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シナストリーでスクエアの相性悪いって本当なの?(サビアン占星術 / ポール&リンダ・マッカートニーPart.2)

前回の記事では、ポールとリンダを繋いでいたのは、ポールとジョンを繋いでいた「双子座27度−射手座27度」の軸であることを解説しました。

ポールとリンダのような「運命的な出会い」には、たった1本の軸だけでなく、たくさんの理由がホロスコープに示されています。

シナストリー:占星術で相性を見る手法

今回の記事では、ポールとリンダの相性の良さの理由を探っていきます。一般的には、シナストリー・チャート(相性図)で、ポールとリンダの天体に形成されるアスペクト(角度)を見ていきます。

シナストリーに関しては、鏡リュウジ氏の書籍が有名なのではないかと。

例えば、私の月と、あなたの月が、90度のアスペクトなら、120度
なら、180度なら、どんな相性になる?

ということが鏡リュウジ氏の書籍では、10天体の組み合わせごとに解説されています。

でも、それが全然当たらないケースも多々あるわけです。当たらない理由ってなんだろう?と疑問を持って、現状のシナストリー占星術を検証してみたいと思います。

実際のポールとリンダの相性は?

ホロスコープから相性をチェックする前に、実際にポールとリンダの相性はどうだったのかを、ネット情報から調べてみます。

リンダとポールは、ネットで調べる限りは、非常に仲が良かったようです。結婚生活は、リンダが死去するまで29年間続きました。

これはビートルズ解散後のポールの初ソロアルバム「マッカートニー」の1曲目「ラブリー・リンダ」。

46秒の短い曲ですが、歌詞は「髪に素敵な花を飾ったリンダが可愛い」だけ。完全なる惚気ソング。最後にはポールの悪戯な笑い声。ハッピーなヴァイブレーションが溢れまくってます。

これが、あのビートルズ解散後のソロアルバムの1曲目です。これだけでも、どれだけポールがリンダを愛していたか想像できます。

勿論、ポールのリンダ愛は、1曲だけにとどまりません。

画像:Paul or nothing podcast

この画像引用元のリンクはポールのファンサイトなのですが、ポールが書いた数々の曲の中に「リンダへの愛」が散りばめられていたことが力説されています。英語サイトなのですが、「なんでポールとリンダの素晴らしい愛は、ジョンとヨーコの影に隠れちゃってるんだコノヤロウ!(筆者意訳)」みたいな感じで始まる面白い記事です。

参照:Love Me Do: The Songs Paul Wrote For Linda – McCartney Article #11.

もうこれだけで十分なのですが、他のエピソードにも少し当たってみましょう。

"そのナンシーはポールの3番目の妻になるが、ポールの妻と言えば、ビートルズ解散のショックでスコットランドの農場に引きこもったポールを励まし、ソロ活動へと気持ちを上向きにさせたリンダが、ポールにとってもファンにとっても「長年の伴侶」として忘れがたい存在だろう。リンダはその後ウイングスのメンバーとなり、21世紀を迎える直前までポールに寄り添った。ポールが別々に寝たのは80年に日本で捕まって「ダーク・ルーム 」で過ごした時だけだったというほどの仲睦まじさだった。あくまでポール曰く、ではあるけれど。"

9月24日はリンダ・マッカートニーの誕生日、存命ならば77歳となる
/ ニッポン放送 News Online

ポールのジョーク交じりですけど、本当に仲が良くなかったら言えないジョークかと思いますね。

リンダの死後、2番目、3番目の妻と結ばれた後でも、このような発言をしています。

「田舎で僕は白いリスを見た。そう、それはリンダで、何かを告げるために僕のところへ戻ってきたんだとすぐに思った。素晴らしい瞬間だった。興奮したよ。あのリスがリンダだったという証拠はなにもない。でも、そう思うことが僕にとって大切だったんだ」と、愛妻を亡くした後の日々のことを振り返ったという。

ポール・マッカートニー、亡き愛妻への思いを語る…「白いリスの姿で妻が戻ってきた!」
/ Online ジャーニー

あまりに愛し過ぎて、他には見つからない大切な存在すぎて、若くして先立たれた喪失感が大きいのでしょう。

昨年(2021)も、リンダの愛したベジタリアン・レシピ本を出版(今現在は3番目の奥さんがいますが)。

"ポール・マッカートニーが、1998年に亡くなった前妻のリンダが愛したベジタリアン・レシピの数々を、娘のステラとメアリーと共に一冊の料理本にまとめることが分かった。"

ポール・マッカートニー、亡き妻リンダのレシピをアップデートした料理本を娘たちと出版へ
/ AERA dot.

