【感想】悪い芝居vol.28『愛しのボカン』

初めまして、佐々木と申します。
悪い芝居さんの演劇『愛しのボカン』を配信で観劇したので、感想でも書いてみようと思います。ネタバレへの配慮は出来ていません、申し訳ない。
あくまでも自分用の備忘録として書いています。初見の衝撃のまま、繰り返し見ないままに書いているので、辻褄が合わなかったりするところは見逃してやってください。



感想の前に、少しだけ。


本編の感想を書く前に、少しだけ私のことを書いておこうと思います。
舞台を観劇したことはほとんどなく、友人が所属している劇団の舞台を1度見に行った程度、後は小学生の頃の芸術鑑賞くらいでしか舞台芸術というものに触れたことがありません。
そんな私がなぜ、『愛しのボカン』を見ようと思ったのか。それは、この作品に出ている俳優さんのファンだからです。
この舞台で明日野不発を演じていらっしゃる赤澤遼太郎さんのファンなんです。まぁファンといっても最近気になりだした程度の所謂新規です。
この辺の話は追々機会があれば書くとして。
そんな赤澤さんが出演される舞台と聞いて、気になってはいたんです。ただ、これまで舞台というものに関してはほとんど触れたことがなく、最近見ているのも2.5次元舞台だったので少しだけ抵抗があった。というか、敷居が高く感じていたんです。
2.5次元舞台というものは、元となる原作があって、そこでキャラクターについての情報が得られる。それを舞台に投影する。そんな作品だと思っています。ただ、エンタメの要素が強いような気がしています。だからこそ私のような初心者でも見やすい、取っ付きやすいというのはメリットでしょう。

2.5次元舞台というジャンルそのものについて話すとより長くなってしまうのでなぜ私が配信終了の前日に滑り込むような感じでこの作品の配信チケットを買ったのかについてもう少しだけ書いておこうと思います。
配信があると聞いて、ずっと気になってはいたんです。原作があるキャラクターではない役を、彼がどう演じるのか興味があった。
そういえば、配信が始まる少し前に前述の友人と食事をする機会があって、その時に『悪い芝居の芝居は面白いよ』と言われていたのも気になっていた要因かもしれません。
それなのにどうして配信終了の前日まで観なかったのか。観た後の私が書いているので記憶があやふやですが、たぶん雰囲気に圧倒されていたんだと思います。公式のHPやSNSで見ることのできる写真が全部カラフルというか、派手で。最近見ている2.5次元舞台の方が髪型も髪色も服装もよっぽど派手なのに、何だかあの雰囲気に踏み込む勇気が出なかったんだと思います。


やっと本編、感想書きます。


前置きが随分長くなってしまいました。喋りすぎちゃうのが私の良くないクセです。
最初は本当に役者さん目当てだったんです。もしも、万が一、関係者の方がこの記事をご覧になっていたらごめんなさい、怒らないでください。
ただ、観劇して思うことは、この作品に今出会えて良かったということです。
ボカンとは、演劇とは、自分とは、そんな様々な疑問が少し解消されたような、それでも全ての答えを得られるわけではなく、自分で考える余地を残してくれているような、そんな感じです。

ストーリーの話をする前に、どうしても話したいことがあって。
衣装が凄く素敵でした。色んな服を1つにしたような、継ぎ接ぎみたいな、オリジナリティ溢れるデザインが刺さりました。
それと、次々と場所や時間軸が変わって、同じ役者さんがそこに居るはずなのに別の人に見えたり、追い付かなくなることもなくすんなり飲み込めたり。脚本や、役者さんの力なのかなと思いました。素人なのでよく分かってませんが。

最初は何が何だか分からない状態で観ていました。独特な世界観に圧倒され、カラフルで、チカチカして、沢山の人が舞台に立っていて。どこを見ればいいのかも分からず、ただ明日野くんを追っていました。けれど、物語が進むにつれてどんどん引き込まれ、ドキドキしていきました。訳も分からないまま見ていた部分に関しては後でもう一度見ようと思っています。配信のいいところですね。

