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令和5年度「地域のお店」デザイン表彰 受賞店紹介

令和5年度「地域のお店」デザイン表彰 受賞店紹介

 令和6年1月10日に静岡市の浮月楼で、『令和5年度 「地域のお店」デザイン表彰 表彰式&フォーラム』が開催されました。東部地域から2店舗が受賞し、「柚野商店」(富士宮市)が大賞、「Vieni KANDA」(伊豆市)が特別賞(ローカルフード賞)に選ばれ、知事から賞状と副賞が授与されました。
 個人商店の継業や人口減少への対応、地域内外の人たちのコミュニティとなっている点などが評価されて大賞を受賞した「柚野商店」と、料理の一品一品がお客さまの喜びや健康、幸せを気遣っており、自治会の班長として積極的に地域に溶け込んでいる点などが評価されて特別賞(ローカルフード賞)を受賞した「Vieni KANDA(ヴィエニ カンダ)」に、これまでどのような想いで活動をしてきたのか伺ってきました。

「地域のお店」デザイン表彰とは

 外観など見た目の良さだけでなく、お客様との関係づくり、地域・社会貢献等、広い意味でのデザインという観点から、魅力と個性に優れた個店を表彰するものです。「ふじのくに魅力ある個店」登録店を対象に実施しています。
詳細はこちら→https://f-koten.jp/award-shop2.html

柚野商店~人と暮らしをつむぐ~

柚野商店の方々

○この度は令和5年度「地域のお店」デザイン表彰大賞受賞おめでとうございます。

 ありがとうございます。

○早速ですが、このお店「柚野商店」を開店するきっかけや経緯を教えてください。

 このお店ができる前はこの場所にコンビニがあったのですが、それがなくなってしまうと知りました。私自身これまで子どものアイスを買いに来たり、初めてのお買い物で利用したりなど、お世話になってきたお店だったので、こういったお店をなくしたくないという思いで第三者承継を決意しました。

○どのような方たちが「柚野商店」を利用されているのでしょうか。

 小学生が学校の帰りに利用したり、月に2回学童の先生が子どもたちを連れて買物の練習としてお菓子を買っていってくれます。子どもたちもすごいもので、100円以内で買物するために色々なお菓子を組み合わせてぴったり100円にして買っていくんですね。
 特に、毎週月曜日は「量り売り10%OFF」にしているんですが、10%OFFされた端数もうまく使っているのには舌を巻きます。今の子どもたちは小さい頃からWAONやPayPayを使う子たちもいるので、こういった現金を使う買物が生きた算数となり、子どもたちにとってすごく大事だなと思っています。
 また、この地域には高齢者の方たちが多いので、おじいちゃんやおばあちゃんたちがよく顔を見せてくれます。柚野商店を開いた後も地域唯一の商店が残ってくれて良かったと言われたり、地域の人たちの憩いの場になっているのを見ると、このお店を残して良かったなと感じますね。

店内の様子

○柚野商店と並行して「どってん屋」というパン屋さんを経営しているようですが、そちらはずっと経営してきたお店なのでしょうか。

 いえ、元々は建築系の仕事をしていました。夫が持続可能な観光業の仕事をしたいと富士宮のホールアース自然学校に入校したことをきっかけに、富士宮に移住することになりました。移住してすぐは農業をしたり、子育てをしたりしていたのですが、子育てに一旦区切りがついて、何か仕事をしようと思ったときに思いついたのがパン屋だったんです。
 というのも、元々建築系の仕事をしていたため、コンクリートとか人工物に囲まれる生活をしていたのですが、東日本大震災で建物が瓦礫になって土に還っていかない現状を目の当たりにして、建築系の仕事に対して急に興味が無くなってしまいました。
 その時に「土に還る」ということがすごく大事だなと実感したことと、私の子どもが小麦アレルギーだったこともあり、アレルギーによって好きなものが食べられなくなるつらさ、子どもに好きなものを食べさせてあげられないつらさというものが分かっていたため、そういう人たちにも食べられるものを作ってあげたい、そういう人たちが楽しめる場所を作ってあげたいと思って「どってん屋」を始めました。

