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習作1(その14):国後から来た赤鬼

短文を書きました。小説の一項になるにはどうすればよいかアドバイスをください。

国後から来た赤鬼

羅臼に赤鬼と呼ばれる男がいる。数年前に、択捉から泳いでやってきたロシア人だ。難民申請をして今は、居住許可を得ている。羅臼では昆布漁の採り手をやっている。
昆布漁は浜が団結して行う。そもそも、漁場の岩場を昆布が着床しやすいように整備するところから始まる。漁は漁日にのみ行われる。漁が行われるのは、1日中好天が見込まれる風のない日だ。夜明け前から船を出し、午後まで続く。船は何度も浜と漁場を行き来する。浜に上げられた昆布は、天日で干される。
昆布は水深5mから8mくらいの漁場に生えている。漁の季節の最初の頃は鉤竿(かぎざお)と言われる長い竿で昆布を船まで引き寄せて手でねじ切る。季節が進むと最初に切り取られた昆布の残りを捻じり(ねじり)と言われる道具で根を抜いて船まで引き上げる。深い水深から昆布を引き上げるのは重労働だ。
浜に引き上げられた昆布は、天日干しされ、おおよそ1mに裁断される。そのまま、出荷される昆布もあるが、多くの昆布は温度と湿度を管理された中で1年程度熟成される。より上質にするものは2年、3年と熟成される。
日本国内の昆布のおよそ95%は北海道産だ。なかでも羅臼産はもっとも濃厚な出汁(だし)がとれるということで珍重されている。北海道昆布の三大産地は知床の羅臼、南の日高、北の利尻だ。
赤鬼はこの昆布採りの名人だ。
居住許可がでているので、わざわざ国後のそばにいることもないのだろうに、故郷が恋しいのか、気候が合うのか、冬には極寒となるこの地にとどまっている。
羅臼に来た際、所持金は2万円だったという。浜の長が空き家をあてがい、何かと面倒を見た。今では、浜の重要産業である昆布漁に欠かせない鬼となっている。


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