記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【映画感想】 『犬王』 アニメから知見が広がることも多々ある

こんにちは。すうちです。

三連休ですね。といっても、私は普段とあまり変わらない週末を過ごしています。

今回は、昨年話題になって私のいつか観たいリストにたまってた(そして忘れてた劇場アニメ「犬王」を観た雑多な感想です。

ーーー
タイトル画像:midorinさん

はじめに

あらすじ

室町の京の都、猿楽の一座に生まれた異形の子、犬王。周囲に疎まれ、その顔は瓢箪の面で隠された。ある日犬王は、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会う。名よりも先に、歌と舞を交わす二人。 友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。「ここから始まるんだ俺たちは!」壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?歴史に隠された実在の能楽師=ポップスター・犬王と友魚から生まれた、時を超えた友情の物語。(C)2021 “INU-OH” Film Partners

Prime Videoリンクより引用

以降、ネタバレを含みます。


『犬王』 感想

映画スタッフ

映画を観た後に知りましたが、スタッフが豪華です。

監督は、湯浅政明さん。制作はアニメ「平家物語」や「映像研に手を出すな」などを手掛けたサイエンスSARU

主人公・犬王の声(歌唱)は、アヴちゃん(女王蜂)。もう一人の主人公・琵琶法師の友魚ともなは、森山未來さん。

脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などを手掛けた野木亜紀子さん。
キャラクターデザインは、漫画「ピンポン」「鉄コン筋クリート」の松本大洋さん。音楽は、大友良英さんでした。

各分野で実績ある方々が映画にたずさわっているのも作品の質に繋がっているように思えました。


全体所感

当初アニメ完全オリジナルと思ってましたが、犬王は実在した人物で室町時代の歓阿弥と同時代に活躍した能楽師だそうです。しかし、文献など記録がほとんど残っておらず、謎の人物だったというのも興味を惹かれます。

アニメは、湯浅さんの想像や大胆な発想が加えられていると思いますが、実在した人物をモチーフに描かれているというのは驚きでした。

犬王はある理由によって、異形な姿(異様な目鼻立ちや手足、突き出た背中)で生まれて、能楽師の父や周囲からうとまれてたのもあり、独学で覚えた踊りや芸は兄弟をしのぐほどであっても、常時面をつけて暮らし、一見すると幼い頃から辛い人生を歩んでいるように思えました。

ただ、犬王は、自分の外見をさほど気にする様子もなく、ある意味生きてく力強さやたくましさすら感じました(自分だったら、こんな前向きに生きれない)。

もう一人の主人公・友魚は、幼少期に平家の三種の神器の探索に関わったことから、呪いで父を失い、本人も失明するという犬王に負けず劣らずの過酷な人生にありながら、同じく淡々と運命を呪うこともなく前向きに生きていて、やがて琵琶法師となり犬王に出逢います。

犬王は異形な姿ながら友魚は盲目なため、犬王と偏見なく語らい二人は意気投合。それぞれの歌や踊り、琵琶語りの才能を発揮し、今までにない独特のスタイルを確立して絶大な人気を獲得していくというストーリ展開です。

昨年アニメ「平家物語」にハマって、この犬王も時代背景や同じ琵琶法師が主人公という点も何か似てるなと思っていたら、そもそも犬王に関する数少ない文献は、平家物語の一説にあるらしく、「平家物語」の続きを観れたような感覚でした。


古典にプラスアルファの要素

ストーリは能楽師・犬王と友魚の人生を辿っていく形で(仮に古典そのままでは退屈しそうな要素も…)湯浅さんの独自の世界観で上手く重ねられたファンタジー要素が物語に惹き込んでいくように思えました。

途中犬王は、異形な姿から平家の呪いを成仏させることで、少しずつ人間の姿に変わっていく過程や当時のポップスターだった??と言われる犬王をロックスター的な扱いに仕立てたアレンジや能楽の舞台をミュージカル風に描くなどの斬新な発想も個人的に魅了されました。


秀でること・自分を貫くこと

犬王と友魚は強い友情で結ばれ、次第に人気が高まるにつれ、その影響を危惧する足利義満に次第に目をつけられるようになります。

最終的に、二人が立ち上げた一座も強制的に解体させられ、犬王は義満の指示に怒りを覚えつつも過去を捨て義満に仕え、寵愛される人生を選びます。

一方、友魚は最後まで自分の意志を貫き通した結果、斬首されてしまう結末は二人の人生が対照的に思えました。

正直この時点では、後味悪い終わり方をするのかと思いましたが、ラストで二人が時空をこえて出会う場面で以前の二人のように琵琶の語りに合わせて踊る姿を観れたことは、幾分救われました。

いつの時代も権力者の力には逆らえず「どんなに秀でた才能もその人の選択次第で結末が変わる」そんなことを意味しているのかなと思いました。


最後に

先日読んだ本で(特に日本は)「学生まではいかに自分を目立たなくし、周りと歩調を合わせる能力が求められるのに対して、就職活動や社会に出ると、周りより優れていることをアピールする真逆の能力が必要」という一節があり、犬王の話と少し結びつく所もある気がしました。

ちなみに、映画のおすすめ度について

映画評価サイトでは、高評価も多い反面、真逆の意見もあったりして、観る人によって評価が分かれる作品かもしれません。

ハリウッド映画的な盛り上がりやエンタメ要素は少なく、淡々とした物語の展開や一部残虐なシーンもあるので、その辺も受け手によって印象が変わると思います。

個人的には、平家物語の続きを観れた感覚と今までほぼ知識ゼロに等しかった能楽という分野に少し興味を持てたので、観て良かったと思っています。

もし興味がある方は、Prime Videoなどで無料で視聴できます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


この記事が参加している募集

アニメ感想文

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?