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ラプソードに代表されるトラッキングシステムは野球やゴルフに有用か?

少々傲慢であるが,『トラッキングは育成期においては不必要であるどころかパフォーマンス向上を阻害する恐れさえある』といえる.

トラッキングシステムの利点とは?

トラッキングシステムの一つの利点は,『狭い場所でもパフォーマンス結果が分かる』事である.
ピッチングであってもバッティングであっても,またゴルフであってもリリースやインパクトからボールが地面に着くまでの軌道を見ればどういう軸で回転がかかっているか,飛距離も基本的に分かる.
その結果から,おおよそのリリースやインパクトのメカニクスは考えられる.

ボールの飛球する場所がない場合トラッキングシステムは,パフォーマンスの結果の理解として有用である.
しかし,有用と言えどもその項目はボールスピードぐらいのものだと考えて良い.
ボールスピード以外のパフォーマンス結果は,フォームの観察や飛球線方向だけ確認出来すスローモーション撮影で充分である.
いまやスマートフォンにも240FPSくらいのスローモーション撮影機能は搭載されている.

ボールの正確な回転軸や回転数などが分かる事も利点ではあるが,各フォームのマクロな部分がほぼ完成されているレベルのアスリートでその利点は発揮される.

なぜトラッキングシステムはパフォーマンスの向上を阻害するか?

あくまで育成期の問題であるが,ピッチングでもヒッティングでもゴルフにおいても各フォームの基礎,土台がない状態でボールの回転数や回転軸が適した状態になっても小手先の技術をその段階で覚えただけでその後に活かす部分は小さいと言える.

ビッチングで言えば,回転数や回転軸のほとんどはリリースにおける前腕から手首,指の使い方で決定される.
トレイルレッグでの股関節の回旋を含めたパワーの生み出しやリードレッグでの固定及び蹴り返しによる前方成分の力を回転に変える作用,これらが出来ずにリリース部分をいかに変えても根本となる【投球スピード】は向上しにくい.
その段階でリリースを身に着けても,パワーを生み出す方略を変えると自ずとマクロなフォームも変わるため,またリリースを調整する事が必要になる.

ゴルフでも極端な言い方であるが,『まっすぐボールを打てない人間がドローやフェードを打ち分けるのに必死になっている』状態である.

まず基礎を固めずして小手先を獲得してもほぼ意味がないどころか,再学習という遠回りになる事も考えられる.

【運動学習】という面では,色んな事由を並行して練習するとパフォーマンスの向上は早い事は確かである.
先のゴルフの例えでは,まっすぐボールを打てなくてもインテンショナルなフェードやドローを練習することは【まっすぐボールを打つ】事に対してもポジティブに働くと言える.
しかし,この程度であればトラッキングシステムが必要な問題ではなく,スローモーション撮影で充分である.

スポーツのパフォーマンスで考えれば,まず基礎があってその上に様々なスキルを修飾する事が重要である.
トラッキングシステムを用いる事でおおよそのイメージを持つことはポジティブに働くが,回転数や回転軸が適正ではないからと言ってその改善を求めるのは,育成期においては全く必要ない事だと考えられる.
まずマクロなフォームをしっかり身につける事が重要でその後のマイクロなスキルについては土台となるパフォーマンスがおおよそ完成してからの方が,伸び率は良いだろう.

最後に

昨今話題となるトラッキングシステムについて,傲慢であるが現状を見直すという点からのコラムである.
はっきり言って,トラッキングシステムから導かれる数字は見ていて楽しい.
一球一球打つたびにどんな結果だろうとワクワクしながら練習出来る.
このようにあくまでレクリエーションとして使用は良いが,その結果だけにこだわって土台となるマクロなフォームをおろそかにすると将来的なパフォーマンスの向上が非効率的になるし,体の故障にも繋がり兼ねない.
育成期においてはまず基礎をしっかり固める事が重要である.

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