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チェッカーズの勝手に10選〜藤井尚之氏作曲編〜

(前記)
美しいバラード(当時はナオバラなんて呼ばれていた)から、骨太ロック、ブルーズなど、実に幅広いレンジで素晴らしい曲を作曲する藤井尚之さん。
今回は、そんな藤井尚之さんの作曲された楽曲を、今回は勝手に10選する。

・Lonely soldier
アルバム”もっとチェッカーズ”に収録。藤井兄弟(藤井郁弥(フミヤ)さん作詞、藤井尚之さん作曲)の手掛けたパブリックとしては2曲目の作品。
アイドル全盛期のデビュー2作目のアルバムにして、藤井尚之さんのメインボーカル。
まず、イントロが素晴らしい。この物語、名曲に相応しいイントロだ。歌詞は、戦地に赴き、自身の死期を悟り、恋人の事を想う内容であるが、言葉選び、特にサビの部分や、郁弥さんが孤独な戦士の想い、覚悟を見事に歌詞として綴り、その詩的センスをこれでもか、と遺憾無く発揮している。メロディラインも、Aメロ、Bメロのバランス感が絶妙で、駆け上がり、突き抜けていく様なビートの効いたサビを見事に盛り上げて、尚之さんが淡々とファルセットを交え歌い上げる。曲のラストにまでこだわりを見せ、文句のつけどころが無い大名作と断言する。アイドル絶頂期における2枚目のアルバムでこの曲とは、チェッカーズ、藤井兄弟の完成された実力を見せつけている。

・YOU LOVE ROCK`N ROLL
アルバム"毎日チェッカーズ"に収録で、藤井郁弥さん作詞、藤井尚之さん作曲の藤井兄弟の作品。3枚目のアルバムであり、徐々にメンバーによるオリジナル曲の存在感を増す中、アルバムタイトルの示す通り、アイドル的要素の強い曲もまだ散見られるなか、この曲でド直球のROCKを披露している。ブルースも仄かに香る、ミドルテンポのROCKは、このアルバムの中で、良い意味で浮いて、異彩を放ち、実に重厚だ。力強いオケ、力強さをそのままに、切なさがエッセンスとなるサビを見事に郁弥さんが歌い上げる男目線のハートブレイクソングである。
チェッカーズのROCKとしてのカテゴリーの中で、かなりの名曲だ。
解散後も度々F-BLOODでも披露されている。

・FREE WAY LOVERS
アルバム”FLOWER”のオープニングを飾る大名曲。先に述べたが、僕はこの曲にノックアウトされ、チェッカーズファン街道を突き進む事になる。尚之さんは北海道で作曲したら、こんな曲が出来た、との事であるが、享さんの怒涛のアコースティックギターが実に素晴らしく、実に広大なスケールと明るさに、少しの切なさをトッピングした様なオケだ。
歌詞は舞台をアメリカにして、偶然出会った、シンガーを夢見る男性と、ダンサーを夢見る女性の、ひとときのラブストーリー、そして夢が2人を離れさせてしまう、というスケールの大きな曲に、スケールの大きな歌詞を乗せた名曲。

・LONG ROAD
アルバム"FLOWER"に収録。ファン投票で必ずBEST3に入る名ラブバラード。オルガンのイントロから、澄み渡った藤井郁弥さんのボーカルで曲が始まり、前半はオルガンのみのオケで進行し、間奏からバンドが入る。前半の澄み渡った静けさから、後半は全ての楽器が発する音、コーラスが絶妙に絡み合い、この名バラードをより引き立たせている。サビのホルンだろうか、ホーンが更なる壮大さをもたらしている。歌詞は、色々な壁を乗り越えて、この瞬間に君が全てと知るという内容て、アレンジ、曲の持つ雰囲気、曲自体と、お互いを高め合っている。
ちなみに、SCREW WINTER TOURにて、兄弟初のツインボーカルが披露され、これがまた、尚之さんのハモリの素晴らしさもあるが、兄弟である為、声帯の構造が似ているが故にもたされるのか、唯一無二のハーモニーを持つ素晴らしいツインボーカルであり、解散後もダブルボーカルをF-BLOODなどで披露している。

・NANA
メンバー初のオリジナルシングル。作詞は藤井郁弥さん。NHKで放送禁止となった事も有名だ。それまでの売野氏、芹澤氏が手掛けていたシングルに対して、ついにオリジナルで勝負をかける勢いをそのままに、曲全体だけでなく、イントロ、間奏にも細部まで今までにない位のこだわりが入っているロックだ。享さんのカッティング、裕二さんのベースライン、クロベエさんのドラム、コーラスも、すごく各々の音が際立ち、尚之さんのサックスもリフというより、JAZZの魂が乗り移ったかの様なアドリブの如く暴れまわる。郁弥さんの歌詞は、何かしらの恋、愛に敗れ、恋愛に対して敏感で臆病になっている女性を口説く様な雰囲気の非常にセクシーな歌詞で、オケの雰囲気にバッチリハマっている。
しかし、この曲を自身の初オリジナルシングルに持ってくるところに、根拠なき自信、覚悟みたいな事まで感じてしまう。いわゆる、バラード、ミドルテンポなどの売れ線ではなく、どこまでも攻撃的である。最高にかっこいい代表曲の一つだ。
ライブの大定番、解散後もフミヤさんが歌い継ぎ、もう何パターンのアレンジがあるか解らない程である。
あと、トリビアであるが、かのミュージックステーションの初回放送の一曲目だった。

