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勝手に10選〜素晴らしきカバー曲 邦楽編Part.2(前編)〜

(前記)
楽曲をカバーするという事は、原曲に敬意を払いつつ、しっかりと身体に含み、咀嚼、解体をしてアーティスト自身の解釈、アレンジを加えて再構築する事だ。

ただ、曲が好きで歌唱力もそこそこな私が名曲を歌ってみました、イケてるでしょ?みたいなアーティストを散見するが、そんな方々はカラオケにでも行って歌ってください。そんな曲で人からお金を貰わないで頂きたい。

歌は歌い継がれなければいけない。
記録として残っていても、誰も歌い継ぐ者がいなければ、曲にとってそれは死に等しく、記録は墓標となる。

カバーが原曲を超える事は稀である。
が、敬意をもって歌い継がれる事で、その曲自体は生きていくのだ。

そんなカバー曲、邦楽編を前編、後編に分けて勝手に10選する。

・上を向いて歩こう by 斉藤和義
原曲は同名で1961年に坂本九さんのシングルとして発表された曲だ。

日本の音楽史で唯一その名を”SUKIYAKI"と変え、ビルボードで1位を獲得している大名曲だ。
原曲は軽やかなミドルテンポのバラードで、実にシンプルにメロディラインも美しく、淡々と時には切なさも混同して坂本九さんが歌い上げる名曲だ。

斉藤和義さんのカバーであるが、ミニマムな心地よいロックだ。
ギター、ベース、ドラムとソリッドな構成で、ブレイクやBメロなどで緩急をつけながら、間奏のギターソロもテクニカルな事はなく美しいハーモニーで見事に華を添えている。

こういうカバーが、今後も歌い継がれる最高の形なのだ。

・Basket Case by PUFFY
原曲は同名で1994年にアメリカのバンド、GREEN DAYにより発表された曲だ。

時代的にロックという存在が試行錯誤して、行き先を模索している様な最中に、Green Dayがものの見事にゴキゲンなROCKを見せつけてくれた事が嬉しかったのが懐かしい。

PUFFYによるカバーであるが、PUFFYが、GREEN DAYを、Basket Caseを、ととにかく曲を聴く前に仰天したものだ。
オケは原曲に忠実な路線を踏襲しつつ、良い意味でギターの音色を軽くすることで、全体的に軽やかになっている。しかし、曲の持つ疾走感、重厚感は損なわれていない。

PUFFYの2人は、実に良いことだ、自由に歌っている。
ハーモニーはなくで良いのだ、ユニゾンで思いっきり気持ちよく歌っているのが大正解なのだ。それがロックだし、GREEN DAYだ。
日本が誇れる、実にキュートでパンキッシュな日本ならではの名カバーだ。

・DREAMIN' by Dragon Ash
原曲は同名でBOOWYの傑作の1つである。

はてさて日本のロックシーンに塗り替える事は出来ないであろうレガシーを残したBOOWYの名曲をDragon Ashはどう表現するのか大変興味深いところであった。

なんと、レゲエから始まる。
イカしたレゲエのオケに、あの名リフが乗ってくる。
素晴らしい、そう来たのだ。

一転してハードコア・パンクに移行する。
Aメロ、Bメロを疾走感を保ちながら突き進む。
サビに移ると、ややテンポダウンして音の数もタイトになる事により原曲のサビのフレーズ、歌詞、メッセージが煌びやかに前に出る。

素晴らしいカバーだ。
敬意を表しながら、自身のサウンドにしている実にイカしたカバーなのだ。

・木綿のハンカチーフ by 椎名林檎
昭和における歌謡曲の大名曲で、松本隆さんが作詞を、筒美京平さんが作曲をてがけた太田裕美さんの曲だ。

原曲はもういかにも昭和の歌謡曲と言った雰囲気で、ストリングスも煌びやかに太田さんが実にキュートさに少し切なさをスパイスした様なボーカルを披露している。

椎名林檎さんのカバーであるが、軽やかなテクノロック、ハウスロックなのだ。
まさに原曲と対極的にあるアレンジだが、実にタイトでラウド過ぎず、抑揚も少なく、キュートな雰囲気だ。

サウンドに抑揚が少ない分ボーカルが前に出てキーとなるのだが、この椎名林檎さんバージョンでは、男性側のパートを椎名林檎さん、女性側のパートを松崎ナオさんが歌う事により、敢えてデュエットにし、歌声に少し緩急を付ける事で曲の調和を乱さず、見事にこの名歌詞を際立たせているのだ。


・シンデレラ by 藤井フミヤ
原曲は同名でクールスの曲だ。

元々、キャロルとクールスを聴いてロックンロールの道を進む事になったフミヤさんだけに、実に楽しみながら、余裕すら感じる雰囲気がボーカルから伝わる。

また、弟で共に元チェッカーズの藤井尚之さんがサックスとコーラスで参加しており、素敵なダンスの様に踊るサックスと、フミヤさん、尚之さん兄弟のハモりが実にイカしている。

原曲に忠実なカバーではあるが、ひとつひとつの楽器がクリアに抜けており、そこに本当に大好きなんだな、と思わせる敬意を感じさせる突き抜けたフミヤさんの唯一無二のボーカルが見事に融合した、実に見事で気持ちの良い痛快なロックンロールとなっている名曲カバーなのだ。

(後記)
後編へ続く。

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