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シナモンロールの匂い

まったく関係のない場所で、ある特定の匂いがするときがたまにある。ふと部屋に入ってシナモンの匂いがしたような気がした。もちろん、部屋にシナモンはない。
先日、婚約者が台湾に遊びにきたときに、一緒にシナモンロールを食べたのを思い出す。自分の部屋の景色が一瞬消えて、わたしは記憶のなかにひきずりこまれる。
わたしは再びカフェで婚約者と一緒にいる。シナモンロールの上にのったアイスクリームが溶けかけている。右隣には彼がいる。大きな窓からは光が入っている。
匂いがわたしに再び過去を体験させる。ベルクソンのいう「純粋記憶」の想起がこれかと感じた。現在の活動を止めてしまうほどの力をもつ過去の記憶。決して履歴書に書かれることのない記憶。

参考:戸谷洋志『Jポップで考える哲学』


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