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ゾンビ論文の総括(2024年01月)


概要

2024年01月にGoogleスカラーのアラートに次の検索条件を設定して、ゾンビ論文の収集を行った。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network

  2. 「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network

  3. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

各検索キーワードの意図は次の通り。単語の前にハイフンをつけると、その単語を含まないものを探す検索条件となる。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firms」:ゾンビ企業を扱う論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う論文を排除する

  • 「-drug/xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-network」:とにかく情報科学の論文を排除したい

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

  • 「-narrative」:ゾンビ映画・小説などを評論する論文を排除する

1月中にメインの検索条件に引っかかったゾンビ論文は19本であり、私が探している「本物のゾンビを扱う(と仮定しても矛盾しない論文)」は一本だけ見つかった。

なお、この論文は下の記事でレビュー済である。

また、2月の検索条件を次の4つに設定する。ただし、検索条件1をメインの検索条件とする。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

  3. 「zombie philosophical

  4. 「zombie Chalmers

以下、1月の調査の詳細を記載する。



集計結果

まず、集計結果を示す。

2024年01月のゾンビ論文集計結果。最上行の日付はアラートメールが送られてきた日付。
ジャンルごとに集計結果が多い順にソート済

合計で19件のヒット。平均で1.5件未満とかなり少ない上に、ゼロ件の日が三日もある。こんなにヒット数が少ないのならば、Googleアラートからメールが来る度にチェックするのではなく週に一回で良いかもしれない。というわけで、2月のアラートチェックは週に一回まとめて行う。基本的に火木土の三日にメールが来るため、三日分のアラートチェックをまとめて土日辺りにまとめるようにしよう。

最も多かったジャンルは書評の三件で、次に経済学、菌類学、評論、医学、物理学が二件と、ジャンルごとに見てもヒットが少ない。ただ、書評と評論は評論系として合わせて計上すると五件と中々多い。とはいえ、対処するトリガーが引かれていない(後述)ので、これを排除するために検索条件をいじることはしない。

次に、検索条件ごとのヒット数は次の通り。

2024年01月の検索条件ごとの集計結果。
検索条件2が1よりも多ければ黄色で、
検索条件3が2よりも多ければオレンジで色を付けた。

検索条件2でも22件と少ない。一方で検索条件は53件。取りこぼし確認用の検索条件は50-60件で推移しているため、ゾンビ論文の報告総数が減っているわけではなく、検索条件1と2のスクリーニング能力が優れていることがわかる。本物のゾンビ論文を探す私からすれば、喜ばしい限りである。



1月の検証結果

1月の検証内容を述べる。

  • 月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する。

上述の通り、月の合計件数は19件である。検索条件2まで広げても22件。したがって、この検証は不要。上述の通り評論系の論文は五件と多かったが、全体が少なければ特定のジャンルのヒット数が多かろうと問題にはならないため、こちらも対処不要。


  • 衛生学の論文を排除するためのキーワードとして「-drug」を設定し、効果を確認する。

「-drug」で排除されたのは次の三件。医学が二件、社会学が一件。

  1. A2およびA72 J-Lat 細胞株における薬剤誘導性 HIV-1 転写活性のフローサイトメトリー分析(1/24、医学)

  2. 現実主義的評価におけるユーザーと利害関係者の関与(1/24、社会学)

  3. ヒト IL-6 は、免疫不全マウスにおける患者由来の疾患を引き起こす骨髄腫細胞の長期生着を促進します(1/28、医学)

「-drug」というキーワードは、元々"zombie drug"とも呼ばれるキシラジンという薬物を検索結果から排除するために設定したものだった。今回、社会学の方は薬物が社会問題になるケースを扱っており、医学の方は何かしら薬品を使うからヒットしたのだろう。医学系の論文は「-biolegend」で排除するようにしていたのだが、そこに「-drug」も合わさることで、さらに効率よく排除できることが実証された。また、薬物が社会に与える影響を論じた論文…社会学、そしておそらくは政治学の論文も、排除できることを示している。これらの論文は解読が難しいためいつも紹介文の執筆に難儀しており、「-drug」で排除できるようになれば、これまた都合が良い。

ということで、2月からは「-xylazine」ではなく「-drug」を使うこととする。ただし、メインの検索条件でのみ「-drug」を使い、取りこぼし確認用の検索条件では引き続き「-xylazine」を使う。drugが汎用的な単語であるため、本物のゾンビを扱った論文でさえも排除する可能性があるからだ。



