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心のノイズキャンセリング機能について

こんにちは。
あなたの人生のエキストラ、よくいる佐藤です。イヤホンは基本的に片耳しかつけません。

本記事に至るいきさつ

ヤギの記事を書いた際、学生の頃の先輩からこんなリクエストを頂いた。
「ノイズキャンセリング機能はどうやって身についたのか是非noteで教えてほしい、気が向いたら」
気が向いたので、ぜひ書かせて頂こうと思う。

父の長話、ふたたび

私の父は話が長い。
これ無しでは今回の記事は書けない。先日上京した父と二人で飲み歩いた際、3時間弱滞在したカラオケバーで最後の1時間強は歌わずにほぼ1人で話していた。相席してお話を聞いて下さったご夫婦にはこの場を借りてお詫びを申し上げます……。

ちなみに私の経験上、1時間強のひとり語りならば短い。父も丸くなったものだ。
「心のノイズキャンセリング機能」は2~3時間超の長話を聞く中で身に着けてきた。

聞いていない話について堂々と語る方法

「心のノイズキャンセリング機能」は「ノイズ」を取り除くものである以上、主音声はとらえておく必要がある。ここでいう主音声は自分の思考のことである。つまり、聞いている話はすべて「ノイズ」として処理してよい。

さて、今年私が読んだ本にピエール・バイヤール著「読んでいない本について堂々と語る方法」がある。結構なベストセラーらしい。
流し読みしただけのこの本について堂々と語らせてもらうが、書物と適切な距離を置くことで、その書物が全体におけるどのポジションにあるかが分かりやすくなる、みたいなことを書いていた気がする。書いていなかったらごめんなさい。

人の話においても、特に長話の場合ほど、距離を置いて何を話したいのかをつかむ必要がある。そこが分かれば細かいところは聞き流してもよい。これに気づいたのはおそらく高校生の頃だったと思う。「心のノイズキャンセリング機能(ベータ版)」と呼ぶことにしよう。

もっと言えば、父の長話の場合、重要なのは眼前に聞き手がいるということであって、話そのものに自分の思い出のアウトプット以上の情報量はない。これに気づいたのは学生時代父と喧嘩して約2年後に仲直りした頃のことだった。ここに「心のノイズキャンセリング機能」が完成した。

ノイズキャンセルしている間にやるべきこと

実際に「機能(長いので略した)」を運用するにあたり、最も避けるべきは「聞き流しているなこいつ」と思われることである。

そのためにやるべきことがいくつかある。

1.つねに相槌はうつ
2.視線は眉間のあたり
3.欲していそうなリアクションはとる
4.適当に質問する

詳細を説明しよう。

1.つねに相槌はうつ

対面のコミュニケーションはあくまで双方向なものである。長話を聞く際は、その実一方通行になっているのだが、双方向っぽく見せるために相槌を繰り返す必要がある。方法は簡単で深々とうなずきながら「はい」「うん」「なるほど」を繰り返し挟めばよい。多すぎても印象がよくないので1文につき1回くらいうなずくのがちょうどいいと思う。声を出す相槌は3文に1回くらいでいい。

2.視線は眉間のあたり

よそ見をしていると「話聞いてない感」がより醸し出されてしまう。そのため通常の会話のように顔をよく見ることが重要だが、目を合わせ続けるのは意外と疲れる。眉間を視界の中心としてぼーっと顔全体を眺めよう。難しい場合は顔のしみやほくろを数えてもよいし、似顔絵を描くとしたら各パーツをどう表現するかなど考えるのも楽しいと思う。とりあえず顔面が相手を向いていることが要である。

3.欲していそうなリアクションはとる

父の長話の良いところはリアクションを挟む余地がある程度用意されているところだと思う。これは普通に話すうえでも重要だが、「リアクション待ち」をやりすぎるとそれはそれでくどいので、さじ加減が難しい。
一方で、「機能」使用者は相手のトークテーマに対してざっくりと喜怒哀楽を表情と声に出せばよい。マスク社会においては眉毛、マスクが無ければ口の形で簡単に表現できる。とりあえず、表情を変えるのが得意!という人以外は眉毛を動かす練習をしよう。表情が作りづらいほど話のオチが微妙な時などには、ボディランゲージで顔を見せないように感情を表現するという上級技術もある。

4.適当に質問する

話し好きな人間は正直、リアクションさえとっていれば満足してずっと話してくる。その上で適切な質問があると聞き上手を演出できる。なのでこの項目はそこまで親しくない上に話が長く、無視できない程度に立場が上の人(具体例は控える)を相手にするときに活用されたい。
質問といっても難しいものでなくて良い。話したがりはたいていの場合、賢すぎる聞き手があまり好きではない。「いつ頃のお話なんですか?」「その頃の〇〇(場所)はどんな感じだったんですか?」くらいがちょうどよい。早く話を終わらせたいばかりに「そのあとどうなるんですか?」みたいな結論を聞き出そうとする質問やオチを先読みして口に出すのは得策ではない。相手の話をコントロールするのではなく、相手が気持ちよく話している時間をそのまま自分のために使う手段が心のノイズキャンセリングである。

「機能」が身につくまで

上記を心得ていただければ相手の長話中に自分勝手な思考にふけることは可能である。ただし、一定期間の訓練は必要であると思う。大人になって身につけるのはそれなりに大変かもしれない。

古今東西、幼少期から特殊な環境に身を置き、名を成した者がいる。実家が体操教室のレジェンド内村航平氏、北斎の絵をスタンダードとして育った葛飾応為、生まれたころから一流の宮廷音楽に囲まれていた天才モーツァルト、シリコンバレーにほど近い場所で電子工作に触れてきたスティーブ・ジョブズ……

そして、幼少期より父の長話を聞いて「心のノイズキャンセリング機能」を開花させたのが私、よくいる佐藤である。

そのため、私のような特殊な環境で育まれた逸材から、キャンセリング凡人のあなたへ、どれくらいで身につくとか、1日どれくらい長話に触れろとか、無責任なことは言えない。あなたのペースで、あなたのやり方で、身につけていただきたい。

最後に(重大な副作用)

以上が「心のノイズキャンセリング機能」習得に至った経緯と、具体的な運用方法である。
ヤギの記事でも書いたが、私は父を家族としてきちんと愛しているので長話以外の場合は「機能」をオフにしてちゃんと会話をしている。

一方で、「機能」はある程度オート仕様でもある。そこそこ重要な話の最中でも気がつくとオンになっていて話が聞けていないということがまれによくある。身につける前に知っておきたかった副作用だ。

つまり、この記事を要約すると、
私は相手の話が長い場合、ほとんど話を聞かずに考えごとをしています。
という罪の独白になる。

あと、長話への対応方法がこの長さになるあたり、私も「機能」を使われる側になる素質がある。リアルでは気をつけます……。

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