前回の記事でリンクを貼ったYoutubeの夫婦インタビューなんか見てもらっても感じられるかと思うのですが、本当に仲が良さそう。

Comming Up / Paul McCartney(1980)

Seaside Woman / Linda McCartney(1977)

この2人のソロ曲のPVを観ても、下の写真を見ても、どこかに全く同じものを持っているような印象を受けます。

双子のような雰囲気さえ感じられる

この謎は次の記事で「5種のチャート + サビアンシンボル」で解き明かします。今回は、一般的なシナストリー技法で二人の相性を見てみましょう。

リンダ&ポールのシナストリーチャート

占星術の話に戻ります。これは彼ら2人のシナストリーチャート(相性図)です。内側の円がポール、外側の円がリンダです。

ポール(内)/ リンダ(外)

二人の星と星が特定の角度(アスペクト)をとっている所に、アスペクトラインが引かれています。点線も含めて赤がハードアスペクト青がソフトアスペクトです。緑もハードアスペクトの一種、黄色はソフト、ハードの分類無しです。

リンダとポールは、数としてはハードアスペクトが、ソフトアスペクトを若干上回ります。

一般的に、ソフトアスペクトのトライン(120°)やセクスタイル(60°)は相性が良いとされ、ハードアスペクトのスクエア(90°)、オポジション(180°)、インコンジャンクト(150°)は相性が悪いとされています。

"アスペクトの中には、星の力をスムーズに働かせるものと、ぎしぎしときしませながら、しかし強力にブレンドさせるものがあって、前者をソフトな、後者をハードなアスペクトといいます。"

鏡リュウジの占星術の教科書II p.16

本当はアスペクトに良い、悪い、運が良い、運が悪い、という区別はなく、ハードアスペクトは強力なパワーを生み出すけども、ギシギシと軋み、摩擦や軋轢も生み出してしまうという解釈です。

--オーブ(角度の誤差の範囲)の定義--
"【太陽と月を含む場合】0度、90度、120度、180度は7度まで。60度、150度は5度まで。【太陽と月を含まない場合】0度、90度、120度、180度は5度まで。60度、150度は3度まで。"

鏡リュウジの占星術の教科書II p.17

オーブの定義は研究者によって意見が異なりますが、今回は鏡リュウジ氏の著書に従ってポール&リンダの相性を、ハードアスペクトにフォーカスして検証します。

(注)鏡リュウジ氏のシナストリー論は、天体によっては180度もソフトアスペクトに分類しています。これも今回の記事では氏の見解に従って引用しています。

月の相性は結婚生活には重要

結婚の相性を占う時、特に月と月の相性は重要視されます。

なぜなら、月は素の感情、素の感覚、生活習慣、自宅にいるとき(お休みモード)の自分だから。

結婚生活は、その素の自分と、素の他人(パートナー)が、閉塞した環境の中で何年も共同生活を続けるものです。

月がうまく噛み合わないと、仲違いの原因となってしまいます。

--月と月のハードアスペクト(90°, 150°)の解説--
"感情面で共感を抱くことが難しい相性です。
いわゆる「気が合わない」相手と言えます。"

鏡リュウジの占星術の教科書II p.55

鏡リュウジ氏は、月と月は180度はソフトアスペクトに分類しています。つまり、スクエア(90°)とインコンジャンクト(150°)を「気が合わない」相性だと定義しています。

月と月がタイトにスクエア

さて、非常に仲が良さそうに見えるポールとリンダの月の関係は、どうでしょうか?