1月の新しい学術ゾンビ

1月には新しい学術ゾンビをいくつか得ることができた。リンク先はそれぞれの紹介記事になっているので、意味を知りたければ飛んでいただきたい。

  1. "zombie effect", ゾンビ効果(1/6、歯学)

  2. "Zombie", ゾンビ(というDNA読み取りシステム)(1/9、生物学)

  3. "zombie zone", ゾンビゾーン(1/13、天文学)

  4. "zombie wildfires", ゾンビ山火事(1/17、都市工学)

  5. "zombie deer disease", ゾンビ鹿病(1/17、獣医学)

  6. "Zombie institution", ゾンビ施設(1/30、経済学)

2024/02/04時点で、これらのゾンビワードがどの程度使われているか、つまり各論文の執筆者が適当に作った造語でないかを確認した。確認に使ったのはGoogleスカラーである。いつもGoogleスカラーだな。Googleスカラーしか知らないのか?

まずゾンビ効果だが、「"zombie effect" "Silver Diamine Fluoride"」で54件がヒットした。「"Silver Diamine Fluoride"」のみで検索すると約4,860件であることを鑑みると、表現があまり業界に定着していないと察せられる。

次にゾンビ(というDNA読み取りシステム)だが、「zombie DNA barcoding」で検索すると約2,210件と中々多い。ゾンビというDNA読み取り技法が定着して長いのだろう。

また、ゾンビゾーンは、「magnetohydrodynamic "zombie zone"」では6件、一方「magnetohydrodynamic」だけだと約50,900件。後者はさすがに検索数が大きすぎるためどれほど意味のある比較になるかはわからない。しかし適切な単語がわからない。天文学のシミュレーションの研究だということは知っているのだが…。

ゾンビ山火事の「"zombie wildfires"」は約22件。分母のとりようがないため判断が難しいが、少ない方ではないと思う。ただ、おそらく学術論文ではなく科学系ニュースが多いような気もする。

ゾンビ鹿病だが、「"zombie deer disease"」はちゃんとした病名であるにもかかわらずたったの20件。研究する人間が少ないのだろうか。

ゾンビ施設はほとんどゾンビ企業と同じであるため調べようとは思わなかった。ということで、ゾンビ施設以外はこちらの記事に追加しておいた。



2月の検証

2月は以下の検証を行う。

  • 月の合計で30件以上のヒットがあった場合、各日で設定したジャンルを再分類する。

  • 哲学の論文を排除するためのキーワードとして「philosophical」と「Chalmers」の効果を比較する。

「-Chalmers」が突然出てきたが、これは全くの別角度から思いついたキーワードである。というのは、ゾンビアリの記事に続いて哲学的ゾンビの記事を書こうとしていたのだが、調べてみると哲学的ゾンビの創始者?はDavid John Chalmersという心を専門とした哲学者らしい。…という知識を持った状態で哲学的ゾンビを扱う論文を読んでみると、悉くChalmersを引用していることがわかった。ならば、哲学的なのは大前提だろと言わんばかりにzombieのみで哲学的ゾンビを指すケースであっても、「-Chalmers」であれば哲学的ゾンビを扱う論文を排除できるのではないか?と考えたのだ。

「-Chalmers」で哲学的ゾンビを扱う論文を狙い打って排除することができれば、現状では毎月50-60件の論文に目を通す必要があるところ、10件以上は減ることが期待され、取りこぼし確認さえももっと楽になるはずだ。

ところで、物理学の分野では今時ニュートンやアインシュタインを引用することはあり得ないのだが、殊に哲学の分野ではいつまでもその分野の創始者を引用することがまかり通っているらしい。創始者の追従と否定によって発展するものが学問だと考えているので、いつまでも原点から出発することが良しとされるのは健全な学問ではないだろう。とはいえ、心の哲学もChalmersを否定する向きが色々あるらしいので、その辺は別途記事にまとめておきたい。

ということで、2月の検索条件は次の3つに設定する。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

  2. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

  3. 「zombie philosophical

  4. 「zombie Chalmers

検索条件1がメインで確認する条件である。「-xylazine」をリストラし、代わりに「-drug」を採用した。それ以外は前回の条件1、3をそのまま使っている。もちろん、検索条件2が取りこぼし確認用の検索条件になる。

検索条件3と4は「philosophical」と「Chalmers」の比較用に設定した。これまでのように検索条件1に盛り込んでいないのは、他の検索キーワードの影響を防ぐため。最初からこうしていればよかった。

変更は2/1(木)以降のゾンビ論文に適用される。

以上。


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