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消費における「セレンディピティマーケティング」〜入門編〜

awoo Japanの吉澤です。セレンディピティマーケティングを提唱しています。僕らのサービス「nununi」(ヌヌニ)では、偶発性消費(セレンディピティ消費)を誘発させるAI技術を展開している、台湾発の会社です。

この「セレンディピティマーケティング」のテーマはシリーズ化して色々記事を出していく予定ですので、ぜひフォロー&マガジン登録もよろしくお願いします!

セレンディピティって何?

セレンディピティとは何か。まずはその意味をWikiから引用します。

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。 -Wikipediaより

思いがけず、ふとしたきっかけで何か幸せがやってくるような感覚に陥ることを、セレンディピティと呼びます。

また、このセレンディピティが発生するには、3つのステップが必要だとされています。脳科学者、茂木健一郎さんのnoteから引用してみましょう。

偶然の幸運であるセレンディピティに出会うためには、3つの「A」を大切にしなくてはいけない。
まずはAction、すなわち行動。
次にAwareness、すなわち気づき。
そしてAcceptance、すなわち受容。

行動し、何かに気づき、そこから得た何かを受け入れる。この3つのステップによってセレンディピティが生まれるとされています。

この行動を「消費」という観点に当てはめてみましょう。そうすると、セレンディピティマーケティングの中身が徐々に姿を表します。小売業界で、このセレンディピティが巧みに使われている例としてあげたいのが、「ヴィレッジヴァンガード」です。みなさん、ビレバンの店舗をよく想像しながら、以下の解説を読んでみてください。

第1アクション:行動

まずは「行動」です。ヴィレッジヴァンガードって、よくショッピングモールとかに入ってますよね。みなさんが土日とかにどこか買い物に出かけたとき、ふらっと立ち寄ったこと一度はあるのではないでしょうか。

たくさんの雑貨がごちゃっと陳列されていて、あのお店の中だけ異空間のような雰囲気を醸し出しています。ついついふらっと、「何があるかな」「何か面白そうなものが見つかるかな」といったワクワクがありますよね。そして、ついついふらっと「何かを見つけようと店内に足を運ぶ」と思います。これがセレンディピティ発生の最初のステップ、「行動」です。

この行動において重要なポイントは、「行動する側が、自らの意思で何かを探そうとすること」が重要です。

例えば「タイムセール実施中だからとりあえず入って!」と言われて店内に入る。この段階ではセレンディピティは生まれません。なぜならその行動は「受動的」だからです。どこかのタイミングで、何かしら行動する側が「能動的」になることが重要です。上の例だと、「とりあえず入ったけど、まあせっかくだから何か探してみるか」といったレベルでも構いません。とにかく、大小ともあれ、何かをつかもうと動くことが大切です。

ちなみに、行動の意識が強ければ強いほどセレンディピティの発生確率も高くなると思いがちですが、実はこれは議論の余地があると思っています。セレンディピティにとって大切なのは「思わぬ発見」です。つまり第2ステップの「気づき」が、セレンディピティ発生においては重要な鍵を握ります。

みなさんも経験ないでしょうか?ふらっと立ち寄ったお店、あるいはふらっとみていたサイトで、「何これ!」と思わぬ発見をして、一目惚れして購入した経験。この場合、行動の意識レベルは弱いにも関わらず、偶然の出会いがあったわけです。そこに行き着くためには何かしらの行動が伴っているわけですが、必ずしも行動の意識レベルが高いから発生したわけではないですよね。これが「確率」としてどう違ってくるのか、というのはもう少し研究が必要になります。

第2アクション:気づき

さて、行動を起こしたあとは、「気づき」です。このパートが最も重要です。ここでは、先ほどの行動における「能動的な意識」とは逆に、「受動的に何かに出会う」という体験が必要になります。

どういうことかと言うと、消費の観点でいえば、探している側が「何かに出会ってしまう」という体験が必要になります。「〜〜を探しにきたけどついつい違うものを買ってしまった」とか「なんか楽しそうなものないかな〜と思っていたら、めっちゃ面白い本見つけちゃった」とかのように、本人の意思とは裏腹に、ある意味で期待を裏切る発見がセレンディピティにおける「気づき」となります