誰もが無名の人間だけれど、確かにここに居る。自分が何者か分からないまま生きているけど、自分という人間は確実にここに今も生きている。
本当にうろ覚えのまま書いているので違うのは分かっているのですが、こういう台詞が何度も出てきて、それが凄く印象的でした。自分とは何なのか、どうして生きているのか、自分の中で何かが燻っているような感覚。私には結構な頻度であるんです。でも『そうそれ!』という回答は誰からも得ることが出来なくて、もやもやを忘れるまで引きずってしまう。この作品を観て感じたのは、それはそうだなというストンと納得できるような感覚でした。そりゃそうでしょ、だって自分だもん。って少し思えるようになりそうです。

『いつか』なんてものはない。今無いものは未来にも無い。
今を生きているからこそ、『いつかこうなれば』『いずれこう出来れば』なんて思うこともよくあるけれど、今無いものは未来にも無い。そうハッキリと言われてしまうとは思いませんでした。この他にも、やりたいと思った時点で始めていないといけないというような台詞もあるのですが、心の中で燻っている私がギクリとしてました。

思わず誰かに話したくなるような、ボカン。
この作品は観た後に必ず誰かに話したくなるような作品だと思います。だからこそボカンなんだと思います。かくいう私も誰かに言いたくてこの記事を書いているわけなんですが。それくらい鮮烈で、印象的で、記憶に残る作品だと感じました。

いつまでも変わらず、ここに居る。太陽の塔のように。
ラストの明日野くんのこの台詞がとても残っています。『愛しのボカン』という作品の中で生きる彼だからこその説得力があって、どことなく安心感というか、そういうものを与えてくれる台詞だと感じました。


印象に残ったシーンについて

個人的にめちゃくちゃ印象に残っているのが、明日野くんの過去シーンです。
書き順を理由に否定されたことをきっかけに先生の話は耳を塞いで聞かなかった12年間。でもそれで勉強が出来ないと先生の方が正しいことになってしまうから必死に勉強する。
この明日野くんの行動が、凄く分かるんです。芯を曲げないというか、曲げたくないからこそどうにかしないとって考えるのが凄く分かる。勝手に自分と重ねて見てました。人間って生きていくうちにある程度妥協とか、流すっていうことを覚えるんだと私は思っているのですが、明日野くんはそのまま大人になった感じ。とても純粋で、真っすぐ。そんな印象を持ちました。私は生きていくうちに適当とか、程々っていうのを何となく覚えて今何とか生きてる感じなんですけど、否定されると耳を塞ぎたくなる気持ちに共感してました。
そんな彼が大学生になって演劇と出会う。ちょうどいいタイミングでたまたま声をかけられたのかもしれませんが、彼にとってはこれ以上ない出会いだったんだと思います。ひたむきで、ただただ芝居をする。役として生きる。傍からは空回りしているように見えたり、大人の世界では鬱陶しがられたりするのかもしれないけれど、ボカンではそうではない。やりたいように出来る。ボカンに入ってからの明日野くんはとても生き生きとしているように見えました。


他のちょっとした感想とか、好きだったところとか、まとめとか


メタ的なネタがあるのも魅力かと思いました。喫茶店で浮気をした彼に問い詰める彼女の芝居をしていた時の台詞にはめちゃくちゃ笑いました。ピザ…ドミノ…CMですよね…ww
あの作品の世界観に合っていればある程度のメタ的発言は許される、リアルさが出ていたなと感じました。あとは芝居の中なのに役者さんが素で笑っている場面があるのもいいなと思いました。舞台に立たれている以上はお芝居なのかもしれませんが、あの素っぽい笑いに、ボカンのメンバーの日常というか、人間らしさが垣間見えて良かったです。