 ポールの月とリンダの月の相性

*シナストリー(相性図)の月と月の相性*
ポールの月 - 獅子座17度26分
リンダの月 -  蠍座17度34分
=オーブ0度08分の超タイトなスクエア(90度)

なんと、ほぼオーブ0で、強力にスクエア関係です。共感できない、気が合わない相手となるはずですが……先にあげたポールとリンダの関係性を見るに、とてもそうは思えません。

ちなみに鏡氏に限らず、ほとんどの占星術師は「パートナーと不仲に悩んでます」と悩みを抱えたクライアントが来たとして、月と月のタイトなスクエアを見れば「ここに表れてます」と真っ先に指摘するでしょう。

ネット検索で見つけた占星術師の見解の一例を引用します。

【月】×【月】ハード・アスペクトの場合(オポジション・スクエア)
"簡単に言うと「気が合わない」と感じることが多い関係です。気持ちを理解しにくいので、同じものを観ても感じ方が違い、同じものを食べても反応が異なるかもしれません。
気持ちが通じあいにくいなぁと感じることも多いですが、「どうしても気になる存在」にもなりやすい関係です。自分には無い部分を相手から学ぶ姿勢でお互いに接することが必要になってきます。"

相性鑑定【月】×【月】のアスペクト / astrology Tokyo

"一方、月同士のスクエアは厄介です感性が合わないため、一緒に生活する場合はどちらも我慢が必要になるでしょう。この場合はもう、太陽星座同士がいい角度を取る場合に限ります。
ただ、友人夫婦で、太陽同士も月同士もスクエアなのに、太陽と月が互いにトリンになるため、非常に仲良しの夫婦がいますが、感性は全くかみ合わないのですが太陽と月を交差させて絡む努力をしていて、どちらも再婚同士というのもあるから仲よくするコツを知っているのかもしれませんが・・・。
好きという感情と、理解できるという感情は異なりますから、単に好きというだけでは結婚生活は難しいですし、やはり相手の欠点とか理解しがたい点をいかに理解していくかが肝心です。"

月同士のコンジャンクション / セレーネ沙湖の占術カウンセリング

セレーネ沙湖氏は「月がスクエアの夫婦は太陽星座同士が良い角度をとる場合に限る」と述べています。

ポールとリンダの太陽と太陽のアスペクトはどうでしょうか?

太陽と太陽もスクエア

なんと、二人は太陽と太陽もスクエアです(笑)

 ポールの太陽とリンダの太陽の相性

*シナストリー(相性図)の太陽と太陽の相性*
ポールの太陽 - 双子座26度37分
リンダの太陽 - 天秤座01度07分
=オーブ4度30分でスクエア(90度)

サインで考えれば風と風でトラインなのですが、度数で考えるとスクエアとなっています。

--太陽と太陽のハードアスペクト(90°,180°,150°)の解説--
"本質的な価値観がぶつかる相手で、人生の方向や行動などで違和感が生まれやすい相性。お互いの理想や望みが一致しにくいので、一緒に何かを行おうとすると、考えがなかなか噛み合わず、どうしても衝突が多くなります。二人の関係性が、家族や結婚相手、恋人の場合は、どちらかが妥協したり、諦めたりしないとならないでしょう。"

鏡リュウジの占星術の教科書II p.42

鏡リュウジ氏も、結婚や恋人には良くない関係であると解説しています。本質的な価値観がぶつかる、と。

これまた疑問が…….リンダとポールは「菜食主義」という本質的な価値観を共有しています。

それは押し付けられたものでもなく「リンダと共同で決めたことだ」とポールは発言しています。

"Sir Paul said it had been a mutual decision between him and Linda to try vegetarianism in 1975."
(菜食主義に挑戦することは、1975年にリンダとの間でお互いに決めたことだったとポールは言った)。

Paul McCartney releases new cookbook in honour of late wife Linda
/ The Guide Liverpool

リンダの死後も、リンダが愛した菜食主義本を発刊し、自身も盛んに菜食の啓蒙活動をしています。

↑ミートフリーマンデーの歌。

間違いなく、本質的な価値観が二人は一致しているでしょう。

太陽も月も両方スクエアなのがポール&リンダ夫妻です。現状の占星術理論に従えば相性が悪いはずなのに、辻褄が合っていませんね。

もしかすると、太陽と月以外に、仲の良さや、価値観の共有を補足する要素があるのかもしれません。探してみましょう。

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