『思想史講義 大正篇』山口輝臣/福家崇 感想

『思想史講義 大正篇』山口輝臣/福家崇洋編

おすすめ C
読み始めてからのスピード B
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総合 B-

明治〜戦前昭和の思想史を通覧する四巻シリーズの第一回配本の本書では、大正期に焦点を当てる。明治以来の「国体」の確立と文明化推進の動きはこの時期に変容し、現存する日本を改造し解放への希望を与える思想と運動が盛んとなった。国家主導だった文明化と「国体」の設定を、民衆の側から再設定する動きが広がり、知識人や運動家がその動きを担っていく。こうした大正期の多様な思想を15のテーマと11のコラムで、最新の研究成果と学術的知見を交えつつわかりやすく解き明かす。
 (筑摩書房 HP より)

感想 大正期の思想について、知るのに最適な本。私が気に入ったのは、帝大の授業風景や、阿部次郎の思想を中心に書かれた松井健人氏の「教養主義」、セルフディタミネーションという言葉が、朝鮮、ロシア、日本、それぞれで受け取られ方の差異を描く小野容照氏の「民族自決論」、東洋経済新報社の小日本主義の展開について述べた望月誌史氏の「小日本主義と自由主義」、コラムでは東京朝日新聞に載った投稿文「思想のワクチン」について紹介する藤原辰史氏の「パンデミック精神史の断片」。もし、大正時代を勉強するなら、その前にこの本を一読することをお勧めします。

注釈 評価の尺度
おすすめ:
たくさんの人に薦めたい A
最低1人は薦めたい人が思いつく B
薦めたい人が思いつかない C

読み返したい:
3年以内に読み返す A
死ぬまでに読み返したい B
もう読み返さないかも C

読み始めてからのスピード:
数日以内に読み終わる A
1週間以上1か月未満 B
1か月以上 C

総合評価
上の3つの評価を平均したもの。

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