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勝手に10選〜イカした 女性ボーカル 洋楽編(前編)〜

(前記)
楽曲は、実に様々なマテリアルの集合体として、存在している。
そんな中から、今回は女性におけるボーカルに焦点を当てる。  

声の質や技量、歌い方はもちろん、曲の良さを引き出し、ボーカルが演奏を引き立たせて、逆も然り、お互いを高め合うような、素晴らしいボーカル、要するにイカした女性ボーカルに焦点を当て、今回も1アーティスト1曲に限定して、前編、後編に分けて、勝手に10選する。


・I Wanna Be Loved By You
1959年に上映されたビリー・ワイルダー監督でマリリン・モンローが出演した"Some Like It Hot(お熱いのがお好き)"の劇中歌だ。

マリリン・モンローは1950年代に一世を風靡したハリウッドにおける大スターであり、100年に一度のセックスシンボルと評される。
しかし、そのキャリアにおけるマリリンは常に自身に対してストイックかつナーバスであり、1950年代中盤以降は、既にメンタルが不安定になっていく。

この曲であるが、そんなメンタルが不安定な時期に録音された劇中歌だ。
マリリン・モンローは実にボーカルとしても優れている。
その甘く艶っぽい美声のピッチも完璧で、歌い方の変化、緩急を織り交ぜ、実に聴いていて心地よいのだ。
あと、特筆すべきは、ボーカルの合間における"ドゥシュッピドゥ"などの合いの手が、実にキュートでいつ聴いてもハートを鷲掴みにされる。
メンタルが不調でも、こんな素晴らしいボーカルを披露するマリリン・モンローは、やはり真のプロフェッショナルであり語り継がれる大スターなのだ。

・Move Over
1971年にジャニス・ジョプリンにて発表されたアルバム"Pearl"に収録された曲だ。

ジャニス・ジョプリンは、1967年にデビューを果たしているが、名義はビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーであり、始まりはバンドであった。
1968に同名義でアルバムを発表するが、ともに不発に終わった。

しかし、フェスで歌唱力が注目され始め、3枚目のアルバム" Cheap Thrills"でその歌唱力が認められるところとなり、1969年にアルバム" I Got Dem Ol' Kozmic Blues Again Mama!"を発表し、ウッドストックに出演を果たす事となる。

曲であるがアルバム"Pearl"に収録されているのだが、このアルバムは、その制作中でジャニスがドラッグにより亡くなってしまった為に、遺作として未完のまま発表された。

シンプルなドラムから始まり、ハスキーな歌声で緩急をつけながらもやや控えめなジャニスのボーカルに沿う様にギターが絡まり合う。
Aメロのフレーズ毎のブレイクだけが重厚感を増す。

そして怒涛のサビへ以降するが、ピアノ、ギター、キーボードなどか多用され、実に重厚感と疾走感を兼ね備えたオケにジャニスの力強いボーカルとシャウトが見事な融合する。
実にクールなロックを亡き後に発表され、それが後世に代表作とされ君臨するのだ。

・Superstar
1971年にカーペンターズのシングルとして発表された曲だ。
原曲は1969年にデラニー&ボニーによって発表されたロックで正しい原題は"Groupie (Superstar)"である。

原曲は若干いなたいロックという印象で、なんとギターはエリック・クラブマンが弾いており、サビになって、ホーン、コーラスが入り乱れ、いきなりR&B、ソウルフルになる展開だ。

カバーとなるこのカーペンターズによるバージョンであるが、ポップよりなアレンジになっており、ホーンが全面に出て、メロディラインに対して、あくまでボーカルを際立たせるオケに徹している。

肝心のボーカルであるが、カレンのボーカルを文章で表現するのは、いささか難儀か。
少しキーが低く、少しハスキーで、ピッチはパーフェクト、曲の世界観に寄り添い、時に優しく、時に力強く、声色は生まれ持ったものであるなら、真の天才的なボーカリストなのだ。

原曲と比較しても、カレンには余計なコーラスなど要らないのだ。
カレンのボーカルとカレン自身によるハーモニーがあれば、余計なアレンジなどなくとも、テクニカルな演奏が無くとも、実に美しく、あっさりとハートを突き抜いてくれる名曲となるのだ。

・Dancing Queen
1976年に発表されたスウェーデンのストックホルム出身であるABBAのシングルだ。

ABBAは1974年にアルバム"Ring Ring"にてデビューを果たすが、その名義は"ビョルン&ベニー、アグネタ&アンニ=フリッド"だった。
要するにメンバーの名前の羅列だったのだが、更に頭文字を並べて次作よりABBAとなる。

男女2人ずつ、男性陣が曲を作りギター、キーボード、コーラスを奏で、女性陣がツインボーカルという、少しあまり見ない編成である。
しかも、メンバーの中でで2組結婚するという(後に2組とも離婚するが)、実に面白い経歴を持つ。

この曲であるが、この曲が大ヒットし、ABBAが世界的にブレイクを果たした曲だ。

曲の構成はサビ→Aメロ→サビ→Bメロとした方がわかりやすい。
Aメロは、しっとりとソロとユニゾンを巧みに使い分け世界観の土台を作り、そしてサビになると実に美しいハーモニーが突き抜ける。
Bメロで、少しの切なさを加えながら、最後は見事に、また突き上げ切って帰結する。
いつ聴いても気持ちが良い名曲だ。

・Like a Virgin
1984年にマドンナのセカンドアルバム“Like a Virgin"からの先行シングルにて発表された曲だ。

1980年代のポップ界において、
キング・オブ・ポップはマイケル・ジャクソン
クイーン・オブ・ポップはマドンナ
なのだ。

マドンナは、1982年に"Everybody"をを発表しデビューを果たす。
シンガーソングライターであるマドンナは無名時代にこの曲を制作して、そのままシングルとなりデビューを果たす。
その後はデビューアルバム、更にセカンドアルバム"Like a Virgin"が大ヒットし、その後もヒットを連発していまに至る、ギネスにも認定された最も売れた女性アーティストである。

曲であるが、ナイル・ロジャースをプロデュースに迎え、実に軽やかで明るいポップ、ダンスチューンとも言える。
決して楽器をふんだんに使用していることはないが、ドラムが実にクールで、曲全体でソリッドにそれぞれの楽器におけるミニマルな働きを見事に生かしている。

マドンナのボーカルは、実に澄んでおりキュートに艶やかさも兼ね備えている。

歌詞の内容は、散々苦労してきた女性が恋に落ち、まるで初恋みたいだ、というストレートなラブソングを実に軽やかに澄み渡る様に、そして艶やかに歌う。
曲間の"hey"などの合いの手も最高にキュートで見事に曲に華を添えている。

さすが"Queen Of Pop"ここにあり、なのである。

(後記)
それでは、後編につづきます。

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