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習作1(その15):よく来たな

短文を書きました。小説の一項になるにはどうすればよいかアドバイスをください。

よく来たな

「昆布は漁師の家族が、天日干しにしてくれる。」
「そのまま出荷する物もあるが、熟成させるものが多い。」
「俺らがやるのは、天日干しの手伝いと、熟成の間の温度、湿度管理。」「俺も、3か月しかやってないから、冬になったらどういう管理をするのかわからん。吹雪になったら、熟成小屋まで来れないだろう。」
「特に忙しいというわけではない。」
「なんでもう一人よこしたんだろう。」
私の同僚になるはずの男はこんなことを言っていた。同僚というのもおかしいが。
路線バスで、羅臼についたのは夕方。伝えられていた住所に向かうと男が住んでいた。何も言われていないが、同居することになるのだろう。
「俺は、国立劇場で経理をやっていたんだ。」
「国立劇場ってのは、明治の時代から、西園寺公望だの森有礼だののお歴々が、絶対必要だと言っていたものだ。それでも出来たのは戦後だ。苦労に苦労を重ねて出来たんだ。外国に日本の伝統芸能を見せるための劇場だ。」
「明治のお歴々でも劇場を作る資金を集めるのは難儀だったらしい。」
「それはどうでもいいんだが、国立劇場は今は、歌舞伎だらけ、たまに能や狂言をやっている。歌舞伎の、梨園っていうのかな、あやしい一門だ。」
「国立劇場の資金管理に不透明なところがあって、俺が調べていたんだ。そしたら、専任の舞台監督が、止めろっと言ってきた。」
「何で止める必要があるんだ。あんたも絡んでいるのか。裏金に。」
「なんて言ったら、クビ。」
「つまんねえ仕事だったからせいせいしたくらいだ。」
「やることもなくなったので、ぶらぶらしていたらラーメン屋に出くわして、1杯2万円だとぬかしやがる。そんなの払えねえ、と言ったら、働けってことで、羅臼まで飛ばされた。」
なるほど、私と同じ境遇なわけだ。留置所には送られたのだろうか。
同僚というより同胞だ。
そこに、ガタイのいい外国人が入ってきた。
このあたりでは赤鬼と呼ばれているということだ。
日本語は話せないようだ。
男の話では、赤鬼は、国後島から泳いで日本に渡って来て、羅臼に住み着いたという。

読んでいただけると嬉しいです。日本が元気になる記事を書いていきます。