○柚野商店の一番の特徴は、先ほどお話しに出た「量り売り」だと思いますが、どうして「量り売り」をしてみようと思ったのですか。

 一番大きいのは、消費者の立場でいるときはそんなに気にならなかったのですが、パン屋を経営していて、個別包装によって自分がとてもビニールごみを出しているなと感じたことです。
 そこで少しでもごみを減らせる買物ができればいいと思って、パン屋で量り売りをしてみました。例えば、夫が作っている米とか、レーズン、くるみ、チョコチップ、スパイス類。色々なものを量り売りできるようにして、自分が必要な分を必要なだけ買うことができるようにしました。そうしたら、お客さんもここはそういった買物ができるお店だと言うことを認識してくれるようになり、お盆だけ持って買物に来て、ここにパンを置いてくれという買物をしていくようになりました。
 そのため、その感覚を柚野商店でも継いでいきたいと思って、量り売りができるようにしました。ビニール袋を使っちゃいけないというわけではなく、選択肢としてビニール袋を使わない買物スタイルがあるよ、と言うことを伝えていきたかったんです。おそらく、前身のコンビニの販売スタイルをそのまま引き継いでくださいという内容だったら、承継していなかったと思います。

○柚野商店を経営していく上で、何か課題などは抱えているでしょうか。

 やはりお客さんの数が安定しないことですね。天候にも左右されやすいですし、基本的に土日の方がお客さんが多いのですが、今日みたいに一時的に多くのお客さんが集中するときもあります。その日になってみないとどのくらいお客さんが来るのか分からないのが悩みです。

○最後に、柚野商店を今後どのようにしていきたいか、思いなどはありますか。

 もっと色々な方の交差点になるようなお店にしていきたいなと思っています。
 例えば、外国の方のツーリングインフォメーションだったり、観光案内所のようなものだったり、移住の相談所や子育ての相談会みたいなものも開催できればと思っています。他にもこの場所ではないですけど、公民館を借りてラジオ体操をやったりだとか、色々面白いことをやっていきたいなと思っています。

柚野商店外観

柚野商店プロフィール

所在地:富士宮市大鹿窪208-8
TEL:050-3131-7444
営業時間:10:00~18:00
定休日:日曜日・祝日
アクセス:(電車)JR身延線西富士宮駅から上柚野行きのバスで15分。柚野農協前で下車、すぐ目の前。
(車)大石寺から469号線を南下、75号線に突き当たった真正面。JA富士伊豆柚野支店の2軒隣り。

その他詳細については、こちらのHPも御覧ください
https://f-koten.jp/shop/details/1236

Vieni KANDA ~こっちこっち!おいで! グルテンフリーイタリアン~

Vieni KANDA外観

○この度は令和5年度「地域のお店」デザイン表彰特別賞受賞おめでとうございます。

 ありがとうございます。

○まず、神田さんの地元は新潟県だと伺いましたが、どういった経緯で伊豆市に移住されたのでしょうか。

 新潟の専門学校で2年間勉強して卒業する際に、やはり東京とか神奈川といった大都市で働いてみたいという思いがありました。そこで、東京にするか神奈川にするか迷ったのですが、東京の人混みや閉塞感が自分に合わないなと思って、神奈川の海沿いや山沿いにあるレストランで修業しようと思ったんです。それで、鎌倉や逗子、葉山のお店で計8年程修行していたときに、レストランのオーナーが伊豆の方で出店するということで、そこのオープニングスタッフとして伊豆市の方に引っ越してきました。

○神田さんは小麦アレルギーをお持ちだと伺いましたが、発症したのはいつ頃でしょうか。また、小麦を使わないという点ではイタリアン以外の選択肢もあったかと思いますが、どうしてグルテンフリーのイタリアンという道を選んだのでしょうか。
※グルテンフリー:料理や食品に、小麦や大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンを含めない、使わないこと。

 発症したのは、伊豆市に来てから1年くらいたった頃だったと思います。逗子にいた頃も2年程ピザ職人として働いていたので、約3年ぐらいずっと小麦を触り続ける生活が続いていました。その時にかゆみやじんましんといった体の不調が出てくるようになり、検査してみたところ小麦アレルギーが発覚したという形です。
 そこからは今後どうしていこうかすごく悩みました。イタリアンではなく野菜をメインにしたお店を手伝ってみたり、スパイスカレーを提供してみたり、ビーガン食にチャレンジしてみたりしました。
 ただ、それを続けることを考えたときに、自分らしさがないなと思ったんです。その時に、やっぱりイタリアンの道で生きていきたいと思い、グルテンフリーのイタリアンで出店することにしました。

