全て作り上げ、デビューアルバムにすべて収録されている事は、音楽の神様がいたずらに素晴らしい奇跡を起こしてくれたのではないか、とすら思ってしまう。

そんな尾崎豊さんのアルバム"十七歳の地図"のオープニングを飾るのがこの曲だ。
この曲は高校1年、15歳の時に尾崎豊さんが作ったのだ。

安定感と重厚さを兼ね持つミドルテンポのロックだ。
歌詞は抽象的かつ散文的であり、都会の中で夢や葛藤、やり場の無い思いに翻弄されながらも、心の中でハーモニーもを奏で、前向きになると街の風景が無限の色が散りばめる、という実に素敵な歌詞だ。

しかし、アルバムに収録される際に曲が長い、とプロデューサーに1部カットされてしまうが、後のライブ盤にてフルバージョンが堪能出来る。

15歳の少年がこの曲を全て作り上げた、という事実を念頭に置いて、是非聴いて頂きたい。



・Rockdom-風に吹かれて-


1986年にTHE ALFEEによってシングルとして発表された曲だ。

声を大にして言いたいが、大名曲だ。

実に重厚感とノスタルジックな世界観を兼ね持ち、聴く者の心を鷲掴みにする素晴らしいミドルテンポのロッカバラードである。

先ずタイトルであるが、さすが高見沢さんであり、造語である。ROCKとFREEDOMを掛け合わせてRockdomとなり、題名から見事なセンスを見せてくれる。

歌詞は、日本では大学紛争における全共闘運動、フォークブーム、アメリカではウッドストック・フェスティバルが行われた1969年の時に20歳であった主人公が、時を経て当時の恋人や仲間達、情景を懐かしみ、振り返る内容だ。

あまりにも素晴らしい歌詞と、

俺達の時代を忘れないで 
風に吹かれていた あの頃を

というフレーズが繰り返され、心に突き刺さり、筆者は高見沢さんが1969年を思い出し、当時の時代と思い出をベースに綴った歌詞だと思い込んでいた。

しかし、高見沢さんは1954年生まれで1969年度だと15歳である。
つまり、この素晴らしい歌詞は高見沢さんが時代背景を考慮して作った物語である。
実に素晴らしい歌詞なのだ。

淡々と語る様な高見沢さんのボーカルがメロディアスに光るAメロから、鮮やかで切なさやノスタルジックなBメロを経て、アルフィーの真骨頂であるハーモニーが突き抜けるサビ、そして前述したフレーズの繰り返し、流れ、緩急も見事でどこをとっても素晴らしい大名曲である。

この曲も歌い継がれて欲しい、と思う素晴らしい曲だ。


(後記)

後編へ続く

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