・鳥になった少年の歌
アルバム"SCREW"に収録。もちろん藤井郁弥さんが作詞の名バラードである。尚之さんは、アルバム"GO"のあたりから、テナーサックスだけで無く、アルト、ソプラノサックスも使用する様になるが、この曲のソプラノサックスのリフ、間奏でのソプラノサックスの絡まり具合が最高だ。曲も、他国の童話の中に迷い込んだ様な独特の世界観があり、このサックスとの融合が見事である。歌詞は、自ら命を絶とうとしている少年、生まれ変わって鳥になった少年、色んな想像が出来る抽象的な歌詞、いや、もはや詩である。哀しいけど美しく、新たな光も垣間見る事が出来る詩であり、完璧に演奏、メロディ、アレンジと融合している大名作。
当時、とある番組で、郁弥さんが、SCREWで1番気にいっている曲を、同曲と答えている。

・STANDING ON THE RAINBOW
アルバム"SCREW"に収録されており、作詞はもちろん藤井郁弥さんだ
先ず、この曲を語る上で一番大切なのは、チェッカーズによる、チェッカーズの事を歌った曲である事だ。イントロ、前奏も疾走感そのものに、特にギターのリフが素晴らしい。この唯一無二のギターリフはチェッカーズの楽曲において、ギターリフの最高峰だ。Aメロの前に入る"Don’t be aflaid  of your dream”のコーラスも最高に盛り上げ役となっている。歌詞は、チェッカーズの上京から、ブレイクまでの物語、自分達にとってのチェッカーズの存在などを、あまりメタファー的では無く、ストレートに表現した歌詞だ。"7つの舌をだせ"というフレーズがあるが、アルバムタイトルをSCREW YOU、とし、訳すと、あっかんべー、というスラングになり、7人の絆の深さ、7人が揃った際の自信、勢いを凝縮した名フレーズである。実に疾走感のある16ビートに、チェッカーズ自身を盛り込んだ名曲。チェッカーズの16ビートロックの最高傑作と言ってもよい。

・今夜の涙は最高
チェッカーズの28枚目のシングルで1992年、つまり発表前ではあるが、解散する年の最初のシングル。ブルージーなミドルテンポのロックバラード。なにせ、メロディラインが素晴らしい。特にサビの部分が突出している。男が失恋した夜を主題に、切なさ、涙、対比する夜空、最高などの言葉を巧みに使用した郁弥さんの表現力が突出した歌詞と、享さんのスライドギター、尚之さんの哀愁を帯びたサックスが見事に世界観を醸し出し、映画のワンシーンを見ている様である。
筆者は、この曲が大好きだ。自宅でギターを弾く時の定番であるが、細かい話になってしまうがサビのDとD7の使い方など、作曲技術にも感服してしまう。
しかし、この後、シングル、アルバムの発売の後、夏のツアーが終わり、解散が発表され、その年で解散していまう、激動の1年の中で、この大名曲が埋もれた感じがしてしまうのが残念だ。もっと評価されるべき曲。

・COUNT UP '00S
ラストアルバム"BLUE MOON STONE"のオープニングを飾る曲。作詞はもちろん藤井郁弥さん。オルガンの様な美しいシンセとともに郁弥さんの澄んだボーカルが始まり、やがてコーラスが交差した瞬間、ドラムとサックスの、アシッドジャズも香る怒涛の16ビートのイントロで幕を開ける。曲調はファンク過ぎないファンクロックで、享さんのワウの効いたカッティングがたまらなく、コーラスも見事に調和している。宇宙、地球、日常、過去、未来を全て凝縮した様な歌詞は流石である。また、間奏の享さんのカッティングが実に心地よく、かかってこいよ、と呟く郁弥さんもクールだ。ラスト、イントロと同様のドラム、サックスと郁弥さんのシャウトで幕を閉じる。実にかっこいい曲である。
レコーディング上、この曲が藤井郁弥さんがボーカルをとるチェッカーズ最後のロックナンバーとなるが、この曲で実に見事に締めている。

・I HAVE A DREAM
アルバム"I HAVE A DREAM"の表題曲で、作詞はもちろん藤井郁弥さん。アルバムにはオープニングで享さんと尚之さんの2人のギターによる弾き語りバージョンと、ラストを飾るバンドバージョンの2曲が収録されている。
いや、しかし名曲とは、どんなアレンジを加えても名曲であり続ける、という事を見事に立証している。オケについては、気を衒ったコード進行に頼らず、王道の循環コードを用いながら、ほんの少しのオカズを加え、全く素晴らしいメロディーを奏でている。
そして、兄である郁弥さんの歌詞であるが、おんぶに抱っこする訳ではなく、ラブソングとして、もしや、世界に通ずるであろう、広大かつ核心をついた、最高にクールな詩である。
このキング牧師の演説からシンパシーを得た歌詞。国境、肌の色、死までを超えた広大なるラブソングは、文句のつけどころが無い大名曲である。

(後記)
今回も実に頭を悩ませた。チェッカーズの曲、もちろん尚之さんの楽曲は全て好きで、思い入れがあり、作曲の曲も大変多い中で、企画とはいえ無理矢理、取捨選択して、10曲に絞る作業がいかに難しい事か痛感した。
チェッカーズでの尚之さんの楽曲はバラードのイメージが一般的には若干強めだろうが、尚之さんは実にレンジが広く完成度の高い作曲家である。

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