グルテンフリーのパスタ

○ちなみに、「Vieni」というのはどのような意味なのでしょうか。

 「Vieni」はイタリア語で、「こっちこっち!おいで!」という意味です。お客さんが入りやすくて親しみやすいお店を目指したいと思って、この名前にしました。

○グルテンフリーを目的に来るお客さんは多いのでしょうか。

 月によってもまちまちですが、だいたい月に2~3人ぐらいでしょうか。驚いたのは、海外から来てくれた人もいます。日本人の友人と一緒に来てくれていたようですが、東京で食べた料理よりもここの料理の方がおいしいと言ってくれて、本当にうれしかったです。SNSを見てきてくれるお客さんも多いですが、伊豆市や沼津市、三島市から来てくれるお客さんは口コミを参考に来てくれる人が多いですね。

○地元の新潟県やレストラン勤務をしていた神奈川県と比べて、伊豆市の良さや特徴はありますか。

 まず、なんと言っても人が優しいことです。ここで出店するにあたって協力してくれる方が多かったですし、業者の方もすごく協力的な方でした。そのため、ここに引っ越してきてからも住みづらさというものは全然感じなかったです。それと地元の食材がすごく豊富ですね。魚介系や畜産系、野菜やジビエと本当に全ての食材がぎゅっと集結しているので、料理人としては仕事をしていて楽しい地域だと思います。

○地域の良さとして人が優しいということをあげられていましたが、お店を経営していく上で、やはりそういった人とのつながり・出会いというのは大事なのでしょうか。

 僕はすごく大事だと思っています。例えば、料理を一品出すにしても野菜や魚など多くの食材を使うことになるのですが、それらの食材を僕が作れるわけではないですし、漁港に直接買い付けに行くわけでもありません。
 だからこそ、人との付き合いというものが大事になってくると思います。その野菜や魚を使っておいしい料理を作るにはどうすればいいか、どういった調理方法があるのか、今日作った料理が本当においしかったのか、そういったことは人と話さないと分からない。野菜や魚を提供してくれる人たちの思いというのは、中々聞けることが少ないため、人とのつながりや出会いというのを大事にしています。

○自治会の班長業務も担われているとのことですが、お店との兼業は大変ではないですか。

 本当に大変です。夜や週末の集会に参加したり、地域のイベントを手伝ったりしなければいけないため、変則的な休みにしなければならないです。今日も祝日に予約したいというお客さんがいたのですが、その日にちょうど班長業務が入ってしまっていて、泣く泣く断らざるを得なかったです。おそらく、旅行でこちらに来るお客さんだったようで、すごく残念そうな雰囲気になってしまって申し訳無かったです。
 ただ、班長業務をすることで地域の人たちに自分のお店のことを知って貰えるし、先ほどの人とのつながりに関わってきますが、こういったつながり、関わりと言ったものがプラスになると思っています。

○最後に、今感じている課題や今後この「Vieni KANDA」をどうしていきたいかなどの展望はありますか。

 グルテンフリーを謳ってはいますが、今後もグルテンフリーを前面に押し出していった方がいいのか、イタリアンである以上あまり押し出さない方がいいのか悩んでいます。色々と試行錯誤しながらやっていきたいと思っているので、お客さんにどんな料理が食べたいですかと聞いてみると、カレーとかもありだよねという話もありました。他には、やっぱりピザを食べてみたいという話もあります。現在ピザの試作をしていますが、ナポリピッツァの経験からすると、グルテンフリーの生地で納得のいく出来上がりは難しいです。いつか自分らしい米粉ピザを提供出来るよう試作を進めています。

Vieni KANDA内観

Vieni KANDAプロフィール

所在地:伊豆市柏久保631-1
TEL:0558-73-2500
営業時間:11:00~15:00、17:30~21:30
定休日:日曜夜、月曜、火曜昼
アクセス:伊豆箱根鉄道駿豆線修善寺駅から徒歩約2分

その他詳細については、こちらのHPも御覧ください。
https://f-koten.jp/shop/details/1233