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勝手に10選〜素晴らしきカバー曲 邦楽編(前編)〜

(前記)
先に、洋楽の素晴らしきカバー編を勝手に10選したので、今回は邦楽の素晴らしきカバー編をする。

洋楽編でも述べた事であるが、元来カバー曲とは、単に真似る事であってはならない。原曲を咀嚼、消化し、解体し、そして、アーティストなりの解釈を加えながら再構築していく。そして生まれたカバー曲が、広く受け入れられ、その原曲も再評価されるべきものだ。原曲をカバーが上回る事は、限りなく少ない上に、カバーのせいで原曲が誤解を生んでは元も子もこない。

そんな観点で、素晴らしきカバー曲、邦楽編を前編、後編に分けて投稿する。

・The Never Ending Story
2005年に坂本美雨さんによりシングルとして発表された曲だ。
原曲は1984年に映画”ネヴァーエンディングストーリー”の主題歌としてイングランドのポップ歌手リマールによって発表され、大ヒットをした。
筆者も幼少期に映画館で観た記憶がある。

さて、坂本美雨さんであるが、父親が坂本龍一さん、母親が矢野顕子さんという遺伝子上的には音楽界のスーパーエリートである。

1997年に”Sister M"の名で坂本龍一さんによる楽曲”The Other Side of Love"にてデビューを飾る。当時はその正体は誰ぞ、と世間に物議を醸し出したが、父である坂本龍一さんが娘であることを公表し、以降は本名の坂本美雨さんとして活動する事となる。

そしてこの”The Never Ending Story”であるが、坂本美雨さんが人生で初めて観た映画だそうだ。

原曲は、実に80年代を象徴するかの様なシンセサイザーや打ち込みなどを多用した豪華絢爛な実に軽やかなポップソングである。
対して坂本美雨さんのバージョンは、ピアノ、弦楽、打ち込みのみの実にソリッドかつシンプルな曲であり、時代を逆行しているかの様に雰囲気が変わるのだが、ここに坂本美雨さんのボーカルが冴え渡るのだ。

実に美しい。少しハスキーで、滑らかな艶のあるボーカル、ハモリの美しさが最大限に発揮されている名カバーである。

・デイドリームビリーバー
忌野清志郎さんに似た人(当時の設定)ZERRY率いるザ・タイマーズが1989年に発表したデビューシングルだ。

原曲はアメリカのロックバンド、ザ・モンキーズがシングルとして1967年に発表し、全米1位を獲得した名曲である。

ザ・タイマーズのバージョンだが、演奏は比較的に原曲を忠実にカバーをしている印象であるが、肝は歌詞である。
モンキーズの原曲の歌詞は、学園のアイドル的存在である彼女を持っている男に、シャンとしろよ、みたいなお惚気な歌詞なのだが、タイマーズのバージョンは彼女を亡くした男の心中を、彼女に対する感謝を込めて歌い上げている(彼女ではなく、母親という説もある)。
今はただ写真の中で優しく微笑んでくれているだけなのだ。

さすが、忌野さん…いや、ZERRYによる日本訳によって、ずっと歌い継がれる大名曲、大傑作カバーが誕生したのだ。

・(Get Your Kicks On)ROUTE66
2004年にCoco d'Orによるアルバム"Coco d'Or"のオープニングを飾った曲だ。

筆者は、とある日にバーのカウンターで飲んでいた時に、この曲が流れ一瞬でハートを鷲掴みにされ、"これ誰が歌ってるんすか?"とバーテンダーに聞いたところ、あのSPEEDの…とのことで、びっくり仰天した思い出がある。
アメリカ辺りの有名な女性シンガーかと錯覚していたのだ。

という訳で"Coco d'Or"、ココドールとは、元SPEEDの島袋寛子(hiro)によるジャズプロジェクトだった訳だ。

原曲は1946年にボビー•トゥリーフが作詞作曲し、同年にナット・キング・コールによって発表されブレイクした。元々ジャズのスタンダードであったのであるが、1960年にドラマの主題歌としてジョージ・マハリスがシングルとして発表すると、これもまたヒットする。
筆者のようなROCK好きには、ジョージ•マハリスのバージョンの方が馴染み深い。

Coco d'Orによるカバーであるが、美しいピアノに乗せて、時に優しく、力強く、艶っぽく、実に緩急をつけて、その歌唱力には圧倒される。
もはや感激どころか感謝である。

・たどり着いたらいつも雨降り
1988年に氷室京介さんのソロデビュー後のセカンドシングル” DEAR ALGERNONN”のカップリングとして発表された曲だ。

原曲は作詞作曲を吉田拓郎さんが手掛け、1972年に鈴木ヒロミツさんが率いるザ・モップスのシングルとして発表された。フォークソングとしてカテゴライズされてしまっているが、実に軽やかなミドルテンポのロックである。

氷室さんも公言しているが、吉田拓郎さんは、フォークというカテゴライズはされているが、生粋のロックシンガーであり、例えるなら日本のボブ・ディラン的な存在である。
ボブ・ディランは確実のロッカーであり、吉田拓郎さんも、紛れもないロックシンガーである。

この氷室京介さんのカバーであるが、モップスバージョンとは異なる、実にビートの効いたロックバラードだ。
ディレイの聞いたギターによるアルペジオと、ピアノが美しく絡まりながら曲が始まり、氷室さんの歌が始まり、Bメロからより重厚感が増し、サビに向かって突き上がる。
所々でボーカルも氷室さんの解釈が入り、このカバーが見事に氷室京介さんのロッカバラードとなり成立している。

氷室京介さんの、音楽、自身に対する常に進化を求める生き様、妥協の無さ、厳しさ、ストイックさが実に歌詞ともマッチしているのである。

・彼女は彼のもの
2003年に、藤井フミヤさんの生誕40年を記念とし、屋敷豪太さんをプロデューサーに迎え、アルバム1枚全て、藤井フミヤさんの原点であるCAROLのコピーをした企画物のアルバム”MY CAROL"に収録された曲だ。

原曲は1973年にCAROLの5枚目として発表されたナンバーで、作詞がジョニー大倉さん、作曲が矢沢永吉さんである。

原曲はミドルテンポの甘く切ない軽やかなポップロック的な印象であるが、藤井フミヤさんバージョンでは、実に爽快感溢れるビートの効いたロックとして見事にアップデートされている。

この"MY CAROL"というカバーアルバムだか、各々の曲が、原曲に忠実に、いやそこのリフは残すべき、いや今アップデートされると更にカッコいい、などなど好き勝手に解釈出来るカバーが詰まっている。

だか、断じて言える事は、この曲は完全に原曲へのリスペクトを踏まえて、原曲を超えてしまったアップデート、カバーである。

(後記)
それでは後半戦に続きます。

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