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救急車の有料化(訂正版)

先日見た報道、それについてのつぶやきを少しだけ掘り下げてみる。
当方が誤解していた部分もあり、それを訂正するためでもある。
原典の確認、原典の質の確認が重要ということだと思う。

なお、医療の専門家ではないので、正確性は紹介サイト、医療機関サイト、さらに正確性を望むなら医療従事者のご友人の情報などで補完してほしい。

つぶやきでの誤解の訂正

表面的には「救急搬送されても入院に至らなかった場合、2024年6月から1人当たり7700円を徴収」というものであり、それ自体は表面的には正しい模様。ただしその理解に留めると、誤解が生じるように思う。

調べなおしたうえでの当方の理解では、以下のようになる。

地域医療支援病院等における選定療養費の徴収義務を、通院だけでなく救急搬送の一部にも適用させる。適用基準は、入院加療を必要としなかった者という程度とする。ただし、適否の判断は各医療機関となるため、実態は、救急車の不適切利用の場合に限るのではないか。このような話に思える。

報道の扱い

選定療養費に絡めた解説をしているケースとしていないケースがある。

選定療養費に絡めた解説をしているケースを例示してみる。ひとつめのSmartFlashに、かなり詳しく書かれている。

選定療養費に絡めた解説をしていないケース、NHKの報道を下に記しておく。

SmartFlashと同様、「松阪市の健康福祉部健康づくり課」に取材しているにもかかわらず、NHKの報道はいただけない。SmartFlashでは詳解されている内容が、NHKでは「このままの状態では、助かる命も助からないことが懸念される。救急車は適切に利用してほしい」だけになっている。選定療養費という言葉も見当たらない。選定療養費の話はどこに行ったのか。

まさか「松阪市の健康福祉部健康づくり課」が選定療養費を説明していないとは思わない。取材で選定療養費の説明を聞いていながら、その説明を削ったということだろうか。

選定療養費

今回の記事は、つぶやきを訂正する面が大きいため、深くは掘り下げない。

選定療養費は、厚生労働省のサイトにある「特別の料金」のことだと思う。このサイトの「制度案内リーフレット」PDFにいろいろ書かれている。

選定療養費の対象となる患者

制度案内リーフレットのQ&AのQ6に、「特別の料金」の支払い対象となる患者が記されている。

今回のケースに密接に絡む部分には、以下のものがある。

医療機関が「特別の料金」を求めてはならない患者(A)
初診・再診共通
① 救急の患者
② 国の公費負担医療制度の受給対象者

医療機関が「特別の料金」を求めなくてもよい患者(B)
初診
④ 救急医療事業、周産期事業等における休日夜間受診する患者
⑨ 労働災害、公務災害、交通事故、自費診療の患者
⑩ その他、保険医療機関が当該保険医療機関を直接受診する必要性を特に認めた患者(※急を要しない時間外の受診、単なる予約受診等、自己都合により受診する場合を除く

制度案内リーフレット Q&A Q6
(A)(B)は後の説明のために当方が記載

救急の患者はA①。「特別の料金」を求めてはならない患者と扱われる。
しかし、救急でない場合の救急車利用をA①ではなくB⑩と扱い、さらにB⑩の除外規定によって「特別の料金」を求めることとしたという話だと思う。

メーテレの記事には、「紹介状を持っている場合や公費負担医療制度の対象者などは、対象外」とある。紹介状を持っている場合は、選定療養費のもともとの条件「紹介状を持たずに外来受診した患者」でなくなるため、徴収の対象外となる。また、公費負担医療制度の対象者は、A②により徴収の対象外となる。

中京テレビの記事には、「救急搬送でも紹介状があったり、交通事故や労働災害など、払わなくてもよい場合もあり」とある。交通事故はや労働災害などは、B⑨に相当する。Bは「特別の料金」を求めなくてもよい患者となっており、求めてもよい、その判断は各医療機関で行うということになりそう。

選定医療費の対象となる病院

リーフレットに、以下の3種の病院が「特別の料金」の対象となると記されている。

  • 特定機能病院

  • 一般病床200床以上の地域医療支援病院

  • 一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関

救急車でなくとも選定療養費の支払いが必要となる病院が、今回あるいは今後の対象となり得ると考えていいと思う。済生会松阪総合病院松阪中央総合病院松阪市民病院のいずれも、各医療機関のホームページ上で、選定療養費の支払いが必要となる病院だということを示している。

入院加療という基準

ただし、救急車を本来必要とするものだったか、時間内外来受診するべきケースだったかという判断は難しい。その基準を入院加療の有無と考えると、以下のようなものが想像できる。先頭の2例は、つぶやきにも書いたもの。

  • 新型コロナウィルス(初期型)の初期症状

  • インフルエンザ

  • 尿管結石

新型コロナウィルスの初期型は、血中酸素濃度と自覚症状に乖離があることが問題となっていたと思う。変異および治療方法の確立等により強く言われなくなったが、重症度と自覚症状が相関しないケースがあることは、救急医療において考えておくべきことと思う。

そして、新型コロナウイルスは、ヒトコロナウイルスの一派にすぎないこと。数年後に別種が再来することは十分にあり得る。

次に、新型コロナウイルスの頃に言われたのが、医療従事者と一般人との間の、重症度の捉え方の違い。入院加療を必要とせず、自然治癒するようであれば、40度の熱があろうが軽症。そこまでの熱がなくとも、肺炎が進行しているなど、入院加療なしには命の危険があれば中等症あるいは重症。このあたり、次の節で補足する。

最後に、尿管結石は「痛みの王様」とまで言われ、失神する人もいるほどのもの。しかし、入院率は高くなく、ほとんどは自然排石狙いで3週間ほどの様子見だと思う。さすがにこれは、救急車でなくても良かったとは言われないと思う。

そのあたりを踏まえれば、入院加療を必要とする場合を有料と言っても、一般人に区別できない程度の症状があれば徴収免除、おおよそ救急車の不適切利用と一般に認められるケースに限定した運用となるのではと思う。

緊急度判定プロトコル

救急医療においては、重症度と緊急度という異なる尺度での捉え方がある。これらは「救急現場の緊急度判定の導入及び運用手引書」などに書かれている。

 緊急度とは、時間経過が生命の危険性を左右する程度のことである。緊急度とは重症化に至る速さ又は重症化を防ぐための時間的余裕を表しており、時間の経過による症状の変化の度合いに着目した概念であるのに対し、重症度は時間の概念を含まないものである。

救急現場の緊急度判定の導入及び運用手引書 p.1

この緊急度のあたり、どうやら緊急度判定プロトコルとして公開されているようだ。最新はver3と思われる。

一般人視点では、「家庭自己判断」のp.3にある緊急症状を覚えておき、これらに該当する場合は即座に救急車、それ以外なら次節「救急電話相談事業(#7119)」に頼るのがいいと思う。そもそもp.4以降が一般公開されていないようなので、判断のしようがない。

おそらくp.4以降は、「119番通報」のp.9以降にリンクしているものと思う。しかし一般人に覚えきれる量ではない。

救急電話相談事業(#7119)

明らかに救急車を呼ぶにふさわしい場合は、救急車を呼べばよい。しかし、迷うような症状のときに相談できるところはないか。それが救急電話相談事業(#7119)にあたる。

しかし使う機会もないため、なかなか番号を覚えられない。

なお、道路緊急ダイヤル(#9910)は、道路上の野生動物の死骸の報告でよく使うので覚えている。

まとめ

原典の確認が重要
原典の質の確認が重要


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