あと、どこからが舞台なのか分からなくなっているのも素敵だと思いました。私がそういう演出が好きっていうのもあるとは思いますが、演劇をしようって話になって、ラストシーンが始まった時に、ここまで全部ボカンの演劇を見ていたんだって気付いて、鳥肌が立ちました。明日野くんを主軸としたボカンの人たちの過去や考えを見ていると思っていたのに、全て劇中劇だったのか。だからこそ、『これは事実を基にした物語』という何度か出てくる台詞があったのか。本当は違うのかもしれないけれど、そう感じました。
カーテンコールでも、役者さん本人の名前は出てこなくて、役として挨拶をして役として退場する。徹底されていてすごく好きでした。

自分のことばかり書いていて感想と言っていいのかが疑問に思えてきましたが、今の私が観ることが出来て良かった舞台だと思います。何らかの感想を書く度に、自分のボキャブラリーの貧しさが露呈して本当に嫌になります。もっと本とか読まないとなと思う。伝えたいことは確かにあるのに、上手く言葉にできなくてすごくもどかしい。
漠然とやりたいことはあるのに行動できていない、毎日同じような日々の繰り返しで、自分は何のために生きてるのかななんて考えることが多くなっていました。そんな中でこの作品に触れて、少し自分のことが見えたような気がします。やりたいと思った時には始めていないと、今無いものは未来にも無い、そんな台詞が自分に言われているようで、やりたいことをやりたい気持ちが増幅しました。出会えて良かった、ありがとう、愛しのボカン。

舞台初心者の、知識もない、とりとめのない感想でしたが、自分のためにという前提なので文字にして残しておきます。
いまいちまだ理解しきれていない部分もあるので、配信終了までに見返そうと思います。
配信で舞台を観て、実際に劇場に行きたくなりました。あの空気感を自らの肌で感じたい。そう強く思いました。
地方民なので東京まで頻繁に行くことは難しいですが、近くの劇場で演劇がある時には足を運んでみようと思います。
ここまで読んでくださった方が居るのかは分かりませんが、拙い感想にお付き合いいただき本当にありがとうございました。




赤澤遼太郎さんについて

ここからは私がこの作品を知るきっかけになった赤澤遼太郎さんのことについて書きます。
舞台についての感想はもう書ききったので、興味のない方はページを閉じてくださいね。
突然なんですけど、私、赤澤さんの目が好きなんですよね。大きくて、キラキラしてて、真っすぐないい目をされているなって思います。この作品ではそれが余すところなく発揮されていて良かったです。ひたすらに演技に向き合う、役として生きる明日野くんが、とてもキラキラとした目をしていて、人を惹きつけるなと感じました。過去シーンではどこか斜に構えたというか、物事全てに興味がないような、光の入らない目をされていて、明日野不発というキャラクターの人間らしさが出ていたように思います。
春原さんがボカンにやってきた歓迎会のシーン、めっっちゃ可愛くないですか!?お水渡してあげたり、話を聞いている時に足をぶらぶらさせたりしているのがもう…めちゃくちゃ可愛かったです……
あとラストの捌け際、赤い衣装がすごくボリュームがあってペンギンみたいな歩き方になってたのもツボでした。
それとリュックサックがめちゃ似合う。普通に背負っているのも大学生っぽさあって好きでしたが、前に抱えている時が特に良かったです。私の言葉では上手く表現できないけどめちゃくちゃ良かった。
これまで、赤澤さんが出演されている舞台って2.5次元のものしか見たことがなくて、原作のない舞台を見るのが初めてだったのですが、役者さんってやぱり凄いんだなぁと改めて実感させられました。だって、舞台の上には明日野不発が居るんだもん。当たり前だって思われるかもしれないけど、彼の作品を何作か見て、全部違う人間に見えるから本当に凄いなと思います。表情から立ち方、仕草まで全然違う人みたいで、魅力的です。
自分はまだまだだから、もっと色んな役と出会って、成長したいというようなことを様々な場所で仰っていて、これからどんな風に変化していくのか、期待しかないです。応援したくなる、誰もを惹きつける、とても魅力のある方だと思っています。


ボカン


土曜の夜に、とても良い刺激を貰うことが出来ました。
私は平日休みで明日も仕事なのですが、いつもの景色も今日より少し色鮮やかに見えそうな気がします。
私もボカンして生きていきたい!!

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