心理学的にいうと、その裏には無意識の購買動機が眠っているはずです。一見、あまりにも趣味嗜好の違うアイテムだったら一目惚れの確率は当然低くなるはずです。しかし、「かわいいものが欲しい」といったかなり粒度の粗い購買動機のほうが、むしろセレンディピティの感度が高くなる可能性があります。「今まではジブリ系のぬいぐるみは興味がなかった。けど、ビレバンでトトロのぬいぐるみをみた時、すごくかわいいと感じて、おもわず買ってしまった」みたいな体験です。

僕の例で言うと、こないだ思わずBOSEのオーディオサングラスを買ってしまいました。僕の中のセレンディピティです。経緯をここに書こうと思ったのですが、ふと別の記事で体験談として語ったほうが面白そうと思ったので、また別の機会に書きます(笑)

話を戻すと、要は「かわいいものが好き」というざっくりとした嗜好性があれば、その人が、その人自身の価値観で「かわいい」ものを無意識に探すアンテナを張っているのです。それが「行動」であり、その結果生まれるのが上記の「気づき」=発見です。

最終アクション:受容

そして最後に、「受容」が待っています。これは、出会ったもの、出会ってしまったものを受け入れるかどうか、消費でいうとシンプルに「買ったかどうか」ということになります

受容するには、「買う」というモチベーションに至ったかどうかが重要です。もちろんセレンディピティのレベルが高ければ「一目惚れして買う」でしょうし、あるいは出会った瞬間、その場でお金を持ってなかったとしたら、あとで家に帰ってからAmazonとか楽天で検索して購入する、という流れもありえますよね。どちらにせよ、一度見つけたら頭から離れない状態。これが受容レベルマックスの状態です。

マーケティングの観点で考えると、ユーザーがセレンディピティに誘発されている状態をどうやって捉えるのか、どうやったらセレンディピティを意図的に起こせるのか、というのが研究テーマになりそうです。

セレンディティの感度のレベルも人によって違うと思います。出会ったアイテムとの関係性があまりにもその人から「遠い」場合、すなはち購買動機の粒度が粗ければ粗いほど、「出会ってしまった」という感激の度合いも高まります。

例えば僕の例でいうと、昔ロードバイクにハマったことがあるのですが、それは、ふと街中を走ってるロードバイクをみて、一瞬で「あ、かっこいい!」と思ったのがきっかけ(気づき)でした。それまで一切ロードバイクとは無縁でしたし、それに関する会話をしたことがありません。しかし、僕の中にはおそらく「かっこいいスポーツがしたい」という動機があったはずです。そして無意識にそれを探していた(行動)のだと思います。

この動機は粒度がかなり粗いですよね。もっと細かくすれば、「なんか乗り物に乗りたい」とか「自転車が欲しいけどどんな種類があるんだろう」とかもっとロードバイクに近づいてくるんですが、もしそこまで購買動機が狭くなると、おそらくセレンディピティのレベルも落ちるはずです。なぜならすでに具体的な「乗り物」「自転車」というキーワードが浮かんでるからです。こうなると「選択する」という手段になります。何かを選択する場合、すでに頭の中でイメージが浮かんでいる状態なので、雷が落ちるほどの「偶然の出会い」とまではいかないでしょう

それが、「なんかかっこいいスポーツがしたい」くらいの動機だったら、「そうか、ロードバイクという手もあるのか!」といった「ひらめき」に近いセレンディピティが誘発されます。

こうしたワクワク体験をどうやって体感させていくのか。どうやって作り出していくのか。おそらくマーケティングにとってこの課題は今後表面化していくと思われます。

Eコマースにおける偶発性消費の重要性

特にリテール業界、ECサイトにおける偶発性消費の重要性は高まっています。デジタルでの買い物は、実際のお店での買い物と比べると少し味気ない感じがしますよね。それはなぜかと言うと、シンプルに「偶発性」が低いからです。「新着商品」とか「特集」からサイトを閲覧していったり、「カテゴリーで検索」や「サイト内検索」で検索していくのが通常のサイトの行動だと思いますが、それって少し機械的ではありませんか?先に出した例のようにビレバンのようなお店は、ワクワク体験を消費者に与えているわけです。「どんな商品があるんだろうか」と期待に胸を膨らませるような体験が薄いため、「単なる買い物」「買いたいものをただ買う場所」という傾向が強いのだと思います。

もっと、ワクワクドキドキするような、その人の「無意識の購買動機」に寄り添った買い物体験を目指すべきであり、それが消費におけるセレンディピティマーケティングの第一歩になります。

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