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読書案内1_学校教育の実践研究の方法の参考になる

有料記事「学校教員から大学教員になった私の方法」を読んでくださった方ありがとうございます。その中でも、最終章に「読書案内」として、学校教員が大学教員を目指す際に参考になるのではないかと思う本を紹介しました。その後、読んだ本を中心に、参考になるのではないかと思うものを紹介してみることにしました。

今回は、研究業績を作ることに関連して、学校教育実践の研究を学術論文として認められるような研究にしていくことに関連して、参考になると思う本を紹介します。

笠原広一『子どものワークショップと体験理解』九州大学出版会,2017.

アートのワークショップの理論と実践の研究書です。著者の博士論文の加筆修正ということもあり、ワークショップ実践についての総合的な研究となっています。先行研究、歴史的背景を踏まえたうえで、理論、実践の研究へといたる構成は、実践に根差した研究のお手本のように思います。(とても僭越ながら)

Vitality affectという概念、エピソード記述とメタ的観察、考察、コーディング分析など、それぞれの研究方法をワークショップ研究の文脈で丁寧に検討した上で、著者のワークショップ実践の検討する際に活用しています。

学校教育実践を研究しようという学校教員の方には研究方法が参考になるのではないかと思いました。著者のように総合的に行うのは、かなり高度だと思うのですが、例えば、
・歴史的背景や先行研究などに自分の研究をどう位置付けるか。
・理論的な概念をどのように検討し、自分の研究に活用するか。
・関与観察(参与観察)とその研究をどう行うか。
・エピソード記述をどう検討するか。
・実践をどうコーディングするか。
・実践者として実践をどう省察し研究論文にするのか。

というようなことの参考になると思うのです。

学校教育ではなくアートのワークショップであること、それゆえ実践自体は学生に多くを任せ自分は観察者としての位置を一定程度確保していること、子どもが少数であること、子どもとの関係はその日限りであること、子どもの発達段階が様々であること、など学校教育、学校教員とは異なる状況下での研究ではありますが、それでもとても参考になると思います。

特にアート(図工・美術)はもちろんのこと、総合のようなプロジェクト学習の研究をする方に参考になりそうです。

もちろん、そもそも実践事例が魅力的であり研究としてとても面白いのでオススメです。絵画表現ワークショップに参加した子どもの「こんなに汚れたの初めて!」の場面や、映像のワークショップに参加した保護者の語りの場面など、生き生きとした質の高い実践事例と実践を捉える目が、豊かな考察を生んでいる。少し大げさかもしれませんが読者にもVitality afectのあるようなとても魅力的な研究でした。

そういえば、魅力的な事例、魅力的な子どもが記述されていると、本からでも感動を覚えますよね。なんだか自分もその教育場面に参加したかのような、自分の実践によって子どもたちの夢中な姿、成長の姿をみたときのような嬉しさがこみあげてくるのを感じます。これは教員ならではの感覚なのでしょうかねぇ。

いや、もしや、私だけですか?


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