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「きせ」って何?

あつらえの和服は洋服の「ステッチ」のように、生地を繋いでいる縫い糸や縫い目が堂々と見える作り方はしません。

生地を繋いでいる縫い目や縫い糸が表に覗き出ているのは美しくないという視点から、
縫い目を生地の折り目で隠すように処理しています。このことを「きせをかける」といいます。
和裁独特の手法です。

縫い目と折り目の間の巾が「きせ」
表からは折り線で縫い目が隠れている

この縫い目から折り目の間の分量を「きせ」と呼んでいます。折る分量が少なすぎると「きせが浅い」または「きせがない」と呼ばれ、
多すぎると「きせが深い」とか「きせが多い」と呼ばれます。

浅い「きせ」
深い「きせ」

きせの深さは各部分で適度な量がだいたい決まっています。浅いきせをかける時、ギリギリを攻めすぎると縫い目が割れてしまいます。
生地の扱いとこて使いには技術が必要です。

「きせ」はきものの持つ美しい直線美を際立たせる役目もあると思っています。その下支えとなる縫い目は、手作業であってもやはりまっすぐが望ましいのだと思います。
この「なめらかに、まっすぐ縫う」ことは、わたしにとって一生の修行です。

このように、「きせ」をフル活用する和裁ですが、例外もあります。

内揚げの縫い代を脇縫いが横断する部分などは生地の重なりが多く、折り返したり、きせをかけると厚みが出て、プレスされたときにアタリが出やすいため、縫い目を割ってたたむという仕立て方もあります。
着用時には隠れてしまう場所なので、美しさを損なうということはなく、畳んだときも布の座りがいいので、厚みの出る部分では
わたしはこの方法を採用しています。

よい仕立てをするには、
縫う、くける、折る、あてる、しごく、留める、おさえるなど、
一連の動作が密に連携して、流れを作ることが大切。なので、ひとつの作業だけが優秀でもいけないのだなと
最近はよく思います。


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